真摯にものづくり、
大胆にソリューション


 株式会社タカハタ電子

世界にはばたくメイドイン山形
真摯にものづくり、
大胆にソリューション
株式会社タカハタ電子(米沢市)

液晶ディスプレイの生産風景液晶ディスプレイ技術者たち

受託生産から自社製品まで、主力製品である液晶ディスプレイの生産風景。(写真左)

受託生産で高めた技術力で自主事業も

1986年に液晶テレビ生産に着手して早20年以上、その翌年からは液晶ビューファインダーの量産を開始するなど、長きにわたって液晶関連が主力事業となっているタカハタ電子。次世代テレビを筆頭に液晶製品が全盛となっている現在ですが、「商品開発や先端設備の購入などに追われる期間が長く、業績に反映されるようになったのはここ数年のこと」と安房善彰社長室長はいいます。

しかし、多くの人に手助け頂きながらの地道な取り組みがタカハタ電子自体の生産力や技術開発力として蓄積され、自主事業でも着実に結果を出し始めています。1988年には物流仕分け装置(デジタルピッキングシステム)、1989年には液晶カラービューファインダーと立て続けに世界初の開発に成功、2000年からは自社ブランドの液晶カラーモニターの販売を開始しました。さらに、ドイツ車および国内自動車メーカー向けのカーナビモニターや車載用、自動販売機用、FA操作パネル用液晶モニターの開発生産など、自主事業の充実によって経営基盤をより強固なものにしています。

デジタルピッキングシステム
テスト中のデジタルピッキングシステム
産業用モニター
自社ブランドで販売している各種産業用モニター
ビューファインダー
設計から手掛けたビューファインダー
渡部隆特機システム事業本部本部長
物流仕分け装置(デジタルピッキングシステム)の利用モデルを説明する渡部隆特機システム事業本部本部長

従業員の4分の1が技術者という開発型企業

受託生産を柱とする量産工場としてスタートを切ったタカハタ電子ですが、現在では、従業員の約4分の1が各種技術者という開発型企業に生まれ変わっています。受託生産とはいっても大手企業の要望通りに作るだけでは生き残れない、これからは付加価値を産むための新たな技術開発力が必要と考えたからです。こうした会社の方針を受けて技術に目覚めた従業員たちは、現場のコンベアーを内製化し、後にそれを製品化して海外に輸出したり、プリント基板をチェックするインサーキットテスターや無人搬送車を開発するまでになっていました。

しかし、それらがすぐに自社製品として成功したわけではありません。どんなにいいものをつくってもお客さまのニーズやマーケティングに即していない製品は売れないのです。こうした反省に立ち、1988年には膨大な商品や部品が保管されている棚などにデジタル表示器を設置し、その指示により必要な商品をスピーディーかつ正確に集めることができる作業支援システム「物流仕分け装置」(デジタルピッキングシステム)を開発。これを山形県機械工業展に出展したところ、大手メーカーなどからも反響があり、一躍、同社の自主事業の代表的な製品の一つとなったのです。また、それらの技術力を生かして試作や1台からの小ロット受託生産にも対応。難しいもの、非効率なものにもトライすることで次の事業に結びつく技術を育てています。

技術者たち
技術者たち
手半田付けやライン管理、組立、配線など、様々な技能で“メイド・イン・タカハタ”の品質を支える技術者たち

総合力を生かした「モノ創りソリューション」

現在、タカハタ電子では、作りたいものに対してラインを合わせられるという強みを生かして「モノ創りソリューション」事業に力を注いでいます。企画打ち合わせから、設計、部品調達、試作量産、検査、品質保証、納品・サポートまでを一貫して提供するソリューションビジネスです。また、2006年からはものづくり業界最大の見本市、インターネプコン展示会に出展を開始し、タカハタ電子のものづくりにおける多様な可能性を存分にアピール。いろいろな形で認知度アップを図り、お客さまの安心感へとつなげているのです。

これまでは人件費が安いという理由で製造部門が海外に流出していましたが、中国やインド、台湾などは技術開発力でも追随してきており、今後はレベルの高い技術力や開発分野までも流出していくことが懸念されます。タカハタ電子では、高度な電子・情報・機械関連産業の一大集積地である米沢という地の利を生かし、企業間連携や山形大学工学部との産学連携にも積極的に参画。さらなる人材育成とネットワークの強化を図ることにより活路を見出しています。

安房善彰社長室長
お話をうかがった安房善彰社長室長。モノづくりソリューショングループ統括として、インターネプコンワールド展示会の出展も仕掛けた
(2008/11/3取材)

株式会社タカハタ電子

株式会社タカハタ電子

「モノ創りはひと創り」「ひと創りはゆめ創り」という一貫した考えのもと、液晶関連を主力に、電子機器、物流・生産という3つの事業を展開。そして、生産形態も生産受託、製品受託、自社ブランドの3通り。企画・設計から製造、生産、サポートまで、ものづくりをトータルに提供・提案できる強みを生かして安定成長をつづけている

代表者:代表取締役 安房 毅
創業:1974年6月
従業員数:264名
事業内容:液晶ディスプレイ、デジタルピッキングガイドシステム、回路ボード・モジュール等、生産受託から製品受託、自社ブランド製品の開発製造まで。
所在地:山形県米沢市窪田町窪田1188
TEL:0238-37-3355
FAX:0238-37-2342
URL:http://www.takahata-denshi.co.jp

株式会社庄司製材所

佐藤真彦さん

木のぬくもりと
素晴らしさを次世代へ
もっと伝え、広めたい。
株式会社庄司製材所(真室川町)

庄司製材所は、最上郡真室川町に本社・工場を置き、金山町にも工場を持つ製材会社。木のぬくもり、木製品の素晴らしさを身近で感じてもらうために展示・直売するホームセンターも展開しています。佐藤さんは、それら事業の要となる製材部門のオペレーター。お客さまのニーズに合わせ、よりスピーディに高品質の製品をお届けすべく日々スキルを磨いています。

佐藤真彦さん

プロフィール
佐藤 真彦 さん
昭和57年生まれ。
鮭川村出身。
学校法人新庄学園新庄東高等学校卒業。
2000年株式会社庄司製材所入社 本社工場勤務。
2002年ウッドトラス金山工場新設に伴い、製材オペレーターとして勤務し、現在に至る。

入社の動機、きっかけは?

