滝田潤さん

発想とひらめきに導かれ
新しい道に分け入る
パイオニアとしての充実感
日東ベスト株式会社(寒河江市)

日東ベスト株式会社は、寒河江市に本社を置く食品加工会社です。国産コンビーフ第1号の開発に成功するほか、いち早く業務用冷凍食品の分野に進出するなど、常に日本の食文化をリードしてきました。滝田さんは、中央研究所研究部食品研究課に所属。新規事業を展開するための研究開発からマーケティング、営業販売、コンサルティングにいたるまで幅広い分野で活躍しています。

滝田潤さん

プロフィール
滝田 潤さん

寒河江市出身。
宇都宮大学農学研究科修士課程修了。
1997年日東ベスト株式会社入社。
平成10年山形県地域結集型共同研究事業 派遣研究員。
平成13年同事業 兼業研究員。
平成16年山形大学共同研究員。
平成18年日東ベスト株式会社地域農産物新加工品開発プロジェクトサブリーダーとなり、現在に至る。

入社の動機、きっかけは?

進学先の宇都宮大学では食品化学を専攻していました。そこで得た知識や経験を生かして就職はぜひ食品企業に、しかも地元山形の企業に、と思っていたのです。大学、大学院の6年間を県外で過ごしたことで、山形のよさを再認識したんですね。それにちょっと古い考えかもしれませんが、長男としての自覚というか責任感もありましたから。幸いなことに地元である寒河江市には日東ベストがあり、新商品の開発や技術の向上に熱心で、食品に関する研究者を求めていました。

具体的な仕事内容を教えてください。

入社して1年半ほどは、試作開発部で、加工技術の向上に取り組んでいました。例えば、冷凍コロッケをより美味しく仕上げるためにサクサク感の本質を解明するなど。その後は、現在の研究食品課に配属となり、「食品はいちばん大切な医薬品」という考えのもと、天然素材中から有効成分を抽出し、その生理機能の解明にあたっています。
食品に健康が求められる昨今、日東ベストでは新規事業のタネとして食品の機能性という点に着目しています。大学などの研究機関であれば解明まで行えば実績としては十分ですが、企業ではそれをユーザーの幸せ感や満足感に結びつけて対価を得る必要があります。だから、企業のプロフェッショナルには専門的な知識だけではなく、企画力や情報収集力、マーケティング、コンサルティングなど、多彩な能力が求められます。

山形県の特産品ラ・フランスの研究で大きな成果をあげたそうですね。

ラ・フランスの粉末化は1998年から取り組んできました。ラ・フランスは乾燥させると芳香が失われ、バウダー状にしても吸湿性が高くすぐにべとついてしまうので、果汁やジャム状での商品化にとどまり、焼き菓子のような水分量の少ない商品には利用されてきませんでした。私たちのグループでは、大学や県工業技術センター、JAなどとの共同研究により、それらの課題をクリア、2006年に、香り豊かで保存性にも優れたラ・フランスパウダーを誕生させることに成功したのです。
翌年には県内菓子店で、ラ・フランスパウダーを使った焼き菓子の商品化もされました。山形は全国に誇る果樹王国、今後はこの技術とノウハウをさらに生かしていきたいですね。今は、さくらんぼパウダーの商品化に向けて研究・開発を進めています。

ラ・フランスパウダー「舞果香(ぶかっこう)」。ネーミングもユニーク
ラ・フランスパウダー「舞果香(ぶかっこう)」。ネーミングもユニーク

この仕事はどんな人に向いているのでしょう?

企業の研究者は研究をしているだけでは不十分で、ユーザーを視野に入れたマーケッターとしての動きも要求されます。人が好きであること、好奇心があること、フットワークがいいこと、客観性があること、貪欲であること、柔軟性があること、楽観的であること、意志決定思考であること、数字やカタカナに強いこと、失敗をおそれないこと、などたくさんのことが求められる。あとはセンスと努力。仕事に応じた的確なパートナーの選択ができるということも不可欠な能力です。
どんなに素晴らしいプロフェッショナルでも欠点はあるはずで、それを補うようなパートナーを探し、協力してもらうことが重要になってきます。それは、同じ部署の同僚や上司であったり、他の部署のスタッフ、あるいは社外のパートナーかもしれません。つまり、たくさんの人々の協力が得られて初めていい仕事ができるということを認識すべきなのです。

滝田 潤さん

滝田 潤さん
この仕事のどんな点にやりがいを感じますか?

新規事業のためのタネ探しをする仕事ですから、どんなタネなのかは未知の世界。それにいち早く出会えるという点ではとてもワクワクします。事業としての目途がついて自分たちの手を離れても、パイオニアとして道なき道をかき分けてここまできたという充実感はずっと残ります。そのためには、とことんプロフェッショナルであること、そして多方面にわたる知識や技術、経験を備えたゼネラリストであることも求められるのでとても大変ではありますが。

仕事を離れたときのリフレッシュ法は?

家族と家でゆっくり過ごしたり、ショッピングに出かけるのも好きです。でも、そんな時でも無意識のうちに競馬などのデータをもとにシミュレーションをしたり、マーケティングリサーチ的なことをやって楽しんでいる自分がいたりします。いつも仕事のことが頭から離れないということではなく、研究開発のアイデアというものは、仕事から解放されてリラックスしているときにこそ突発的にひらめいたりするものなので。
寝ているとき以外はすべて発想やひらめきが舞い降りてくる可能性があります。でも、それは決して苦痛ではなく、むしろ大きな喜びです。

滝田 潤さん

今後やってみたい仕事、目標は?

ラ・フランスの研究を進める中、通常は剪定で廃棄される枝の部分にアルブチンが豊富に含まれていることがわかったのです。アルブチンといえば、しみそばかすなどの原因となるメラニンの合成を抑える美肌成分として、特に女性の間では注目の的。すでに東京の化粧品メーカーと連携しての研究も進められており、2009年の商品化を目指して順調に進行しています。
現在は、また新たなタネ探しに取り組んでおり、モノが何かはまだ企業秘密でお話しできませんが、それで新規事業のベースを立ち上げることが当面の目標です。さらに、将来的には社内ベンチャーなどを立ち上げることができればなおやりがいが実感できるるし、楽しいだろうなと考えています。

ラ・フランスの枝から抽出されたアルブチンを含む水溶液
ラ・フランスの枝から抽出されたアルブチンを含む水溶液

滝田さんは2006年、科学技術に関して優れた研究成果をあげた若手研究者に贈られる第6回県科学技術奨励賞を受賞し、齋藤弘知事より表彰を受けました。ラ・フランスパウダーの開発をはじめ、ラ・フランスの枝に豊富なアルブチンが含まれていることを発見し、美白成分の新しい精製法を開発したことが評価されたもの。今後も滝田さんの研究開発から目が離せません。

(2007/12/14取材)

日東ベスト株式会社

食文化を通して広く社会に貢献したいと考える日東ベストでは、その一環として「財団法人 日東食品教育振興基金」を設立。学校、学生、スポーツ団体などを対象に奨学育英資金の貸与や助成を行っている。

日東ベスト株式会社
代表者:代表取締役社長 内田 淳
創業:1937年10月
設立:1948年7月
従業員数:879名
事業内容:冷凍食品・日配食品・缶詰・袋詰・チルド・レトルト食品の製造販売
所在地:山形県寒河江市幸町4-27
TEL:0237-86-2100
FAX:0237-86-3172
URL:http://www.nittobest.co.jp/

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