つねに開発しつづける
精密加工技術


エムテックスマツムラ株式会社

世界にはばたくメイドイン山形
つねに開発しつづける
精密加工技術
エムテックスマツムラ株式会社
(天童市)

モールド金型

半導体製造設備に取り付けられたモールド金型

半導体デバイスメーカーでもあり、半導体製造設備のメーカーでもあるエムテックスマツムラの中枢製品(商品)ともいえるのがこのモールド金型。この型の上でチップを熱硬化性樹脂で封止し、半導体デバイスを製造する。デバイスの小型化・薄型化が求められる中、ウエハーを数十マイクロメートルまで薄くする設備の自社開発にも成功。モールド金型にも日々進化が求められている。

強力な3本柱を持つ企業

エムテックスマツムラ株式会社は、1945年創業という県内でも有数の歴史ある電気機械メーカーです。当初は、足踏み式ミシンの主要部品を製造し、国内シェア9割を誇っていました。しかし、技術革新による電動式ミシンの普及により足踏み式部品の需要が激減し、深刻な経営難に陥ったといいます。そのことを教訓とし、既存事業の拡大を図りながらもつねに次なる一手として新規事業に挑戦していくという体制を築きあげました。

現在のエムテックスマツムラの事業領域は、主力事業だけでも3つ。自動車部品製造、半導体デバイス製造、さらにはその半導体製造設備の開発・製造・販売までもこなしています。

自動車部品事業では、パワーステアリング用のシャフト類部品を中心に製造。半導体事業では、まず70年代に大手半導体メーカーの依頼で半導体製造装置を開発・製造したのがはじまりで、その開発力・技術力が買われて、半導体そのものの製造依頼も入るようになりました。汎用品から高機能デバイスまで、確かな技術と徹底した品質管理で絶大な信頼を得ており、取引先も国内外に広がり、グループ売上高の約7割を半導体事業が占めています。

自動車部品
これらの自動車部品を国内外にある大手自動車メーカー系列の生産拠点に出荷。
ウエハーの切断から半導体デバイスの完成までを一貫生産
ウエハーの切断から半導体デバイスの完成までを一貫生産
半導体製造装置「ATOM-THP1C」
半導体製造装置「ATOM-THP1C」

ナノテクで超極薄ウエハーを実現

自動車部品の製造からさらに半導体事業へ進出することになったきっかけは、大手半導体メーカーから製造装置の開発・製造を依頼されたことに始まります。近年では、山形県の超精密加工テクノロジーセンター(工業技術センター内)との共同研究により、ナノメートル(1ミクロンの1000分の1)単位の切削・研磨技術でウエハーを数十マイクロメートルまで薄くする設備を自社開発。これが大きな強みとなって、おサイフケータイやクレジットカード用のICなどの製造を一手に手掛けて注目を集めています。こうした状況は、つねに半導体ニーズの先を読み、実用化後の量産段階も考慮して先行開発している前向きで積極的な経営姿勢の産物といっていいでしょう。

半導体製造設備の重要部品となるモールド金型のチェック調整
半導体製造設備の重要部品となるモールド金型のチェック調整

「実は、こんなものもつくっているんですよ」と村尾純一技術部部長が紹介してくれたのは全自動麻雀卓。日本で初めて全自動マージャン卓を開発したのがエムテックスマツムラで、今も国内最大級のシェアを誇っているのだそうです。さらに、近年では眼底検査装置の開発・製造にも取り組んでおり、幅広い事業展開に一層の厚みが加わり、それが企業としての魅力、強みにもなっています。

企業としての発想のユニークさを印象づける「全自動麻雀卓」
企業としての発想のユニークさを印象づける「全自動麻雀卓」
非接触・非侵襲の眼底断層診断を実現した「眼底検査装置」
非接触・非侵襲の眼底断層診断を実現した「眼底検査装置」
ナノメートル単位の精度を求められる切削では、ダイヤモンドに次ぐ硬度の工具が用いられる。
ナノメートル単位の精度を求められる切削では、ダイヤモンドに次ぐ硬度の工具が用いられる。
村尾純一技術部部長
一般人にはわかりにくい、半導体デバイスやモールド金型などについてわかりやすく説明してくれた村尾純一技術部部長

産学官の連携で広がる可能性

エムテックスマツムラでは、山形県の超精密加工テクノロジーセンター以外にも、山形大学や東北大学、岩手大学などとの共同研究が盛んで、自動車部品や有機EL分野でも産学連携により成果を上げています。前述の眼底検査装置もその一つ。山形大学の教授との共同研究によるもので、診断精度にも操作性にも優れているとの評価を得ています。

さまざまな分野で技術開発に取り組む一方で、生産体制の充実にも着手。1996年には他企業に先駆けベトナムに製造子会社を設立。主に自動車部品及び半導体デバイスの汎用品の製造を行い、世界各国へと輸出しています。

また、エムテックスマツムラでは全事業所ごとに自衛消防隊を組織し、消防署での訓練を受けて初期消火にあたる体制で万一に備えています。

先を読む、万一に備える、そんな盤石の姿勢こそがこの企業を繁栄へと導いているに相違ありません。

ベトナムの市民に向けて企業紹介を行うための展示会。
ベトナムの市民に向けて企業紹介を行うための展示会。
万が一の場合にも、適切な初期消火で被害を最小限に。消防署での訓練も受けている自衛消防隊。
万が一の場合にも、適切な初期消火で被害を最小限に。消防署での訓練も受けている自衛消防隊。
(2008/2/4取材)

エムテックスマツムラ株式会社

エムテックスマツムラ株式会社
半導体デバイスをはじめ、半導体製造設備や自動車部品、アミューズメント機器の開発・製造に取り組む。さらに、産学連携により医療機器分野にも進出。1996年にホーチミン市にエムテックスベトナムを設立。60年の長きにわたって蓄積してきた電気機械メーカーとしてのノウハウを生かし、新たな挑戦は続く。
代表者:代表取締役社長 松村英一
創業:1945年3月
従業員数:650名
事業内容:半導体製造装置の開発・設計および製造、半導体モールド金型の開発・設計および製造、各種製造装置・合理化設備の設計・製造、半導体デバイスの後工程製造、全自動麻雀卓の製造・販売、医療機器の製造など。
所在地:山形県天童市北久野本一丁目7-43
TEL:023-654-3211
FAX:023-654-9088
URL:http://www.mtex.co.jp/

海外市場を見据えた
超小型化戦略


ワテック株式会社

世界にはばたくメイドイン山形
海外市場を見据えた
超小型化戦略
ワテック株式会社(鶴岡市)