祖父が大工だったこともあり、木材を扱うことに興味があり、漠然とその方面の仕事につきたいとは思っていました。そして大好きな地元・最上地域でずっと働きたいという気持ちも強かったんです。高校3年の就職活動でこの会社を知り、「これだッ」という思いでした。当初は本社工場勤務でしたが、6年前からはここ金山工場勤務なので、自宅のある鮭川村からの通勤はさらに便利に。仕事もとても順調です。

具体的な仕事内容を教えてください。

入社して2年間は、加工された木材の選別、結束などの仕事をしていました。先輩オペレーターが手際よく丸太をカットしている様子を「すごいなあ、きっと自分には無理だ」と思って見ていたものです。でもその後、先輩から操作盤の扱い方などを教えてもらうようになり、入社3年目に「ウッドトラス金山工場」が新設されたのに伴い、製材オペレーターとして働いています。

この金山工場では、住宅用建材やホームセンターなどで販売される木材の製材作業を行っています。製材オペレーターの仕事は、丸太を木材にする第一段階。操作盤で丸太の曲がりをチェックし、注文のあった製品のサイズをコンピューターに入力し大割りして次の加工段階に回すのです。丸太の大きさに合わせていかに無駄のない製材をするか、その日のメニューを時間内でこなせるか、それらはすべてオペレーター次第。みんなの作業がスムーズに進むように効率アップに努めています。

丸太の曲がりをチェックし、コンピューターに寸法を入力
丸太の曲がりをチェックし、コンピューターに寸法を入力
丸太
敷地内に積み上げられた杉は、県内外から集められる
敷地内に積み上げられた杉は、県内外から集められる

この仕事に手応えを感じていますか?

そうですね。オペレーターの仕事をはじめたころは手元がおぼつかず、なかなか大変でしたが、不思議なくらい辞めたいとか、他の仕事がしたいとかはまったく考えませんでした。今では最初のころよりもずいぶん慣れてきて自分が思う通りに丸太から製品を作り出せるようになったと思います。スピーディーかつ歩止まりよく木材を加工できるようになったので、この道でがんばっていけるという手応えは感じられるようになりました。大好きな木や地元にずっと関わっていきたいですしね。

搬出から出荷まですべて屋内で作業ができる、全天候型生産工場
搬出から出荷まですべて屋内で作業ができる、全天候型生産工場

この仕事は自分に向いていると?

あまり人と話すことが得意ではないので、黙々と仕事に取り組む職人のようなこの仕事は自分に向いていると感じています。木材加工用機械作業主任者の資格も取りました。でも、もちろん一人でできる仕事ではないのでチームワークは重要。工場内は機械の音がスゴイので、仕事中は話しをするというよりは、身振り手振りやアイコンタクトで意思の疎通を図っています。この金山工場には20人ほどのスタッフがいますが、みんな仲がよく雰囲気がいいので毎日楽しく仕事をしています。

佐藤真彦さん

この仕事をしていていちばんうれしいことは?

自分が作った製品を使って大工さんが家を建て、そこに住む家族のみなさんに喜んでもらえたり、ホームセンターで木材を購入したお客さまが思い思いの作品を作って満足していただいたりすることが私の誇りです。こちらまで幸せな気持ちになります。当社の製品に付けられるマルエスマークは木材市場におけるブランドの証。その信頼を裏切らないように、これからもよい製品だけを世に送り出していかなければと肝に銘じています。

庄司製材所の木材に刻印される信頼のマルエスマーク
庄司製材所の木材に刻印される信頼のマルエスマーク

これからの佐藤さんの目標を教えてください。

木のぬくもり、その素晴らしさをもっともっと多くの人に知ってもらいたいですね。木のぬくもりを通して、静かで自然豊かな地元・最上地域のよさをアピールし、地域に貢献できるような仕事をしていきたいと思っています。

佐藤真彦さん

佐藤さんは2年前に結婚し、ここで製品化された建築用建材で増改築した住宅に暮らしています。自ら木のぬくもりを日々実感しているというわけです。「人と話すのは苦手」と言いながらも、木や仕事、地元への思いをとても誠実にわかりやすく話してくれました。その仕事ぶりは、黙々と職人指向。杉材の真っ直ぐさそのままに、とても実直な人柄がうかがえました。

(2008/10/28取材)

株式会社庄司製材所

良質な国産材を大量に確保し、製造システムの自動化により、低コスト・短納期で安定供給している。副産物はチップ材やキノコの栽培材料などとして無駄なく活用。バイオマスやリサイクルなど、環境問題にも取り組んでいる。

株式会社庄司製材所
代表者:代表取締役 庄司 和敏
創業:1976年
設立:1988年3月
従業員数:67名
事業内容:国産材の製材および販売、山菜栽培・販売
所在地:山形県最上郡真室川町大字大滝108-2
TEL:0233-66-2032
FAX:0233-66-2123

打刃物の達人
[動画あり]


嶋田文夫さん

打刃物の達人 嶋田文夫さん
昭和16年生まれ。昭和30年より島田製作所を営む父に師事し、長年にわたり父より技法を学び受け継いできた。山形打刃物工業協同組合の代表理事として伝統の継承と新たな取り組み、そして若手の指導にも尽力。長男大輔さんが後継者として修行中。

伝統の技に現代的センスを加味し、
機能性でもデザイン性でも選ばれる逸品へ
鉄と鋼を高温の炉で熱する嶋田さん
鉄と鋼を高温の炉で熱する嶋田さん

刀匠鍛冶の伝統を受け継ぐ山形打刃物。その始まりは今から650年ほど前まで遡ります。嶋田家は代々の鍛冶職人で、文夫さんの父親の代で分家して島田刃物製作所をスタートさせました。現在は2代目の文夫さんと3代目の大輔さんが伝統の職人技を受け継ぎ、また打刃物の新たな可能性にも挑戦しています。多彩な打刃物の中でも包丁・鉈・のざし(山刀)・小刀などの刃物類を得意とし、「山形兼一」のブランド名で商品展開。その機能性はもちろん、現代的なセンスを取り入れたデザイン性の高さでも注目を集めています。

10年でようやく一人前の入り口、
“冷間鍛造”と“自由鍛造”の打刃物
何度も何度も打って、叩いて、鍛える打刃物
何度も何度も打って、叩いて、鍛える打刃物

鉄と鋼(はがね)を打って鍛えて創り出す、それが打刃物。私たちがイメージする刃物よりも強靱で、手入れ次第で長年にわたって鋭い切れ味を保ち続けます。嶋田さんは、中学を卒業すると鍛冶職人である父親のもとに弟子入り、修業をスタートさせました。父親が師匠といっても手取り足取り教えてくれるわけではなく、ただひたすら見よう見真似で技を盗んでいったと言います。

「職人は、教えられるのではなく、師匠の仕事ぶりをじっと見て、疑問を持ち、いろいろ試行錯誤しながら自分自身で覚えていかないと身に付かないんですよ」と嶋田さん。現在、修業中の3代目・大輔さんにも同じような指導をしています。

