新境地へ導く
木造建築技術


株式会社シェルター

世界にはばたくメイドイン山形
新境地へ導く木造建築技術
株式会社シェルター(山形市)

日本初の接合金物工法「KES®構法」日本初の接合金物工法「KESR®構法」

日本初の接合金物工法「KES®構法」は全国に知れ渡り、一般住宅などの木造建築に新たな改革を呼び起こした。

24歳で会社設立。工務店から建築企業へ

「我が家は四代続く小さな工務店でした。資金も何もないところからスタートした会社です」。
山形市に本社を構える株式会社シェルターの木村一義代表取締役は、アメリカ留学後、24歳の時に前身となる「シェルターホーム株式会社」を寒河江市に設立。それから40年余が経った今では、東京・宮城に支店を持つまでになっています。
「設立して数年は大変でした。ちょうど住宅業界が大不況を迎え、家が売れない時代でもあったので、なおさらです。しかし、始めから順調にいくよりも、失敗や苦労をひと通り経験したことで『このままでは終わらない』というガッツを持ち続けられたと思っています」。

代表取締役 木村一義氏
代表取締役 木村一義氏
木村氏がネジや釘などの金物を使わない従来の木造建築技術のメリットとデメリットを熟知していたのは、幼少時から工務店を経営する父親の仕事を見ていたから。中学生になると、「一般住宅には生産性と強度を重視する工法が必要だ」と考えていたそう。資金はなくとも、知識と知恵、そしてガッツが苦境を乗り越える原動力となり、やがて日本初の接合金物工法「KES(Kimura Excellent Structure System)®構法」を生み出しました。
株式会社シェルター本社
株式会社シェルター本社

地震に強い「KESR構法」での木造建築

株式会社シェルターが独自に開発・実用化した「KES®構法」は、柱と梁の接合部分に金物を用いた工法。木造建築の弱点と言われていた接合部分を金物で補強し、驚異的な強度を実現しました。
従来よりも強度のある木造建築。それが証明されたのは、1995年の阪神・淡路大震災でした。被害の大きかった神戸市灘区に建築した3階建ての一般住宅は、周囲の住宅が倒壊する中でその姿を変えず、メディアで紹介されるなど一気に注目を浴びることとなりました。その後の大きな災害でも住む人の命と財産を守り抜き、2001年に建築した岩手県浄法寺町新庁舎を皮切りに、大型施設でも数々の建築物を世に出しています。

最先端の木質構造技術築
KES®構法と併せて全国から熱視線を集めるのは、「木質耐火部材COOL WOOD®」。核となる木材を石こうボードで覆い、耐火性を格段に向上させたものです。
2018年1月、複数のメディアで紹介され日本中を驚かせたのは、昨年12月末にCOOL WOOD®が木構造部材で国内初の「3時間耐火認定」を取得したこと。これにより、15階以上の高層ビルを木造で建てられるようになりました。国内で例のない、木造高層ビルが建つ日も近いかもしれません。
日本初3時間耐火の国土交通大臣認定を取得した木質耐火部材「COOL WOOD®」
日本初3時間耐火の国土交通大臣認定を取得した木質耐火部材「COOL WOOD®」

「2時間耐火認定は2014年に取得しましたが、3時間の耐火はまったくの別次元で、我々も未知の領域でした。研究には時間を要しましたが、致命的な失敗はありませんでした。考え方や構造の基本が間違っていないからでしょう」(木村社長)。この耐火技術は、一般社団法人木造耐火建築協会(会長 木村一義)を通じて全国に広くオープン化しており、現在約270団体の会員が所属しています。

また、三次元設計・加工技術による「FREE WOOD™」は、木材を「曲げる」「切り出す」「削り出す」ことで実現させた美しいフォルムの部材です。曲線やひねりで表現されたその姿は、木材の持つ安らぎと、芸術性の高い美しさを兼ね備えています。

これら最先端の木質構造技術で生み出される建築物は、見る人に感動を与える外観と安心して過ごせる強度が魅力。一般住宅だけでなく、公共施設などの大型建築にも用いられ、好評を得ています。

FREE WOOD™を使ったモニュメント
FREE WOOD™を使ったモニュメント
シェルターなんようホール(山形県南陽市文化会館)。「最大の木造コンサートホール」としてギネスに認定された。
シェルターなんようホール(山形県南陽市文化会館)。「最大の木造コンサートホール」としてギネスに認定された。
COOL WOOD®の耐火性能試験。
COOL WOOD®の耐火性能試験。
COOL WOOD®の耐火性能試験。1,000℃を超える炉内で3時間燃焼した後、炉を閉めきったまま9時間残置。試験体の被膜を剥がし、荷重支持部に炭化痕(焦げ目)がない木肌を確認する。

