
昭和42年生まれ。工業系の高校を卒業後、川崎市の工場で溶接技術を取得。3年半後に帰郷し、その経験を生かすべく同社に入社。各種溶接、特にデジタル家電や光学分野の製造工程に欠かせない真空容器・装置のための溶接には定評がある。卓越した溶接技術で最先端産業を支えている。
現在は、真空関係の容器・装置ほぼ専業

秋山鉄工株式会社は、大正11年に農機具の販売店として創業。昭和15年からは農機具の製造販売を行うようになり、昭和40年代後半に現在の真空分野へと業種転換。真空関係の容器・装置の機械加工から溶接、組立まで一貫して行う数少ない企業の一つとして、ほぼ専業で取り組んでいます。
真空容器・装置の製造で最も重要な技術、それが高精度溶接。秋山鉄工では、15名の溶接スタッフが機械にはできない緻密な真空溶接に挑み、カメラレンズの蒸着装置などを製造することにより、最先端産業の一翼を担っています。

川崎の工場で3年半にわたって溶接を経験してきたこともあって秋山鉄工での仕事にも比較的すぐに慣れたという山口さん。それでもずっと溶接の仕事でがんばっていけるという手応えを得られるまでには3年掛かったといいます。15名いる溶接スタッフの中で山口さんの仕事ぶりに注目が集まるのは、真空容器・装置としてのその完成度にあります。“山口さんが溶接するものは決して漏れない。なぜ?”溶接する様子をじっと観察しても違いがわからないと社内でもちょっとした謎なのだそうです。
山口さんは「金属と話をしながら溶接をしているだけ。熱を加えながら金属にどっちに反りたいの?と聞き溶接することで一体化を高めるようにしています。」と自己解説。さらに、山口さんの溶接は見た目も美しいと定評があるそうなのですが、それについても「いい溶接は仕上がりも美しいはず」と、同業者が見てもいいと思われるような仕上がりを心がけているのだそうです。


この道20年以上の山口さん、ベテランの域に入っているわけですが、溶接技術とは経験を積むほどに上り坂というものではないといいます。もちろん経験は重要ですが、年齢による視力や体力の衰えの影響を受けやすい職種でもあるというのです。それでも山口さんは、現状を維持するための鍛練を積みながら、経験によって得た勘や読みを研ぎ澄ましてさらに上を目指すといいます。若い人にはそうした山口さんの仕事ぶりをよく見て盗んで覚えてほしいところですが、秋山鉄工の溶接スタッフは最若手でも29歳、真の若手が不在なのです。
「中学校の職業体験で工場にやってきた生徒たちの多くは、溶接がいちばんおもしろかったと言ってくれます。その子たちがものづくりのおもしろさに触れて、職業として溶接の道を選んでくれるとうれしいんですがね」と山口さん。
秋山鉄工では、「ものづくりを子どもたちの将来の職業選択肢の1つに」と、高専・短大・小中高のインターンシップや体験学習なども積極的に受け入れています。真空容器・装置は最先端のものづくりには欠かせないものだけに高精度溶接は決して途絶えさせてはいけない技能技術。山口さんのますますのがんばりと若い人たちの職業選択意識の変化に期待したいところです。

秋山鉄工 株式会社
代表者:代表取締役 秋山 周三
設立:大正11年
従業員数:60人
事業内容:真空容器・装置類の製造
所在地:山形県鶴岡市宝田1丁目10-1
TEL:0235-22-1850
FAX:0235-25-1753
URL:http://www.dewa.or.jp/~uso800/