打刃物の製造工程としては、まず、鉄を熱して、そこに鋼を鍛えてつける鍛接という作業があります。この火加減が難しく、長年の経験こそがものを言います。鉄を熱して叩く「火造り鍛造」を繰り返し、強度を増しながら形を整えた後に、ワラ灰の中に入れてゆっくり冷まし焼き入れに入ります。しかし、山形打刃物の場合は、焼き入れに入る前にもう一度叩く「冷間鍛造」という工程をもう一手間。それによって、組織を詰めて強度を増すのだそうです。さらに、山形打刃物は、型を使わずに職人が形作っていく「自由鍛造」。ひときわ熟練の技が求められる技法とあって、十年修業を積んでようやく一人前の入り口という厳しい世界です。

冷ました鉄をもう一度叩く「冷間鍛造」
冷ました鉄をもう一度叩く「冷間鍛造」

異業種とのコラボで製品に物語
打刃物をより魅力的にプロデュース
洗練された製品は山形セレクションにも認定(写真上が「わらび」)
洗練された製品は山形セレクションにも認定(写真上が「わらび」)

この道50年、すっかり熟練の域に達している嶋田さんですが、その探求心・向上心は衰えることなく、まだまだやりたいことがあると言います。そんな思いから、2006年には山形打刃物工業協同組合の有志で「山形こだわり打刃物工房“鍛冶匠”」プロジェクトを立ち上げ、現代の生活スタイルに合った斬新なデザインの製品を提案。また、組子家具や鋳物などの地場職人らとともにNPO法人「FUIGO」を設立。伝統の技と現代風のデザインを融合させた製品づくりをともに追究し、共同で各種展示会への出展なども行っています。

「物語性がないと商品は売れません。打刃物の枠に捕らわれることなく、いろんな人たちを巻き込んで商品展開しています。」と、伝統の技を頑なに守りながらも、とても先進的で柔軟な発想を持つ嶋田さん。代表作のひとつ、木製の鞘に収まるオシャレなデザインのテーブルナイフ「わらび」は、山形県のエクセレント・デザイン賞にも選ばれ、海外でも好評を得たほどです。黙々と鉄を打つ鍛冶職人には、新しいものづくりに挑み続けるクリエーターというもう一つの顔がありました。

(2009/1/30取材)

有限会社島田刃物製作所

有限会社 島田刃物製作所

島田刃物製作所が炉 を開いて百有余年、作業場では先代の精神を受け継いだ2代目・3代目が黙々と鉄と鋼を叩き、磨き、理想の形へと仕上げていく。嶋田さん親子は、製造工程は 頑なに伝統を守りながらも、そのセールスプロモーションはいたって現代的。2009年2月にはNPO法人「FUIGO」でギフトや生活雑貨の国際見本市 「東京インターナショナル・ギフト・ショー」にも出展。現代生活に溶け込む打刃物の新しい魅力を提案し続けている。

有限会社 島田刃物製作所
代表者:嶋田 文夫
創業:明治38年
事業内容:包丁・鉈・のざし(山刀)・小刀などの製造・卸
所在地:山形県山形市桧町1-1-7
TEL:023-684-8865
FAX:023-684-8931

Categories: 山形の達人

ミドリオートレザー株式会社


ミドリオートレザー株式会社

カーシート用本革製造では
国内トップ
充実したサポート体制で
社員の仕事と家庭の両立を支える
ミドリオートレザー株式会社(山形市)

日本トップのカーシート用高級皮革メーカーとして、国内外の大手自動車メーカーと取引をしているミドリオートレザー株式会社。生産数量の約90%を占めるカーシート用本革のほか、家具用本革、ランドセル、化粧品の製造・販売なども行っています。技術開発に携わる阿部直子さん、総務を担当する阿部明子さんのお二人にお話をうかがいました。

海外へも視野を広げ、さらなるグローバル展開を目指す

入社のきっかけを教えて下さい。

商業高校で簿記を学んだ阿部明子さんは、入社14年目の総務課所属
商業高校で簿記を学んだ阿部明子さんは、入社14年目の総務課所属

阿部 明子(あべ あきこ)さん
朝日町出身。2002年入社。周りからの信頼も厚く、総務ではベテランの域。ストレスをため過ぎないように、適度に発散することを心がけているとのこと。

阿部(明)
商業高校に通っていて簿記を勉強していたので、それを活かして総務・経理ができる就職先を探していました。ここは、国内トップ、世界でもトップ争いをする大きい会社なので、自分の勉強したことを十分活かせるかなと思って希望しました。
入社13年目の阿部直子さんは栃木県出身。産休・育休から復帰して2か月目
入社13年目の阿部直子さんは栃木県出身。産休・育休から復帰して2か月目

阿部 直子(あべ なおこ)さん
栃木県真岡(もおか)市出身。2003年入社。学生時代に学んだ分野を活かせる技術開発室で業務に励む。同じ会社のご主人は、直子さんにとって一番の相談相手。

阿部(直)
学生時代の時に化学を専攻し、化学系の職種のある企業への就職活動を進めていました。学生時代に山形で過ごしていたということもあり、住みやすく、人も優しい山形で就職できたらと考えていました。会社が自然豊かな場所に立地していることに感動し、「天然素材を科学する」という企業コンセプトにも魅かれ入社を決めました。
私は県外出身なのですが、社宅の斡旋を親身になってしていただき、入社前から福利厚生がいいなと感じていました。

現在、どんな仕事をしていますか。

阿部(明)
現金預金の出納、経理、庶務全般です。
阿部(直)
主に新規商品の開発を担当しています。お客様の要求や環境に対応するもの、新技術の機能性を付与するような商品づくりのために、基礎試験から生産ラインにのせるまでの、一連の様々な検証をしています。一方の要求を満たすように設計すると、相反して他に不具合が出たり、開発段階だとうまくいくことが生産ラインにのると様々な課題が出てきたりと困難も多いですが、一つのテーマをやり遂げた時は大きな達成感がありますね。
ミドリオートレザー株式会社
職場では業務のアドバイスをすることもあるという阿部明子さん
ミドリオートレザー株式会社
革にキズなどの異常がないかを、ルーペでチェックする阿部直子さん

いつでも相談でき、出産後も働ける環境

実際に働いてみての感想は?