山形工場は東根市

組立途中のCCDカメラ。山形工場は東根市にあり、独自の規格であるWQS(ワテック品質保証制度)を確立している。

一般監視カメラをはじめ、工業系や医療系、天文系など、さまざまな分野で活躍するCCDカメラおよびその周辺機器の開発設計、生産、販売を行っている。1988年ソウルオリンピックの開幕式、パラシュートで空から舞い降りてきた出演者のヘルメットにはワテック製の超小型CCDカメラが装着されていた。写真は超小型CCDカメラ(3cm×3cm)

テーマは小型化、ターゲットは海外

ワテック株式会社は、1987年創業の小型CCDカメラの専門メーカーです。本社は神奈川県川崎市にありましたが、1990年東根市に山形工場を設立、1992年には鶴岡工場開設、そして工場地帯の川崎では人材確保が難しかったことや、創業者の出身地だったこともあり、1996年に鶴岡市に本社を全面移転しました。

今ではテレビ番組などでもよく目にする超小型CCDカメラですが、創業者である五十嵐重美会長がこの世界に飛び込んだ当時は、セキュリティ用の大型CCDカメラの全盛期。それらは、すでに大手の家電メーカーで製造販売されていたため、ワテックでは“小型化”を最大の開発テーマとして取り組み、他社との差別化を図ることにしたのです。電子回路専門の技術者でもあった五十嵐会長は、最近では携帯電話にふんだんに使われているCCD素子に着目、非常にコンパクトな回路設計を可能にしました。その試作品を米国で開催されたセキュリティ関係の展示会に出品したところ、非常に大きな反響を呼び、これが国内市場よりも海外市場をターゲットとして事業展開していくという方針を決定づけたのです。

また、保守的な国内マーケットと違って、欧米のマーケットは製品の品質、性能、価格がよければ無名であってもすぐに採用してくれます。そんな海外市場で会社独自のブランドを確立し、ブランド力を高めていくという狙いもありました。

超小型カメラ生産ライン
東根工場で稼働している超小型カメラ生産ライン
開発設計ミーティング風景
顧客ニーズに応えるための開発設計ミーティング風景

医療や天文の分野でも活躍

ワテックのCCDカメラの活躍の場は、その品質の高さと信頼性で、宇宙空間をはじめ世界60?70カ国にまでおよび、銀行や美術館、警察、地下鉄、デパート、学校、遺跡など、さまざまなシーンで監視カメラとしての重責を担っています。その納入経歴には、ルーブル美術館やバッキンガム宮殿、NASA、FBIなど、世界的な施設や組織が名を連ねており、改めてワールドワイドな企業であることを実感させられます。さらに近年、ワテックの超小型CCDカメラは、工業用や医療分野、天文観測用としても注目され、需要範囲は拡大の一途です。

検査システム
世界70カ国の信頼に応える確かな品質、その一翼を担う厳しい検査システム
展示会風景
展示会風景
海外で開催されたセキュリティ関係の展示会風景。Watecブランドは、国内以上に海外ではメジャー。ワテックの「ワ」は人の和、社会の輪。赤いVはVictoryのV。

「創業当時はほぼ100%が海外市場向けでしたが、ここ数年、ワテックでも国内市場に目を向けはじめています。」と最近の傾向を語る中村正治社長。凶悪犯罪の多発によりセキュリティ関係の需要が急増していることに加えて、監視以外での用途も格段に広がってきているからです。現在、海外80%、国内20%ぐらいに推移しており、今後はさらに国内割合を増やしていく方針です。そのためには、多様化するニーズに対応するための商品ラインナップの充実を図るとともに、さらなる目標として、より高機能、高画質、高感度、高品質なカメラの開発・研究を進めています。

中村正治社長
凶悪犯罪が多発することで製品の需要が伸びることへの複雑な思いを語る中村正治社長

最終製品まで手掛ける達成感

国内外での開発競争が激化の一途をたどる昨今、超小型CCDカメラのトップランナー・ワテックといえども安穏とはしていられません。基本発明は特許で防御したいと特許の出願、取得を行ってはいますが、例えば秋葉原の電気部品店に新製品を出そうものなら、数週間後にはコピー製品が出回るといった凄まじい状況です。「知的財産戦略と、さらなる新製品の開発、新分野への販路の拡大にも力を注いでいかなければなりません。」と中村社長。世の中にコピー製品が蔓延する時代だからこそ、ワテックは「品格のあるモノづくり」にこだわり、継承しています。

そして、ワテックが企業として放つ最大の魅力は、「設計から最終製品までを自社で手掛けているという、ものづくりの達成感」。そのワテックの真価をもっと地元の人々にも知ってもらおうと、学校関係を対象とした企業プレゼンテーションなども実施しています。平成11年に米国ニューヨーク州に現地法人を設立、台湾支社や北京駐在員事務所なども構え、まさしくワールドワイドに活躍する企業。地元にあることを知れば、若者にとっては大きな希望となり、地域にとっても大きな自信となるはずです。

カラー/モノクロ自働切換カメラ
昼はカラー、夜は高感度なモノクロでの24時間監視に対応する、カラー/モノクロ自働切換カメラ(WAT-232)
(2007/12/26取材)

ワテック株式会社

ワテック株式会社

ワテックは、部品製造を担う工場の多い地方にあって、一貫して完成品まで手掛ける稀少な企業。業界に先駈け、超小型高感度CCDカメラの量産化に成功するという快挙を成し遂げた。それらの業績が認められ、2005年には「平成16年度ゆとり都山形イノベーション大賞」を受賞。さらに、翌2006年には経済産業省「明日の日本を支える元気なモノ作り中小企業300社」に選定されている。

代表者:代表取締役社長 中村 正治
創業:1987年3月
従業員数:70名(関連会社を含む)
事業内容:CCDカメラおよびその周辺機器の開発設計・製造、販売
所在地:山形県鶴岡市大宝寺字日本国254-2
TEL:0235-23-4400
FAX:0235-23-4409
URL:http://www.watec.co.jp/

日東ベスト株式会社

滝田潤さん

発想とひらめきに導かれ
新しい道に分け入る
パイオニアとしての充実感
日東ベスト株式会社(寒河江市)

日東ベスト株式会社は、寒河江市に本社を置く食品加工会社です。国産コンビーフ第1号の開発に成功するほか、いち早く業務用冷凍食品の分野に進出するなど、常に日本の食文化をリードしてきました。滝田さんは、中央研究所研究部食品研究課に所属。新規事業を展開するための研究開発からマーケティング、営業販売、コンサルティングにいたるまで幅広い分野で活躍しています。

滝田潤さん

プロフィール
滝田 潤さん

寒河江市出身。
宇都宮大学農学研究科修士課程修了。
1997年日東ベスト株式会社入社。
平成10年山形県地域結集型共同研究事業 派遣研究員。
平成13年同事業 兼業研究員。
平成16年山形大学共同研究員。
平成18年日東ベスト株式会社地域農産物新加工品開発プロジェクトサブリーダーとなり、現在に至る。

入社の動機、きっかけは?

