

超小型化戦略
ワテック株式会社は、1987年創業の小型CCDカメラの専門メーカーです。本社は神奈川県川崎市にありましたが、1990年東根市に山形工場を設立、1992年には鶴岡工場開設、そして工場地帯の川崎では人材確保が難しかったことや、創業者の出身地だったこともあり、1996年に鶴岡市に本社を全面移転しました。
今ではテレビ番組などでもよく目にする超小型CCDカメラですが、創業者である五十嵐重美会長がこの世界に飛び込んだ当時は、セキュリティ用の大型CCDカメラの全盛期。それらは、すでに大手の家電メーカーで製造販売されていたため、ワテックでは“小型化”を最大の開発テーマとして取り組み、他社との差別化を図ることにしたのです。電子回路専門の技術者でもあった五十嵐会長は、最近では携帯電話にふんだんに使われているCCD素子に着目、非常にコンパクトな回路設計を可能にしました。その試作品を米国で開催されたセキュリティ関係の展示会に出品したところ、非常に大きな反響を呼び、これが国内市場よりも海外市場をターゲットとして事業展開していくという方針を決定づけたのです。
また、保守的な国内マーケットと違って、欧米のマーケットは製品の品質、性能、価格がよければ無名であってもすぐに採用してくれます。そんな海外市場で会社独自のブランドを確立し、ブランド力を高めていくという狙いもありました。


ワテックのCCDカメラの活躍の場は、その品質の高さと信頼性で、宇宙空間をはじめ世界60?70カ国にまでおよび、銀行や美術館、警察、地下鉄、デパート、学校、遺跡など、さまざまなシーンで監視カメラとしての重責を担っています。その納入経歴には、ルーブル美術館やバッキンガム宮殿、NASA、FBIなど、世界的な施設や組織が名を連ねており、改めてワールドワイドな企業であることを実感させられます。さらに近年、ワテックの超小型CCDカメラは、工業用や医療分野、天文観測用としても注目され、需要範囲は拡大の一途です。



「創業当時はほぼ100%が海外市場向けでしたが、ここ数年、ワテックでも国内市場に目を向けはじめています。」と最近の傾向を語る中村正治社長。凶悪犯罪の多発によりセキュリティ関係の需要が急増していることに加えて、監視以外での用途も格段に広がってきているからです。現在、海外80%、国内20%ぐらいに推移しており、今後はさらに国内割合を増やしていく方針です。そのためには、多様化するニーズに対応するための商品ラインナップの充実を図るとともに、さらなる目標として、より高機能、高画質、高感度、高品質なカメラの開発・研究を進めています。

国内外での開発競争が激化の一途をたどる昨今、超小型CCDカメラのトップランナー・ワテックといえども安穏とはしていられません。基本発明は特許で防御したいと特許の出願、取得を行ってはいますが、例えば秋葉原の電気部品店に新製品を出そうものなら、数週間後にはコピー製品が出回るといった凄まじい状況です。「知的財産戦略と、さらなる新製品の開発、新分野への販路の拡大にも力を注いでいかなければなりません。」と中村社長。世の中にコピー製品が蔓延する時代だからこそ、ワテックは「品格のあるモノづくり」にこだわり、継承しています。
そして、ワテックが企業として放つ最大の魅力は、「設計から最終製品までを自社で手掛けているという、ものづくりの達成感」。そのワテックの真価をもっと地元の人々にも知ってもらおうと、学校関係を対象とした企業プレゼンテーションなども実施しています。平成11年に米国ニューヨーク州に現地法人を設立、台湾支社や北京駐在員事務所なども構え、まさしくワールドワイドに活躍する企業。地元にあることを知れば、若者にとっては大きな希望となり、地域にとっても大きな自信となるはずです。

ワテック株式会社
ワテックは、部品製造を担う工場の多い地方にあって、一貫して完成品まで手掛ける稀少な企業。業界に先駈け、超小型高感度CCDカメラの量産化に成功するという快挙を成し遂げた。それらの業績が認められ、2005年には「平成16年度ゆとり都山形イノベーション大賞」を受賞。さらに、翌2006年には経済産業省「明日の日本を支える元気なモノ作り中小企業300社」に選定されている。
創業:1987年3月
従業員数:70名(関連会社を含む)
事業内容:CCDカメラおよびその周辺機器の開発設計・製造、販売
所在地:山形県鶴岡市大宝寺字日本国254-2
TEL:0235-23-4400
FAX:0235-23-4409
URL:http://www.watec.co.jp/