阿部(直)
社員は山形の方が多く、入社間もない頃は、山形弁の飛び交う温かい雰囲気の中、諸先輩方から一つひとつ丁寧に教えていただいたことを覚えています。女性が多く、男女が分け隔てなく働ける雰囲気の職場ですね。この会社には、女性のリーダーの方もたくさんいらっしゃるので、女性皆がいい影響を受けていると思います。結婚・妊娠の話が出ても、全社的に歓迎してくださっていると感じますし、育児休暇も皆さんが取っているので、私自身も取りやすかったです。復帰後も仕事内容が変わることなく、スムーズに復帰でき、ありがたいと思っています。
阿部(明)
最近では、子育て支援に積極的に取り組んでいる「子育てサポート企業」にも認定され、育児をする女性にも配慮をしている会社だと思います。産休に入った女性の方は、ほぼ100%育児休暇も取っていますし、そのあと100%復帰していますね。
ミドリオートレザー株式会社
相談もしやすく、とても人間関係の良い職場
働いていて難しさを感じることは?

阿部(明)
入社したばかりの頃はやっぱり悩みも多く、相談する時に上司が男性ばかりなので、ちょっと相談しにくいなと思ったことはありました。そんな時に、私にとても優しく指導してくれた先輩がいたんです。高校で簿記を勉強したとはいっても、やっぱり会社の経理となると、勉強だけでは追いつかなかったり、内容が違ったりもして、わからないことが多くありました。あの先輩に指導してもらわなかったら続けられなかったかもしれないっていうくらい、とても良くしていただきました。
今、一緒に働いている同僚や先輩とも、いい人間関係を築けているので、相談もできますし、恵まれているなと思います。
阿部(直)
平日でも休みをいただかないといけないこともありますし、時間外勤務もあまりできないので、仕事と家庭の両立に悩んだこともありました。
どうしても仕事量が増えた時は、同居の家族にお願いをして残業をしたり、早朝出勤や土曜振替などをしたこともありますが、今は無理をしないで、時間内に業務をこなすよう計画・段取りをしっかりするように心がけています。
ミドリオートレザー株式会社
試験のために溶液を作製する
上司の方から見た、お二人はどんな社員ですか?

横沢次長
私自身がもともと総務ではなく、製造だったんですよ。一昨年に製造から総務に移ってきて、さあどうしようと思った時に、阿部明子さんに聞けば何でもわかるし、聞かなくても、これはこうですよとかゆいところに手が届くように教えてくれます。頼りになるどころじゃなく、いなくなると非常に困る存在です。
そうした気遣いができるのは、それだけ彼女が人を見ているんだと思います。仕事にも精通していますから、こういうときにはこれが必要だという引き出しをたくさん持っているんですね。まだ若いですが、それだけもう熟知していて、ベテランの域に達しているんで、とても頼りにしています。
私よりも彼女の方が、工場の社員からも絶大なる信頼があり、完全に総務の顔になっています。
小野課長代理
阿部直子さんは女性ならではの仕事の丁寧さがあります。我々では気づかないようなところにもちゃんと気がついて、管理の面でも清掃などでも、細かなところまで気配りのできる社員だなと思います。
今回、育児休暇を終えて開発室の職場へ復職してもらいました。いなかった分のブランクも意欲的に穴埋めし、すでに新しいテーマにも取り組んでもらっているので、これからも女性ならではの感性や視点を開発業務に活かしてほしいと思います。
ミドリオートレザー株式会社
「周りをよく見ていて、気遣いができるところが阿部明子さんの良さ」と話す横沢次長
ミドリオートレザー株式会社
「阿部直子さんは技術開発室になくてはならない存在。戻ってきてもらって助かっています」と小野課長代理

会社の未来のために、自分自身をレベルアップ

今後の目標を教えてください。

阿部(直)
未来に生かせる仕事をしたいと思っています。あるテーマの検証結果が別のテーマの参考になることも多いので、一つひとつの結果をしっかりと詳細に記録して、将来に役立つように、会社の財産の一つに加えていけたらなと思っています。
阿部(明)
会社の決算事務をする時に、今は資料作成の段階までで、あとは税理士の先生にお願いしているんですけれども、自分で決算書を作れるくらいまで勉強したいなと思っています。
ミドリオートレザー株式会社
カーシートをはじめ、車のハンドル、家具用本革、ランドセルなど、種類も豊富な製品サンプルを展示
ミドリオートレザー株式会社
多彩な色や様々な加工を施した本革サンプル

ものづくり産業を目指す女性にメッセージをお願いします。

阿部(直)
若い時にはやってみたいことはもちろん、いろいろな経験をして、視野を広げてもらいたいと思います。また、誰でもいいので、必要だなと思った時に、相談できる誰かがいると心強いです。ぜひ社会に出て、若い力を思う存分発揮してほしいですね。
阿部(明)
社会人になってからは、コミュニケーションが大事だと思います。私は総務課なので、ものづくりの企業といっても直接的な関係はないんですが、間接的にでも関われる仕事があるので、自分のやりたいことを、いろんな面から探してみて、これから頑張ってほしいなと思います。
ミドリオートレザー株式会社

「繊細さや丁寧さが求められるような、女性だからできる仕事、女性にお願いしたい仕事というのもあるんです」と横沢次長。仕事と家庭を両立しながら働く社員へのサポート体制も充実しており、女性の育児休業取得率は100%、男性の育児休業取得者もいるそうです。その根底には、ものづくりをする「人」を大事にする、会社の姿勢が表れているように感じました。

(2016/2/26取材)

ミドリオートレザー株式会社

企業からのメッセージ
ミドリオートレザー株式会社
当社はミドリ安全株式会社のグループ企業です。「天然素材を科学する」を企業コンセプトに、本革の製造をメインに、近年は化粧品の製造なども行っています。本革工場は、山形市のほか、ブラジル、中国、メキシコにあり、取引先は国内外へグローバルに展開。女性社員には産休はもちろん、育児休暇も100%認めており、出産後の復帰は確実です。また、男性育休の活用や、子どもの看護休暇制度の取得促進にも努めています。「明るく行動力のある方、変化に対応できる柔軟な発想ができる方、失敗に臆することなく粘り強くチャレンジできる方」をぜひお待ちしています。

社員数

代表者:代表取締役社長 松村 元子
所在地:山形県山形市三社57-1
TEL:023-684-4311
URL:http://www.midoriautoleather.jp/
産業分類:皮革製品製造業
事業内容:カーシート用本革・家具用本革・ランドセル・化粧品の製造および販売
インターンシップ、企業見学の受入:可(要相談)

和田酒造合資会社

和田弥寿子さん

伝統の味と、新しい味。
2本の柱を大切に
夫婦で追究し続ける酒造り。
和田酒造合資会社(河北町)

和田酒造は寛政9年創業、200年以上の歴史を誇る老舗造り酒屋。地元の米生産者と契約栽培し、杜氏や蔵人も地元の人々。すべて地元づくしで作られる、まさに地酒の中の地酒。娘の弥寿子さんは女性ならではの感性で新しいお酒を開発し注目を集めた。現在は、娘婿の茂樹さんが伝統を守りながらも新感覚の日本酒づくりにも挑戦し、さらに多彩なラインナップに。小さくても確かな存在感を放つ造り酒屋から目が離せない。

和田弥寿子さん

プロフィール
和田 弥寿子さん

 

昭和49年生まれ。
山形県河北町出身。
東京農工大学大学院卒業。
(独)酒類総合研究所での研修、山形県工業技術センター勤務を経て、2003年和田酒造合資会社勤務。2005年茂樹さんとの結婚を機に、酒造りではご主人の補佐に回り、現在に至る。

弥寿子さんが酒蔵を継ごうと決めたのはいつ頃?