進学先の宇都宮大学では食品化学を専攻していました。そこで得た知識や経験を生かして就職はぜひ食品企業に、しかも地元山形の企業に、と思っていたのです。大学、大学院の6年間を県外で過ごしたことで、山形のよさを再認識したんですね。それにちょっと古い考えかもしれませんが、長男としての自覚というか責任感もありましたから。幸いなことに地元である寒河江市には日東ベストがあり、新商品の開発や技術の向上に熱心で、食品に関する研究者を求めていました。

具体的な仕事内容を教えてください。

入社して1年半ほどは、試作開発部で、加工技術の向上に取り組んでいました。例えば、冷凍コロッケをより美味しく仕上げるためにサクサク感の本質を解明するなど。その後は、現在の研究食品課に配属となり、「食品はいちばん大切な医薬品」という考えのもと、天然素材中から有効成分を抽出し、その生理機能の解明にあたっています。
食品に健康が求められる昨今、日東ベストでは新規事業のタネとして食品の機能性という点に着目しています。大学などの研究機関であれば解明まで行えば実績としては十分ですが、企業ではそれをユーザーの幸せ感や満足感に結びつけて対価を得る必要があります。だから、企業のプロフェッショナルには専門的な知識だけではなく、企画力や情報収集力、マーケティング、コンサルティングなど、多彩な能力が求められます。

山形県の特産品ラ・フランスの研究で大きな成果をあげたそうですね。

ラ・フランスの粉末化は1998年から取り組んできました。ラ・フランスは乾燥させると芳香が失われ、バウダー状にしても吸湿性が高くすぐにべとついてしまうので、果汁やジャム状での商品化にとどまり、焼き菓子のような水分量の少ない商品には利用されてきませんでした。私たちのグループでは、大学や県工業技術センター、JAなどとの共同研究により、それらの課題をクリア、2006年に、香り豊かで保存性にも優れたラ・フランスパウダーを誕生させることに成功したのです。
翌年には県内菓子店で、ラ・フランスパウダーを使った焼き菓子の商品化もされました。山形は全国に誇る果樹王国、今後はこの技術とノウハウをさらに生かしていきたいですね。今は、さくらんぼパウダーの商品化に向けて研究・開発を進めています。

ラ・フランスパウダー「舞果香(ぶかっこう)」。ネーミングもユニーク
ラ・フランスパウダー「舞果香(ぶかっこう)」。ネーミングもユニーク

この仕事はどんな人に向いているのでしょう?

企業の研究者は研究をしているだけでは不十分で、ユーザーを視野に入れたマーケッターとしての動きも要求されます。人が好きであること、好奇心があること、フットワークがいいこと、客観性があること、貪欲であること、柔軟性があること、楽観的であること、意志決定思考であること、数字やカタカナに強いこと、失敗をおそれないこと、などたくさんのことが求められる。あとはセンスと努力。仕事に応じた的確なパートナーの選択ができるということも不可欠な能力です。
どんなに素晴らしいプロフェッショナルでも欠点はあるはずで、それを補うようなパートナーを探し、協力してもらうことが重要になってきます。それは、同じ部署の同僚や上司であったり、他の部署のスタッフ、あるいは社外のパートナーかもしれません。つまり、たくさんの人々の協力が得られて初めていい仕事ができるということを認識すべきなのです。

滝田 潤さん

滝田 潤さん
この仕事のどんな点にやりがいを感じますか?

新規事業のためのタネ探しをする仕事ですから、どんなタネなのかは未知の世界。それにいち早く出会えるという点ではとてもワクワクします。事業としての目途がついて自分たちの手を離れても、パイオニアとして道なき道をかき分けてここまできたという充実感はずっと残ります。そのためには、とことんプロフェッショナルであること、そして多方面にわたる知識や技術、経験を備えたゼネラリストであることも求められるのでとても大変ではありますが。

仕事を離れたときのリフレッシュ法は?

家族と家でゆっくり過ごしたり、ショッピングに出かけるのも好きです。でも、そんな時でも無意識のうちに競馬などのデータをもとにシミュレーションをしたり、マーケティングリサーチ的なことをやって楽しんでいる自分がいたりします。いつも仕事のことが頭から離れないということではなく、研究開発のアイデアというものは、仕事から解放されてリラックスしているときにこそ突発的にひらめいたりするものなので。
寝ているとき以外はすべて発想やひらめきが舞い降りてくる可能性があります。でも、それは決して苦痛ではなく、むしろ大きな喜びです。

滝田 潤さん

今後やってみたい仕事、目標は?

ラ・フランスの研究を進める中、通常は剪定で廃棄される枝の部分にアルブチンが豊富に含まれていることがわかったのです。アルブチンといえば、しみそばかすなどの原因となるメラニンの合成を抑える美肌成分として、特に女性の間では注目の的。すでに東京の化粧品メーカーと連携しての研究も進められており、2009年の商品化を目指して順調に進行しています。
現在は、また新たなタネ探しに取り組んでおり、モノが何かはまだ企業秘密でお話しできませんが、それで新規事業のベースを立ち上げることが当面の目標です。さらに、将来的には社内ベンチャーなどを立ち上げることができればなおやりがいが実感できるるし、楽しいだろうなと考えています。

ラ・フランスの枝から抽出されたアルブチンを含む水溶液
ラ・フランスの枝から抽出されたアルブチンを含む水溶液

滝田さんは2006年、科学技術に関して優れた研究成果をあげた若手研究者に贈られる第6回県科学技術奨励賞を受賞し、齋藤弘知事より表彰を受けました。ラ・フランスパウダーの開発をはじめ、ラ・フランスの枝に豊富なアルブチンが含まれていることを発見し、美白成分の新しい精製法を開発したことが評価されたもの。今後も滝田さんの研究開発から目が離せません。

(2007/12/14取材)


日東ベスト株式会社

食文化を通して広く社会に貢献したいと考える日東ベストでは、その一環として「財団法人 日東食品教育振興基金」を設立。学校、学生、スポーツ団体などを対象に奨学育英資金の貸与や助成を行っている。