一人っ子だったし、酒蔵と一体になっている自宅で暮らしていたので、幼い頃から酒造りがとても身近にあって、子どもの頃から何となく自分が跡を継ぐんだろうなと思っていたような気がします。大学で微生物の勉強をしているときには、ちょっと違う道に進みたいと考えたこともありましたが、やはり家業を大切にしたいという思いから父の跡を継ぐ決心をしました。

茂樹さんは沖縄出身だそうですね。

妻とは東京農工大学の同級生。学生時代から「あら玉」をよくごちそうになっていて、おいしいお酒だなと思っていました。大学院を出てから沖縄県庁、大阪大学医学部の研究室と徐々に北上して、結婚を機に山形にやって来ました。沖縄とは対照的な北国山形での暮らしに多少の不安は ありましたが、それ以上に酒造りに興味がありましたし、妻が酒造りの最前線で頑張っていたので心強かったです。

茂樹さんの具体的な仕事内容を教えてください。

私は、大学院で微生物の研究をしていたので、研究開発を中心に麹づくりや仕込みなど酒造り全般に携わっています。本格的に酒造りに携わるようになったのは結婚してからなのでこの冬で3回目です。杜氏や蔵人のみなさんを見て学んで、今回あたりからようやく少し余裕が出てきました。仕込みにはいると3カ月半ぐらいはほとんど休みがとれないし、夜中も2~3時間おきに起きて作業をしなければならないしで、冬場にやせて夏場に太るといったパターンでした。妻は娘が産まれたのを機に仕込みの仕事は私に任せて、研究開発や商品の発送業務などをしてくれています。仕込みの時にはいろいろ相談にのってもらったりもしています。

和田茂樹さん

プロフィール
和田 茂樹さん

 

昭和48年生まれ。
沖縄県出身。
東京農工大学大学院卒業。
沖縄県庁勤務、大阪大学医学部研究室勤務の後、2005年弥寿子さんと結婚。和田酒造合資会社で研究開発を担当、現在に至る。

ご主人に仕事を譲るのは寂しくありませんでしたか。

一年目はいっしょに酒造りをしたんですが、次の仕込みが始まるころにちょうど娘を出産したものですから、否応なく主人に任せるしかありませんでした。もちろん仕込みから離れる寂しさはありました。最初のころは、蔵に入りたい気持ちが強くて“私の方ができるのに~”ってかなりイライラピリピリ(笑)。でも、生まれて間もない娘には私しかいないと思うことで割り切ることができました。
2人で仕込みのことをいろいろ話し合ったりもしていますから。それに、重いものを持ったり、高いところに上ったり、女性にとっては体力的に厳しい作業も少なくないんです。私の時は父が代わりにやってくれたり、心配そうに見ていたりしていましたが、主人なら安心して任せられるのでよかったみたいです。
父と主人が楽しくいっしょに仕込みをしている様子は私を幸せな気分にさえしてくれます。

酒造りの大変さとだいご味とは?

一年を通していちばん忙しいのは寒い時期、お正月も休めません。麹づくりは私たちの都合なんて一切通りませんから。麹の状態に合わせて夜中に何度も起きて作業をしなければならない時もあります。酒造りは、本当に大変な仕事だと思います。でも、この大変さがお酒のおいしさにつながる、飲んだ人の笑顔につながると思うと大変じゃなくなってくるんです。主人は、初めて蔵に入って絞りたてのお酒を飲んだときにとても感動して、いつかはそのおいしさをそのままビンに詰めてお客さまのもとに届けたいと思っているみたいです。

蒸し米を放冷機で冷ます
蒸し米を放冷機で冷ます
大きな甑で蒸し上げられた米からはアツアツの湯気
大きな甑で蒸し上げられた米からはアツアツの湯気
和田茂樹さん・弥寿子さん

櫂入れ(もろみを均一に混ぜる作業)をする茂樹さん
櫂入れ(もろみを均一に混ぜる作業)をする茂樹さん
山形と沖縄、風土や地域性の違いで戸惑ったことは?

北と南でかなり食味が違いそうな気がしますが、学生時代からお互いに味覚が似ている人だなあと感じていました。食生活も意外に似ていたので味覚面での苦労はありませんでした。確かに、沖縄に帰ると泡盛が飲みたくなりますが、こっちではやっぱり日本酒がおいしいですね。戸惑ったことといえば、蔵人のみなさんの方言でしょうか。酒造りは時間との戦いでもあるので、皆さんかなりの早口。はじめのころは、方言なのか酒造りの専門用語なのかもわからなくて、後で妻に解説してもらっていました。

ベテランの杜氏や蔵人と意見が合わなかったりすることは?

私たちは大学で近代的な酒造りを学んできたので、数字とか計算に頼りがちですが、杜氏や蔵人のみなさんは長年の経験からいろんな判断をします。それが計算とピッタリ合っていたりするので感心させられることが多いですね。それに、みなさん酒造りの伝統を守りながらも、新しいことにも敏感で、私たちが何か新しい試みをしているととても興味を示してくれるんです。


今後、どんな酒蔵にしていきたいですか。

守るべき味はかたくなに守りながら、時代を反映させた酒造りにも取り組んでいく、そんな2本の柱で頑張っていきたいですね。今は、主人が中心となってスッキリとした発泡性のお酒に力を入れています。

取材に伺ったのが仕込みの忙しい時期だったこともあり、ご夫婦別々にインタビューさせていただくことに。同じような質問をすると、返ってくる答えは申し合わせたように同じで驚かされました。酒造りについても家庭のことについてもつねに2人でいろいろ話し合っているのでしょう。お互いに尊敬し合い、尊重し合っている、そんな理想の夫婦像に出会ったような気がしました。