日東ベスト株式会社
代表者:代表取締役社長 内田 淳
創業:1937年10月
設立:1948年7月
従業員数:879名
事業内容:冷凍食品・日配食品・缶詰・袋詰・チルド・レトルト食品の製造販売
所在地:山形県寒河江市幸町4-27
TEL:0237-86-2100
FAX:0237-86-3172
URL:http://www.nittobest.co.jp/

ワインづくりの達人
[動画あり]


畑貴嘉さん

ワインづくりの達人 畑 貴嘉さん
石川県出身。山梨大学工学部修士課程を修了後1996年に高畠ワイン株式会社入社。1年後には実質的な造りの責任者となり、2005年からはブドウ栽培に関しても統括。2006年には、葡萄酒技術研究会が創設したワイン醸造技術管理士(エノログ)に認定されている。

質、量ともに東北一を誇る人に、気候に恵まれたワイナリー

寒暖差のある気候、ミネラルを豊富に含んだ土壌、高畠町はブドウやラ・フランスなどの果実栽培に適した土地であると同時に、ワインづくりにも最適の地と考え「高畠ワイナリー」が創業したのは1990年のこと。協力的で熱心な契約栽培農家やワイン醸造技術管理士といった人的な環境の充実もあって、いまや東北最大規模のワイナリーに成長しました。四季折々の花やブドウ畑に囲まれ、きれいに整備されたワイナリーには年間30万人を超える見学者が訪れ、町の観光拠点としての一翼をも担っています。

高畠ワイナリー外観
きれいに手入れされたワイナリーの庭は、訪れる人の心を弾ませる

土地柄や人となりが味わいになる、繊細なワインづくりを目指して

ブドウの栽培に適した土壌や気候といった自然条件に加えて、栽培農家の人々の意識の高さや熱心さに支えられ、高畠町はデラウエアの生産量が日本一。高畠ワイナリーでは、60軒近くの契約栽培農家とともに良質でリーズナブルなワインをつくり続けてきました。そこに「畑 貴嘉」さんというさらなる戦力が加わり、高畠ワイナリーにおけるワインづくりはより高みを目指すことになるのです。畑さんは、山梨大学でワインと出合い、人に感動を与えるようなワインをつくりたいとの強い思いに駆られ、それが可能な環境として高畠町に惚れ込み、1996年に高畠ワイナリーに入社しました。

当初は、収穫されたブドウをいかにいいワインに仕上げるかという醸造面にのみ力を注いできましたが、やがて「いいブドウがなければいいワインはできない」と土壌も含めた栽培の重要性に目を向けるように。その結果、契約栽培農家とのコミュニケーションもより綿密になっていき、収穫量の制限や収穫時期の指定にも快く協力してもらえる関係を築くようになりました。

畑貴嘉さん
化学的な分析も、よいワインをつくるために不可欠
デラウェア
高畠町が誇るデラウエア

契約栽培農家とともに 日本らしいワインを高畠から

ワイン醸造技術管理士としての畑さんの仕事は実に多種多様です。ワイン用ブドウの栽培技術研究を行っている試験園で生育状況をチェックしたり、テイスティングで発酵の進行状況を確認したり、樽熟成のワインを樽から引き上げるための選別をしたり、瓶詰め前の製品の比重やアルコール、酸度などを検査したり……、文字通りブドウの栽培から醸造までを一貫管理しています。

その成果として、高畠町の異なる畑の異なる味わいが楽しめる「シャルドネの畑シリーズ」や2006年国産ワインコンクールのスパークリングワイン部門でトップに輝いた「嘉yoshiスパークリングシャルドネ」、深夜に最高の状態のブドウを収穫して仕込む「ナイトハーベスト」など、畑さんの目指すワインづくりが少しずつ実を結びはじめています。

「それぞれの国の風土や文化を表現してくれる、それがワイン。だから、私もワインを通して高畠を知ってもらいたい。そして、いつの日か“日本らしいワイン”をここ高畠から発信したいですね」と畑さんは、静かにしかし確固たる意志に満ちた言葉で今後の目標を語ってくれました。

高畠ワイン
左から順に「2003高畠カルベネ・ソーヴィニヨンプレミアム」「2003高畠メルロプレミアム」「2005高畠シャルドネ樽発酵?ナイトハーベスト?」「2006上和田ピノ・ブラン」(山形セレクション認定 )そして畑さんの名前の一文字がついた「嘉yoshiスパークリングシャルドネ」
(2008/2/14取材)

高畠ワイナリー

高畠ワイン 株式会社

「高畠ワイナリー」は、敷地面積1万坪。カリフォルニア風の純木造の建物内には、ワイン製造の工程をガラス越しに見られる見学コースと、おすすめワインの試飲が楽しめるショップを展開。秋の収穫祭など各種イベントを通してワインのファン層の拡大を図っている。

高畠ワイン 株式会社
代表者:代表取締役社長 奥山 徹也
設立:1990年9月
従業員数:32名
事業内容:山形県産のブドウを原料とする地場ワインの製造及び販売
所在地:山形県東置賜郡高畠町糠野目2700-1
TEL:0238-57-4800
FAX:0238-57-3888
URL:http://www.takahata-wine.co.jp/

Categories: 山形の達人

株式会社グローバルマシーン

株式会社グローバルマシーン

人柄の良い山形の人に支えられ
人間的にも、技術者としても
成長する日々
株式会社グローバルマシーン(庄内町)

株式会社グローバルマシーンは、自動車や産業用機械の部品製造のほか、産業機械の設計・製造・組立などの一貫生産から、業務上の改善提案まで行う総合エンジニアリング会社。県内、県外で製造業を経験した後、山形へUターンした渡會さんに、地元の会社で働く魅力について感じている思いをお聞きしました。

Uターンのきっかけを教えてください。

高校卒業後、地元の製造会社に就職したのですが、一度は親元を離れて自立して生活してみたいという気持ちが強くありました。そこで、埼玉の会社に就職し、約1年間製造業の仕事にたずさわりました。ただ、私は長男のため将来は家を継ぐので、1~2年で地元へ帰って来るという約束で埼玉へ行ったんです。
山形に戻ってきて就職活動をしていたときに、グローバルマシーンの求人を見つけました。ハローワークの担当者の方がお薦めしていて、私自身も製造業を希望していましたし、機械加工というまだ経験したことのない分野だったので、挑戦してみたいという思いもありました。

現在の仕事内容を教えてください。

当社は、自動車部品や産業用機械部品の製造のほか、産業機械、少量化機器などの設計から製造、組立まで行っています。私は製造3課に所属し、組立や検査など様々な用途に利用できる汎用ロボットである「単軸ロボット」の部品製造をしています。多様な工作機械を用いて、材料に穴をあけたり、削ったりといった加工をしながら、製品として出荷する部品を仕上げています。

山形で働いてよかったと思う点は?

やっぱり山形の人たちの人柄の良さというのがありますね。経験しないと気づかないものですが、埼玉で働いていたときには、何かかみ合わないなと感じていたこともありました。山形は、言葉も自分に馴染みのある方言で親しみやすいですし、それが相談しやすい環境にもつながっていると思います。県外の生活も経験してみて、やっぱり自分には山形の空気が合っているなと実感しました。

その日に出荷する製品や加工スケジュールをミーティングで確認
その日に出荷する製品や加工スケジュールをミーティングで確認
バイタリティあふれる仕事ぶりが上司からも評価されている渡會さん
バイタリティあふれる仕事ぶりが上司からも評価されている渡會さん

渡會隆さん

渡會隆さんのプロフィール

 

山形県立庄内総合高等学校

山形県内の
ダンボール製造会社に入社

埼玉県内の
自動車部品製造会社に入社

株式会社グローバルマシーン
1992年生まれ。山形県庄内町出身。庄内総合高等学校を卒業後、山形県内のダンボール製造会社に勤務。2014年3月、埼玉県内の自動車部品製造会社に勤務後、2015年地元庄内町に戻り、株式会社グローバルマシーンへ入社。製造3課にて機械加工を担当。

この会社に入ってよかったと思うことは?

穴あけ、切削、溶接…と、当社では本当に多様な加工をやっているので、それに挑戦できることにやりがいを感じます。また、わからないことは先輩方に聞けば、わかるまで丁寧に教えてくれるので本当に感謝しています。

印象に残っているエピソードはありますか?

入社して最初の部署では、装置の組立や汎用旋盤を使うのが主な仕事だったのですが、最初は初めてのことばかりで何もできないでいました。そのとき先輩から「会社にいる時間内でどれだけ上達できるか。君はお金をもらっている立場なんだから、お金をもらえるだけの活躍をしないとダメだよ」とはっきり言われました。
当時は、毎日落ち込みましたが、何も得ないまま会社を辞めたりするのは自分でも許せなくて。何かしっかり自分のものにしてからアクションを起こそうと、先輩から言われた言葉で気持ちを入れ替えることができました。

製品にキズがないかを細かくチェック。キズのあるものは製品から省かれます
製品にキズがないかを細かくチェック。キズのあるものは製品から省かれます
渡會さんが製作を担当している単軸ロボットの部品素材。これに様々な加工を施して製品として出荷
渡會さんが製作を担当している単軸ロボットの部品素材。これに様々な加工を施して製品として出荷

影響を受けた人は?

先ほどの先輩もそうですが、先輩方にはたくさんのことを教えていただいています。以前、組立をやっていたとき、わからないことがあったのですが、自分でなんとかしようと事を進めてしまい、失敗してしまったことがありました。そのときは、「わからないままにしておくと、後輩にも教えられない。曖昧な知識のままでは、50歳になっても1年生だぞ」と先輩に言われ、すごく心に響いたのをおぼえています。 工場長の「本当の意味での加工者になれ」という言葉も心に強く残っています。

製造業をいくつか経験してきましたが、ものを機械にセットして、装置の起動ボタンを押して、それだけでものが作れて、仕事になっていると思っていました。でも、工場長の言う加工者というのは、穴あけする際には、ドリルや部品の摩耗具合や交換時期を把握する。そして、アルミやステンレスといった加工する金属、それぞれに合った機械の設定をする。そうしたことにも気を配った上で仕事をすることで、本当の意味での加工者になれるんだと。私もそうなりたいと思いました。
先輩方が一人ひとりの社員に対してちゃんと伝えてくれるので、とてもありがたいなと思っています。

「どんな品物でも、どんな材料であってもしっかり加工できるプロを目指してほしい」と渡會さんに期待を寄せる取締役工場長の守屋利彦さん
「どんな品物でも、どんな材料であってもしっかり加工できるプロを目指してほしい」と渡會さんに期待を寄せる取締役工場長の守屋利彦さん

工作機械のマシニングセンタを使った部品の切削・穴明加工
工作機械のマシニングセンタを使った部品の切削・穴明加工
今後の目標を教えてください。

入社してまだ数か月しか経っていないので、まだまだ覚えることがたくさんあります。穴をあけるという一つの作業でも、ドリルの回転速度や刃物の種類など、あらゆることをしっかり覚えて、その上で機械操作を自分のものにしていきたいですね。また、当たり前のことですが、悪いものは作らないということを常に心がけているので、悪いものを作らないために、先輩方の話をよく聞いて、自分の知識として蓄え、プロの加工者を目指していきたいです。

山形へU・Iターンを考えている方へメッセージをお願いします。

県外へ出てみて改めて山形の良さに気づくこともあると思います。親しみやすく、面倒見の良い山形の人たちのおかげで、仕事だけでなく人としても勉強させてもらっています。私は製造業をやってきましたが、ものづくりといっても様々なものがありますし、これから就職される方には、いろんなことに目を向け、チャレンジして頑張ってほしいなと思います。

先輩方から多くのことを吸収し、それを自分のものとして取り入れながら、日々ステップアップしている渡會さん。職場にも自然に溶け込み、良い人間関係を築いている様子が伝わってきました。
常に向上心を持ってものづくりに真摯に取り組む若い力が、次世代を担う大きな力となっていくのだと感じました。

同じ部署の製造3課のメンバー。現場はいつも明るく、頼りがいのある先輩たちに囲まれています
同じ部署の製造3課のメンバー。現場はいつも明るく、頼りがいのある先輩たちに囲まれています
「先輩方は本当にレベルが高く、先輩みんなが目標」と渡會さん
「先輩方は本当にレベルが高く、先輩みんなが目標」と渡會さん

(2015/10/23取材)

株式会社グローバルマシーン

株式会社グローバルマシーン
自動車部品・産業用機械部品の製造のほか、近年は製造装置等の設計・製造にも取り組む。量産品の生産拠点が海外へシフトする中、国内生産での多品種少ロット化を見据え、技術力のいるものや工程数の多いものなど、職人の技術でつくる「ハンドメイド品への回帰」に力を入れている。「究極のスピード」をモットーに短納期の部品加工を得意とする。また、生産業務に関する改善策の提案なども行っている。