和田酒造の商品一例。さくらんぼ酵母で作ったロゼ色の純米酒「さくらんぼの恋物語」とフルーティな純米吟醸「嚶鳴」は弥寿子さんらしい
和田酒造の商品一例。
さくらんぼ酵母で作ったロゼ色の純米酒「さくらんぼの恋物語」とフルーティな純米吟醸「嚶鳴」は弥寿子さんらしい

(2008/12/5取材)

和田酒造合資会社

和田酒造は、紅花の産地として知られる河北町にある寛政9年創業の造り酒屋。現在の社長・和田多聞氏で8代目。地元の人に認められてこそ、本当においしい酒造りができるという信念のもと、若手とベテランが力を合わせて丁寧に酒を造り続けている。

和田酒造合資会社
代表者:社長 和田多聞
創業:寛政9年(1797年)
従業員数:9名
事業内容:日本酒の醸造・販売
所在地:山形県河北町谷地甲17
TEL:0237-72-3105
FAX:0237-72-3598
URL:http://www.hinanet.ne.jp/~aratama/

溶接の達人
[動画あり]


山口正和さん

溶接の達人 山口正和さん
昭和42年生まれ。工業系の高校を卒業後、川崎市の工場で溶接技術を取得。3年半後に帰郷し、その経験を生かすべく同社に入社。各種溶接、特にデジタル家電や光学分野の製造工程に欠かせない真空容器・装置のための溶接には定評がある。卓越した溶接技術で最先端産業を支えている。

農機具からスタートし、
現在は、真空関係の容器・装置ほぼ専業
真空装置
このように大きな真空装置も機械加工、溶接、組立までを一貫して行っている。

秋山鉄工株式会社は、大正11年に農機具の販売店として創業。昭和15年からは農機具の製造販売を行うようになり、昭和40年代後半に現在の真空分野へと業種転換。真空関係の容器・装置の機械加工から溶接、組立まで一貫して行う数少ない企業の一つとして、ほぼ専業で取り組んでいます。

真空容器・装置の製造で最も重要な技術、それが高精度溶接。秋山鉄工では、15名の溶接スタッフが機械にはできない緻密な真空溶接に挑み、カメラレンズの蒸着装置などを製造することにより、最先端産業の一翼を担っています。

曲面でも隙間ゼロを目指して金属と会話をしながら溶接をする
溶接1
金属の種類や形状、厚さなどを考慮しながら強固に溶接していく

川崎の工場で3年半にわたって溶接を経験してきたこともあって秋山鉄工での仕事にも比較的すぐに慣れたという山口さん。それでもずっと溶接の仕事でがんばっていけるという手応えを得られるまでには3年掛かったといいます。15名いる溶接スタッフの中で山口さんの仕事ぶりに注目が集まるのは、真空容器・装置としてのその完成度にあります。“山口さんが溶接するものは決して漏れない。なぜ?”溶接する様子をじっと観察しても違いがわからないと社内でもちょっとした謎なのだそうです。

山口さんは「金属と話をしながら溶接をしているだけ。熱を加えながら金属にどっちに反りたいの?と聞き溶接することで一体化を高めるようにしています。」と自己解説。さらに、山口さんの溶接は見た目も美しいと定評があるそうなのですが、それについても「いい溶接は仕上がりも美しいはず」と、同業者が見てもいいと思われるような仕上がりを心がけているのだそうです。

溶接2

おもしろさと大変さは表裏一体、若い人に受け継いでほしい技術
設計図から
設計図から金属板に寸法を落とし込んでいく。

この道20年以上の山口さん、ベテランの域に入っているわけですが、溶接技術とは経験を積むほどに上り坂というものではないといいます。もちろん経験は重要ですが、年齢による視力や体力の衰えの影響を受けやすい職種でもあるというのです。それでも山口さんは、現状を維持するための鍛練を積みながら、経験によって得た勘や読みを研ぎ澄ましてさらに上を目指すといいます。若い人にはそうした山口さんの仕事ぶりをよく見て盗んで覚えてほしいところですが、秋山鉄工の溶接スタッフは最若手でも29歳、真の若手が不在なのです。

「中学校の職業体験で工場にやってきた生徒たちの多くは、溶接がいちばんおもしろかったと言ってくれます。その子たちがものづくりのおもしろさに触れて、職業として溶接の道を選んでくれるとうれしいんですがね」と山口さん。

秋山鉄工では、「ものづくりを子どもたちの将来の職業選択肢の1つに」と、高専・短大・小中高のインターンシップや体験学習なども積極的に受け入れています。真空容器・装置は最先端のものづくりには欠かせないものだけに高精度溶接は決して途絶えさせてはいけない技能技術。山口さんのますますのがんばりと若い人たちの職業選択意識の変化に期待したいところです。

(2008/11/27取材)

秋山鉄工株式会社

秋山鉄工 株式会社

秋山鉄工 株式会社では、平成10年に鶴岡西工業団地に第1・第2日本国工場を建設。さらに、2004年には日本国第3工場を建設し、一貫製造体制を強化。最大20トンまで、大きさにして陸上輸送可能な限りの真空容器が作れるようになった。こうした工場や機械設備の充実にも増して同社が重要視しているのは基本技能の伝承と人間性の向上。とても型破りで個性的な社長が打ち出す“挨拶が基本”なる教訓のもと、その徹底が図られている。

秋山鉄工 株式会社
代表者:代表取締役 秋山 周三
設立:大正11年
従業員数:60人
事業内容:真空容器・装置類の製造
所在地:山形県鶴岡市宝田1丁目10-1
TEL:0235-22-1850
FAX:0235-25-1753
URL:http://www.dewa.or.jp/~uso800/

Categories: 山形の達人

有限会社山形工房

有限会社山形工房

世界に認められる
ものづくりで
未知の可能性を切り拓く毎日
有限会社山形工房(長井市)

山形県長井市の有限会社山形工房は1973年に創業。木地玩具製造から始まり、現在は「競技用けん玉」の生産量で日本一を誇る企業です。家業を継ぐためにUターンした梅津さんに、地域の名産品としてのものづくりに携わる魅力をお聞きしました。

梅津雄治さん
Uターンのきっかけを教えてください。

大学時代は公務員志望で、正直なところ家業のけん玉づくりを継ぐつもりはありませんでした。卒業後は公務員として勤めていたのですが、ある日帰省してみると、「けん玉」を愛してくれる人が多いことに驚いたんです。音楽に合わせダンスのようにけん玉をする動画をわざわざ送ってきてくださったり、海外からの問い合わせ・引き合いが多く英語での対応が課題になっていたりと、それまで想像もしていない状況に衝撃を受けました。それから自分も海外を相手に挑戦したいという気持ちが強くなっていき、Uターンを決意しました。

現在の仕事内容を教えてください。

会社の代表として、当社のけん玉を選んでいただくための営業活動がメインになります。これにはけん玉自体やその楽しさを知ってもらうための普及活動も含まれます。仲間とプロジェクトを組んで、地元のイベントをはじめ海外でもデモンストレーションを行うことが多いです。先日参加したミラノ万博では、けん玉の認知度も高く、地元のパフォーマーにも参加してもらい大盛況をいただきました。

梅津雄治さんのプロフィール

中央大学経済学部卒業

警視庁に入庁

有限会社山形工房に入社
1985年生まれ。山形県長井市出身。中央大学経済学部を卒業後、警視庁に入庁。2008年10月有限会社山形工房に入社。現在は同社の代表取締役社長を務める。

ミラノ万博では現地の愛好家も参加
ミラノ万博では現地の愛好家も参加
精密さが求められる製品づくり。時には製造に携わることも
精密さが求められる製品づくり。時には製造に携わることも
      

山形で働いてよかったと思う点は?

まずは生まれ育った土地で、家族と暮らしながら働けることです。地元の名産品として認めていただける、ものづくりに携われることも嬉しいですね。自分の仕事を通して、ふるさとの活性化に貢献できることは、大きなモチベーションになっています。

この会社の好きなところは?

最上級のものづくりに妥協なく取り組む姿勢です。当社には創業者から受け継がれる「自然のめぐみ 木の美しさ 伝統と現代的な技」という言葉があります。けん玉は地元の資源である木の美しさを生かした、日本の良き伝統文化です。また競技用の商品ともなると、その寸法精度は0.01mm単位で求められる難しい製品でもあります。現代的な機械や技術も取り入れながら、常に最高の品質を追求する姿勢を大切にしています。

印象に残っているエピソードはありますか?

海外の販路開拓に悪戦苦闘したことですね。当時はノウハウのない状況から様々なアドバイスやサポートを受けて取り組みました。今の状態を確立できたことには、大学時代に学んだ経済学や、海外へのひとり旅で現地の方と交流してきた経験も活きたと思います。

影響を受けた人はいますか?

家業として受け継がれてきた中で、いちばん大切にしてきたのは心だと思います。確かな品質をお客様に届ける。これにプライドとこだわりをもって取り組んできたのが創業者の祖父と製造現場を取り仕切る兄だと思いますので、特にこの二人をとても尊敬しています。

けん玉展示
地元・長井市で行われた、世界記録に挑戦するイベントの様子。けん玉は老若男女を問わずに楽しめるのも魅力
地元・長井市で行われた、世界記録に挑戦するイベントの様子。けん玉は老若男女を問わずに楽しめるのも魅力

 

今後の目標を教えてください。

けん玉のように伝統文化からはじまり、競技として親しまれるまでに発展したものは世界でも稀です。ですから日本が誇れるこの文化を、さらに広く世界に発信してきたいですね。また、ものづくり企業として製品の品質を追求していきます。
目指すのは、本気でけん玉に取り組む人たちに喜んで使ってもらえるけん玉。本気でやるなら山形工房のけん玉でなければ、と言ってもらえるよう最高の品質を常に求め続けていきます。

山形へU・Iターンを考えている方へメッセージをお願いします。

仕事をすることの意味のひとつに、自分の力で地域や社会にいかに貢献できるかということがあると思います。地元で働けるということは、自分の仕事の成果が故郷に還元されるということです。都会で働きたい、都会で自分の力を発揮したいと思うのもひとつですが、地方から地元の良さを都会に発信する選択肢もあると私は思います。

 優れたふるさと名品として「The Wonder 500」(経済産業省)の認定を受けた競技用けん玉「さくら ピンク」と「さくら 黒」
優れたふるさと名品として「The Wonder 500」(経済産業省)の認定を受けた競技用けん玉「さくら ピンク」と「さくら 黒」

(2016/1/21取材)

有限会社山形工房

有限会社山形工房
木地玩具、民芸品を製造・販売する企業として創業。昭和60年より競技用けん玉の製造を開始。平成2年、競技用けん玉の生産量日本一に認定される。けん玉はストリートカルチャーに敏感な若者の間で流行し、様々な企業・ブランドとのコラボレーションしたけん玉も作成。品質の向上に努める一方、デザイン性の高い商品も多数作成している。
    

代表者:梅津 雄治
創立:1973年10月
従業員数:13名
事業内容:日本けん玉協会公認の競技用けん玉の製造、美術工芸品の製造・販売、木地玩具及び民芸品の製造・販売
所在地:山形県長井市寺泉6493-2
TEL:0238-84-6062
FAX:0238-84-6061
URL:http://www.kendama.co.jp/

株式会社パルコモード


株式会社パルコモード

働きながら学べる環境で
縫製技術をしっかりと修得し
世界に誇れる品質の製品を届ける
株式会社パルコモード(米沢市)

婦人服のボトムスを専門に手掛ける株式会社パルコモードは、織物の産地米沢にある縫製会社。東北で唯一、厚生労働省認定の企業内訓練校(ファッションスクール)を持ち、社員は国家試験の1・2級技能士の勉強をすることができます。仕事をしながら資格をとること、技術のレベルアップに必要なことなどについて3名の方にお話をうかがいました。

雰囲気の良さと規模の大きさが魅力

入社のきっかけを教えてください。

21歳と18歳のお子さんがいる本間さんは、子育てをしながら長年勤務

本間 比呂美(ほんま ひろみ)さん
米沢市出身。1987年入社。生産ラインサブリーダーとして、品質チェックを担当。ご主人と2人のお子さんの4人暮らし。婦人子供既製服縫製作業2級技能士。

本間
高校の時に求人票を見ていて、先生から「この会社いいよ」と言われて決めました。入ったらみんなやさしくて、雰囲気もよく、いい会社だなと思いました。
佐藤琴乃さんは米沢工業高校出身。本間さんとは先輩後輩の関係

佐藤 琴乃(さとう ことの)さん
米沢市出身。2004年入社。FC(フロントコントロール)ラインサブリーダー。婦人子供既製服縫製作業2級技能士。

佐藤(琴)
学校でミシンの授業があったんですが、楽しくて、仕事にできればいいなと思っていました。地元で働きたかったのも理由です。大きな会社で、いろんなブランドを取り扱っているのも魅力でした。
米沢商業高校出身の佐藤千春さん。南陽の自宅から車で通勤しています

佐藤 千春(さとう ちはる)さん
南陽市出身。2013年入社。生産ラインオペレーター。ミシンオペレーターとして多能工の勉強中。今年1月、婦人子供既製服縫製作業2級技能士の試験にチャレンジし、見事合格。