代表者:代表取締役 菅原 勝安
創立:1991年4月
従業員数:40名
事業内容:半導体製造装置部品・各種産業用機械部品・自動車部品の製造、産業機械・省力化機器などの設計・製造・組立
所在地:山形県東田川郡庄内町余目字大塚25
TEL:0234-42-0707
FAX:0234-42-1276
URL:http://g-machine.co.jp/

株式会社ニシカワ


株式会社ニシカワ

男性中心の製造現場で
男性に負けない技術を修得
今では、
新人教育をまかされる存在に
株式会社ニシカワ(三川町)

画像処理測定器や顕微鏡といった光学機器や精密機器の製造を行っている株式会社ニシカワ。本社は埼玉にありますが、製造の中心は山形県三川町と鶴岡市にある2つの工場です。小林さんは三川工場の機械・仕上係で機械加工を担当、男性社員しかいない職場で、たった一人の女性社員として奮闘しています。

工業系のものづくりにあこがれて、飛び込んだ製造現場の世界

小林果菜さん

小林 果菜(こばやし かな)さん
酒田市出身。山形県立酒田工業高等学校卒業。2006年株式会社ニシカワに入社。NC旋盤加工、カメラ組立の部署を経て、機械・仕上係に所属。現在は、新入社員の技術指導をまかされ、教育係としても活躍。趣味はソフトボールで、市の社会人チームに所属している。

入社のきっかけを教えてください。

小林
もともとものづくりが好きで工業高校に入ったのですが、高校2年の時に、インターンシップでニシカワを訪れたことがきっかけでした。進路相談の時に、先生から「(ニシカワから)声がかかっているけど、どうだ?」と言われて。工業系の会社に就職したい思いがずっとありましたので、迷いなく決めました。必要とされているのが嬉しかったですね。
現在どんな仕事をされていますか。

小林
製造部の機械・仕上係に所属し、マシニングセンターを使って機械部品の精密加工をしています。最初はNC旋盤加工の部署に半年ぐらい、その後カメラ組立部門に3ヵ月。今の職場になって7年ぐらい経ちました。私は主に顕微鏡などの測定器に使われる部品の加工を担当しています。
職場で女性社員は私だけですが、他の部署に仲良くしてくれる女の先輩たちがいますので、一緒に遊んだり、愚痴を聞いてもらったりしています(笑)。

機械操作もわからない新人時代。男性先輩とのギャップに悩む

男性しかいない職場で、難しさもあったと思いますが。

小林
男の人と女の人で考え方が違うなと思うことはありました。最初に配属されたNC旋盤加工では、女性の先輩がいて、丁寧に教えてもらえたのですが、今の職場では、最初あまり相手にされなかった(笑)。
「これをやってね」と渡されて終わり。仕事もよくわからない中で、どうしたら良いのかなと思いましたね。あまり熱心に指導してもらえなかった(笑)。

その後、どのように変わっていきましたか。

小林
1年ぐらい経った時、仕事を熱心に教えてくれるベテランの男性が現れたんです。機械操作をゼロから教えてくれて、育てていただきました。そのおかげで仕事がだんだん出来るようになり、ここ数年は新入社員の教育係を任されています。
機械操作の基礎を1~2年の間で教えて、育った頃にまた次の新人をゼロから教えなくてはいけないのは大変ですが、私も育ててもらった訳ですから。後輩が、他の機械でがんばっている姿を見ると教えてよかったなと思います。
新人の特徴や個性にあわせて指導の仕方を工夫しているとのこと
新人の特徴や個性にあわせて指導の仕方を工夫しているとのこと

男性顔負けの存在感で、教育係としても活躍

上司から見た、小林さんはどんな部下ですか?

 「彼女は、技術の発展に大きく貢献してくれた」と話す丸藤真彦係長
「彼女は、技術の発展に大きく貢献してくれた」と話す丸藤真彦係長
丸藤係長
最初は、親身になってくれる女性先輩もいない中で、やっていけるかどうか心配していました。男性社員も、どう接したらいいかわからず戸惑いがあったようです。女の子だし、嫁入り前だから顔にケガしたらどうしよう、とか。
今は男性顔負けで仕事をこなし、第一線で活躍しています。教育係としても重要な役割を果たしていて、本当に面倒見が良く、新入社員にさみしい思いをさせません。明るくて、根性もある。運動部出身ということもあるのか、上下関係がしっかりしていて、厳しさも持っています。だから新入社員がついてくるんでしょうね。
我々の職場では、治工具を自分で設計して加工し、プログラムも自分で作りますが、彼女は女性ならではのやわらかい発想で、斬新な設計やプログラムを考えます。男性社員も参考にするほどです。女性の考えや発想がこの職場にも必要だと感じました。彼女はそれに気づかせてくれたんです。
富樫工場長
当社には、「改善提案制度」というものがあり、全社員毎月1件は提案しなくてはなりません。小林さんはとても前向きで、提案件数もずば抜けて多い。経営計画発表会で年間の優れた提案を表彰しますが、彼女は社長表彰を2回も受けています。この制度が社員に根付いたのは彼女の影響が大きかったと思っています。

技能検定も積極的に受けているし、加工現場の研修も自ら名乗りを上げて2週間、埼玉まで行きました。これを機会に彼女の後継がどんどん出てくることを期待します。女性が入ると職場の雰囲気もガラッと変わりますからね。

「男性社員の多い職場ですが、決して女性に門を閉ざしているわけではない」と富樫賢治工場長
「男性社員の多い職場ですが、決して女性に門を閉ざしているわけではない」と富樫賢治工場長
女性ならではの細やかさで、主に小物部品の加工をまかされている小林さん
女性ならではの細やかさで、主に小物部品の加工をまかされている小林さん

技能検定1級の取得を目指し、ひたすら努力の日々

仕事をする上で大事にしていることは?

小林
職場に女性は自分一人しかいないので、男性に負けないようにとは常に思っています。力ではどうしても負けますが、技術では負けないよう技能検定の取得に励んでいます。今、機械加工(マシニングセンタ作業)2級を持っているので、1級を取得できるようにがんばっている最中です。あと、今職場がけっこう忙しいので、他の機械の操作も幅広くできるようになりたいと思います。
加工のプログラミングや治具の設計もこなす
加工のプログラミングや治具の設計もこなす
万能投影機
三川工場で生産される製品の例(左が測定顕微鏡、右が万能投影機)
三川工場で生産される製品の例(左が測定顕微鏡、右が万能投影機)

ものづくり産業を目指す女性にメッセージをお願いします。

株式会社ニシカワ
小林
ものづくり産業は、男性中心の職場だと思いますが、女性の目線で見ると違った見方ができて、細かいところで気づくところもまた違うと思います。この業界に女性がもっと増えてくれたら嬉しいですね。

工業系の仕事に興味があったという小林さん。男性中心の製造現場で、慣れない機械操作に戸惑いや不安があったものの、持ち前の明るさと根性で見事に克服。今では後輩からも上司からも一目おかれる存在となりました。女性ながら男顔負けの努力をする小林さんの姿は、会社にもいい影響を与えているようです。

(2014/11/28取材)

株式会社ニシカワ

企業からのメッセージ
株式会社ニシカワ
私たちは、昭和25年(1950年)、大手カメラメーカーの下請けとして創業しました。現在、県内に三川工場と鶴岡工場の2つの工場を持ち、光学測定器などの精密機器から、トレーラーに1つしか載らない大物鋳造部品まで一貫生産し、お客様のニーズにお応えしています。女性社員も特にカメラ部門で活躍しております。結婚や出産を機に退職する社員はおらず、育休・産休の後に復帰し、通常勤務に戻っています。作業着が油で汚れたり、重量物を扱ったりする部署は男性が多いですが、女性でも興味のある方や挑戦してみたいという方は大歓迎です。

社員数

代表者:代表取締役 西川 俊行
所在地:山形県三川町大字押切新田字対馬365-1
TEL:0235-66-3681
URL:http://www.nisikawa.co.jp/
産業分類:製造業(光学機器・精密機器)
事業内容:精密機器、半導体機器、光学機器の製造、カメラ上蓋部組立
インターンシップ、企業見学の受入:可

NDソフトウェア株式会社

臼井さん

使いやすい!
お客様からいただく声が
何よりの喜び。
NDソフトウェア株式会社(南陽市)

NDソフトウェア株式会社は介護・福祉・医療施設向けのオリジナルソフトウェアの開発・販売を行うシステムメーカーです。開発部署では、6~10人単位のグループに分かれ、それぞれ異なるシステムの開発を行っており、臼居さんの所属する第1グループでは、主に特別養護老人ホームなどの入所施設で使われるシステムの開発を担当しています。

臼井さん

プロフィール
臼居 さん

昭和59年11月23日生まれ
東京工科大学メディア学部卒業
2007年4月NDソフトウェア株式会社入社

入社後4ヶ月間の研修期間を経て開発部第1グループに配属。主に特別養護老人ホームなどの高齢者向けの入所施設で使われるシステムの開発を担当。今後は新たに居宅サービス事業者向けのシステムの担当を控え、これまでのシステムとは異なる新たな知識の習得に精を出している。

入社した動機を教えてください。

大学時代を東京で過ごしました。地元である山形を離れたことで、山形という土地柄の素晴らしさを再認識し、就職するなら地元の企業と決めていました。NDソフトウェアの存在はインターネットで知り、まず介護関係のソフトウェアを扱っているという点に興味を惹かれました。自分自身が祖父母に可愛がられて育ったこともあり、間接的にでも高齢者の方の役に立てる仕事に魅力を感じたからです。さらに大学で学んだプログラミングの知識が生かせるという条件も揃っていたことが決定打に。後に県内では優秀な企業であることを知り、安心して働ける環境が整っていることも入社したい気持ちを後押ししました。

現在の仕事内容について教えてください。

NDソフトウェアでは総勢50人ものシステムエンジニアがいくつかのグループに分かれ、グループごとに様々なシステムを開発しています。私が現在関わっているのは特別養護老人ホームなどの入所施設向けの「ケア記録支援システム」という商品で、高齢者の方々の介護状況を記録したり、業務日誌を作成する目的で使用されるシステムです。開発の業務は、システムの仕様を考える「設計」、実際にシステムの作り込みを行う「製造」、システムの性能を検証する「評価」の3つのプロセスに分けられますが、現在は主に「製造」と「評価」の工程に携わっています。

臼井さん

これまで一番印象に残っている仕事は?

2007年12月に機能強化された「褥瘡(じょくそう)管理システム」の設計から評価までの一連の作業を初めて一人で担当したことです。褥瘡とは一般的に床ずれと呼ばれるもので、とくに寝たきりの高齢者の方に起こりやすい病態のこと。このシステムでは高齢者の方の現況から、褥瘡にどの程度なりやすいかを判断し、褥瘡を予防するための効果的なケアの方法を導き出すことができます。まずは褥瘡という病態のことをしっかり把握するため、無我夢中で勉強しました。お盆休み中にも本を持ち帰って読みふけったり。初めてのことも多く苦労しただけに、無事商品化されたときの喜びはひとしおでした。

担当した「褥瘡(じょくそう)管理システム」の画面。高齢者の方の現況から褥瘡にどの程度なりやすいかを判断する
担当した「褥瘡(じょくそう)管理システム」の画面。高齢者の方の現況から褥瘡にどの程度なりやすいかを判断する

この仕事でとくにやりがいを感じる瞬間は?

自分が製造に携わったシステムを、お客様に活用してもらえていると実感した時です。開発の部署ではお客様と直接やりとりすることは稀ですが、営業やサポートスタッフを通してお客様の意見をいただく機会が多くあります。「この機能が使いやすい」といったお誉めの言葉をいただけた時は、日頃の苦労が報われる瞬間です。もちろん良い評価ばかりではなく、中には厳しい指摘などもありますが、こうした意見が寄せられるのもお客様がシステムを活用してくれているからこそだと思っています。そうしていただく声の一つ一つが、「より使いやすいシステムを作りたい」というモチベーションにつながっています。

システムから出力できる統計の一例
システムから出力できる統計の一例

臼井さん
入社前と比べて自分が変化したと感じる点は?

入社するまでは、様々なサービスを「利用する側」でしかありませんでしたが、「提供する側」の立場に立ったことで、これまで何気なく過ごしていた外食や買い物のとき、その店のサービスの質に気をとめるようになりました。「どうすればお客様が満足するのか」を自分の仕事に置き換えて考えるようになったのです。そのために私ができるのは、「常にお客様の立場に立ってシステムを製造すること。」そう考えながら、日々業務に励んでいます。

この仕事に必要とされることは?