佐藤(千)
高校の頃から製造業に就きたいと思っていました。中でも服をつくる仕事に興味があり、入社前に企業見学をさせていただいた時の雰囲気が良かったので決めました。

現在、どんな仕事をしていますか。

佐藤(琴)
縫製する前の工程を担当しています。特殊ミシンで、ポケットやベルトなど細かいパーツを作り縫製ラインに渡します。
本間
縫製ラインは9ラインあって、それぞれ花の名前がついています。私は「ライラックライン」で、ベルト部分の縫い工程を担当しています。各ライン6人で1着を完成させる「1枚流しの6人編成ライン」です。
佐藤(千)
私は「コスモスライン」に所属しています。入社してまだ3年目なので最初の工程、ポケット部分の縫い工程を担当しています。
株式会社パルコモード
特殊ミシンを使いこなしポケットなど繊細な部分をつくる佐藤琴乃さん
株式会社パルコモード
ウエスト部分の仕上がりをチェックする本間さん。ゴムが入ると縫製は難しくなるそう
株式会社パルコモード
ポケットの部分を縫製している佐藤千春さん。時間制限があるので1秒1秒を大切にしています

国家資格を取得できる企業内スクール

株式会社パルコモード
「講師も指導員の免許をもった社員が行います」と鈴木百合子常務取締役
鈴木常務
「パルコモードファッションスクール」という企業内訓練校があり、社員は6つのコースからそれぞれ目標にあったコースを受けることができます。特に婦人子供既製服縫製作業の技能士コースは、多くの社員が受講し合格しています(1級6名、2級52名)。スクールがあるということで入社される方も多いです。
佐藤(琴)
会社で検定を受けられるのはすごくいいと思います。試験勉強はとても大変だけど、スキルアップにもつながります。
佐藤(千)
私も先日、2級技能士の試験を受けました。
山本常務
仕事が終わってからスクールに通うのは大変だと思います。特に女性社員の方は、帰宅後も家事や育児をされているのですから頭が下がります。スクール修了後、奨励金として応援しています。
株式会社パルコモード
「試験に合格すれば、一時金も支払われます」と山本直樹常務取締役

仕事で難しさを感じる時はありますか。また、誰に相談していますか。

本間
人間関係で悩むときはあります。鈴木常務は、優しくて頼りがいがあるので、いろいろ相談しています。他にもチーフや直属の上司など相談しやすい人が周りにいるので心強いです。
佐藤(琴)
私の担当は専門的で、同じ仕事をしている人が少なく休みづらいのが悩みです。相談ではないですが、プライベートのことで同年代の子と話して気分転換しています。話せる人が近くにいるのは大きいです。
佐藤(千)
まだ3年目なので、わからないことが多くて大変です。リーダーや先輩に相談して、なんとかやっています。なんでも話せる同期の子もいます。
株式会社パルコモード
スクールでの授業の様子。壁面には資格取得者の賞状がずらり
株式会社パルコモード
主な相談相手は鈴木常務です、と本間さん
株式会社パルコモード
佐藤琴乃さんの悩みは、自分の代わりがいないこと
株式会社パルコモード
同年代の女性が多いので働きやすいと佐藤千春さん

相手を思うこと、製品に責任を持つこと

仕事をする上で大切にしていることは。

本間
品質管理。不良品を出さないよう、きれいな製品をつくること。注意されたことは見直すようにしています。
佐藤(琴)
コミュニケーションです。コミュニケーションがとれていないと自分が困った時に助けてもらえないし、誰かが困っていても、コミュニケーションがとれていれば手伝うことができるので。
佐藤(千)
仕事を正確にすることです。流れ作業なので、雑になったら、次に縫う人が困るので、1つ1つ正確にして、後の人が縫いやすいように考えながら仕事をしたいです。
株式会社パルコモード
今後の目標を教えてください。

佐藤(琴)
サブリーダーをしていますが、自分の仕事をしながら、まわりのオペレーターの人たちを見るのがなかなか難しいので、これからは指導の方ももっとできるようになりたいです。
佐藤(千)
まだまだ覚えることがたくさんあるので、まずは仕事を覚える。一度作った製品は、指示されなくても一人でできるようになりたいです。
本間
私は一着まるごと縫えないので、縫えるようにして、人にも教えられるようにしたいです。
株式会社パルコモード
縫製ラインでは、6人が分業して一着を仕上げる
ものづくり産業を目指す女性にメッセージをお願いします。

佐藤(千)
最初はわからないことだらけで不安だと思いますが、まずは一生懸命働く姿勢を大事にすること。それが一番大切だと思います。
佐藤(琴)
最初は何の仕事もできなくてあたり前だと思うので、できないと挫けそうになっちゃうけど、根気よくがんばるしかないので、がんばって欲しいです。
本間
どんな仕事でも大変なので、根気よく勤めてもらいたいです。
株式会社パルコモード
主な取引先はファイブフォックス、ビギ、トゥモローランドなど

「パンツの縫製というのは、実はとても難しいんです」と鈴木常務。ファッション関係の人から「なぜ、こんなにきれいに縫えるの?」とよく聞かれるそうです。デザインや素材も常に進化し変わっていくファッション業界。「売れ筋の商品は短納期、短サイクルで生産することが求められます」と山本常務。めまぐるしく動く業界で、パルコモードは婦人服ボトムスの生産量トップクラスを誇ります。プロフェッショナルな精神をもつ社員のみなさんが、確かな品質のものを届けている証なのでしょう。

(2016/2/25取材)

株式会社パルコモード(米沢市)

企業からのメッセージ
株式会社パルコモード
社名のパルコモードは緑と太陽、ファッションの情報発信の情熱の国、イタリアの公園(パルコ)からとりました。会社を公園と例えるならば、そこに咲く花々はスタッフ。全社員で明るく、清潔な働きやすい環境作りに取り組んでいます。東北唯一の企業内ファッションスクールを設け、個人のレベルアップを応援しています。専門的なポジションも有るのでスクールを通じて多能工化を計り、個人の負担を軽減出来るよう改善を進めています。求める人材像は「明るく 素直 思いやりのある人。自分に限度(境界線)を持たない人」です。平均勤続年数 17年は多少でも社員の人たちに理解してもらっていると思っております。

社員数
代表者:代表取締役 今井 三男
所在地:山形県米沢市城西4丁目4番21号
TEL:0238-23-8201
URL:http://www.parcomode.com/
産業分類:製造業
事業内容:婦人服の縫製・仕上げ
インターンシップ、企業見学の受入:可