システムエンジニアというと、パソコンに向かって一人で黙々と作業をするイメージがあるかもしれませんが、NDソフトウェアの場合はそうではありません。グループ内でのディスカッションやプレゼン、システム製造後の他部署への機能説明会など、あらゆる場面で自分の考えを正確に伝え、相手の言葉を十分に理解するコミュニケーション能力の高さが必要とされます。また複数のシステム開発を同時に扱うことも多いため、「思考の柔軟さ」もシステムエンジニアに重要な要素の一つだと思います。

臼井さん

将来の目標を教えてください。

現在は主に一つの開発言語(ソフトウェアを開発するためのプログラミング言語)を使ってシステムの製造を行っていますが、将来的には一つの言語にとらわれることなく、様々なケースに応じて多様な言語を使い分けられるようになりたいです。自分自身のスキルを磨くことで、システムエンジニアとしての仕事の幅を広げていきたいと思います。

数あるIT関連の企業から地元のNDソフトウェアを選んだのは、何よりも「自分のやりたいことを実現できる道を優先したから」と語っていた臼居さん。グループ内ディスカッションでの、先輩に意見を求められても物怖じすることなく自分の考えを述べるその姿からは、自らがシステムエンジニアに必要な要素と語っていた「コミュニケーション能力の高さ」がうかがえました。大学時代は人間の感情をコンピュータで表現する「感性情報学」を専攻していたという臼居さん。「将来的には今開発しているシステムに、感性情報学を応用できたらおもしろいですね。」と笑顔で語ってくれました。

臼井さん

(2007/12/25取材)

NDソフトウェア株式会社

介護・福祉・医療関連ソフトの企画・開発・販売・運用サポートを主軸に、介護サービス提供事業やインターネットによる介護報酬請求サービスなどヘルスケア全般のトータルソリューションとして全国展開を図っている。

NDソフトウェア株式会社
代表者:代表取締役社長 佐藤 廣志
設立:1979年9月
従業員数:465名
事業内容:介護・福祉・医療関連オリジナルソフトウェアプロダクトの企画・開発・販売およびソフトウェア運用支援ソフトウェア保守サービス
所在地:山形県南陽市和田3369
TEL:0238-47-7903
FAX:0238-47-3572
URL:http://www.ndsoft.jp/

キサゲの達人
[動画あり]


奥山英治さん

キサゲの達人 奥山英治さん
2000(平成12)年、株式会社エツキ入社。製品事業部製品組立課に所属。工作機械組立係において、キサゲ作業を担当。エツキ入社後、同僚3名と他社での「キサゲ」研修を経て、ただ一人継続。経験を積むことで伝統の技を体得し、現在は後輩4名を指導しながら、さらなるスキルアップに励んでいる。

伝統技能と技術開発を両輪に 高品質の製品づくり
1~3マイクロメートルの単位
1~3マイクロメートルの単位で、微妙に調整しながら削る。機械にはできない技。

株式会社エツキは、印刷機械や圧着機などの産業機械をはじめ、フライス盤や各種工作機械の製造を行っている会社です。創業は1967年、この40年間で培ってきた高度な技術力とノウハウを生かし、積極的に技術開発に取り組む一方で、“キサゲ”という難度の高い伝統技能を守り、職人を育て続けています。伝統と先進の融合によって、多様なニーズに対応する「高品質」の製品づくりを実現。2005年にはコンパクト液体充填機の開発で「ゆとり都山形イノベーション大賞」を受賞しました。

汎用工作機械には欠かせない モノづくりの基本“キサゲ”
汎用フライス盤の一部
キサゲが施された、汎用フライス盤の一部

工作機械を中心に食品機械や印刷機械などを製造販売するエツキの製造業としての強みは、最先端の技術開発と、難度の高い伝統技能である“キサゲ”の両方が得意であるということ。キサゲとは、スクレパーあるいはキサゲと呼ばれる工具を使って金属の表面を削り、平らにする手作業のことで、汎用フライス盤などの金属と金属が摺り合う部分(摺動面)に施されます。機械による鏡面加工では出せない完璧な平面を人間の手によってつくり出し、その上で油がたまる微細な溝を彫り上げて滑らかな動きを可能にするものです。

現在、このキサゲができる企業は極端に少なくなっていますが、エツキには5人のキサゲ職人がいます。金属加工では、今でも肝心な部分に人間の感覚、技能が必要とされており、エツキではキサゲを重要な技能として残し、さらにレベルアップさせているのです。その技を見込んでキサゲ加工を依頼してくるメーカーも増えてきているといいます。

精度の高さでは定評のある 若き“キサゲ職人”たち
汎用フライス盤
ものづくりには欠かせない汎用フライス盤

5人いるキサゲ職人のリーダー的存在が奥山英治さん。40歳の奥山さんが最年長という若い職人集団ではありますが、その技術力、精度の高さには定評があります。そんな奥山さんがエツキに入社したきっかけは、会社見学に訪れた際に今まで見たことのない機械を目にし、そこで働く人々の「職人技」を感じさせる仕事ぶりに憧れたから。もうその頃から職人指向が芽生えていたようです。その後、他社でのキサゲ研修を経て職人としての技を磨いて5年、製品の品質を大きく左右するキサゲ部門を任されています。

技術革新が進むほど、そのベースマシーンとなる工作機械に求められるのはより高い品質。繊細な日本人の感覚が可能にするキサゲ技能は、台頭著しい諸外国からも脅かされることのない特殊な分野といえるのではないでしょうか。

「10年で一人前といわれる世界、自分自身もまだまだ修業の身。根気のいる仕事ですが、感覚を研ぎ澄ますことで機械以上の精度を生み出す、普通の人ではできない仕事という自負を持って取り組んでいます。」(奥山さん)

キサゲ加工
金属同士が、滑らかに動くのはキサゲ加工のおかげ
(2008/1/10取材)

株式会社エツキ

株式会社 エツキ

株式会社 エツキでは、2002年にISO9001:2000の認証を取得。よりよい「ものづくり」にこだわり、常にお客様の満足を第一に。高品質、短い納期、低コストを実現するために24時間稼働の無人加工ラインを導入するなど、最新鋭の設備と徹底した技術管理の下、素材から機械加工、塗装、組立、テスト、出荷まで一貫生産体制を確立している。
株式会社 エツキ
代表者:代表取締役会長 早坂悦男
代表者:代表取締役会長 早坂幸起
設立:1967年9月
従業員数:134名(2007年4月現在)
事業内容:各種自動化専用機・各種産業機械の設計、製作および販売
所在地:山形県村山市大字稲下1403-1
TEL:0237-56-3511
FAX:0237-56-3510
URL:http://www.etsuki.co.jp

Categories: 山形の達人