環境と未来を見据え、正しい道を歩む

木村社長が木造建築にこだわる理由のひとつが、「環境への配慮」。地球規模で気候が劇変する中、低炭素社会を築くためにも、木を使った建築はこれから増やすべきという信念が、これまでの研究・開発を支えてきました。

「木は唯一再生可能な資源であるだけでなく、空気中の二酸化炭素を吸収・固定化し、建物を建てる際、最も環境への負荷が小さい資材です。

さらに、ストレスフルな社会の中で、木の空間による癒し効果も期待できます。木造建築はこれまで、性能や法律上の制約に可能性を阻まれてきましたが、これからは鉄骨とのハイブリッド造なども視野に入れ、木造建築による木造都市を作ることを目標にしていきます」。

24歳の時に掲げた基本理念「何が正しいかを考える」を、40年経った今も貫き通す株式会社シェルター。「正しい」の意味は、企業としてではなく、人として。客観的に、冷静に見極め、進む道を選択し続けてきました。木造建築を未来の形へと進化させてきた研究とその成果は、これからの建築界をさらに変えようとしています。

地球の未来が幸せになる建築を追求している
地球の未来が幸せになる建築を追求している
社会貢献活動として「シェルター絆の森」や「シェルターの森」での植林と森林保全活動を毎年実施
社会貢献活動として「シェルター絆の森」や「シェルターの森」での植林と森林保全活動を毎年実施。
(2018/01/23取材)

株式会社シェルター

株式会社シェルター
株式会社シェルターは、1974年に「シェルターホーム株式会社」として設立し、1997年に商号を「株式会社シェルター」へ変更。日本初の接合金物工法「KES®構法」を開発・実用化し、耐震性・デザイン性を飛躍的に高めた。2017年12月には木質耐火部材「COOL WOOD®」が日本初の3時間の国土交通大臣認定を取得。優れた工法と建築技術での斬新な建築物が評価され、数々の賞を受賞している。環境に関する社会貢献活動にも熱心で、2010年に山形県と「やまがた絆の森プロジェクト」協定を締結するなど地域活動に貢献している。
代表者:代表取締役 木村 一義

創業:1974年12月
従業員数:100名(平成30年1月現在)
事業内容:木質構造部材の研究・設計・製造・販売/注文住宅の設計・施工、リフォーム/木造都市づくりの企画・コーディネート
所在地:山形県山形市松栄1-5-13
TEL:023-647-5000
FAX:023-647-5050
URL:http://www.shelter.jp/

アルス株式会社

遠藤 一真さん

機密性・水密性を
大きく向上させながら
木材の持つ断熱性、防露性を生かした木製サッシ”夢まど”
アルス株式会社(米沢市)

アルス株式会社では、木製サッシ”夢まど”の製造・販売。木材の良さを活かし、断熱性・防露性をさらに高めて、健康で循環型の自然と共生できる住環境に貢献。また、防火性能を高めた木製サッシの開発にも成功しています。製作の工程で使用する金物などは主にドイツ製が多く、重厚さを感じます。

入社の動機、きっかけは?

高校を卒業後、普通の企業に就職。自分の手で『もの』を作る仕事に憧れがありました。本当はそういう職業に就きたいと思っていました。工業系の学校には進まずに一度は諦めた夢。小さいころから木で何かを造る工作・木工が好きでした。約3年半前にこの会社のことを知り、迷わず入社を希望しました。

遠藤さん

プロフィール
遠藤 一真 さん

1991年生まれ
山形県米沢市出身。
山形県立米沢商業高等学校卒業。
2014年アルス株式会社入社。

主に木製サッシの組立・仕上げ工程を担当。

具体的な仕事の内容を教えてください。

木製サッシ製造における最終仕上げと、組み立ての工程を担当しています。段階を踏んで上がってくる製品のパーツを組み立て、ガラスを入れ出荷となる工程です。

この仕事のどんなところにやりがいを感じますか?

一本の木材がそれぞれの工程を経て住宅や建物に組み込まれるわけですが、完成した形を目にした時にはやりがいを感じますね。また、サッシの設置後に購入されたお客様から、お礼のメールが来たことを聞くと「頑張ってよかったな。」と思います。

性能試験の模様
性能試験の模様

この仕事で一番大切にしているところとは何ですか。

仕事を始めて、思ったより自分に体力がないことに気付きました。ですから体調には気を遣いますね。残業が続きやすい仕事なので、どうしても寝不足になったり、食事が不規則になってしまいがちですし。でもだからこそ、今まで以上に自分の体をいたわるようになりました。体調の自己管理は本当に大事なことで、これはどんな仕事にも必要不可欠なものだと思います。そこで、できるだけ効率よく仕事が進められるよう実践しているのが、毎朝、その日の作業スケジュールを書き出してから仕事をはじめること。ごくごく当たり前のことなんですが、これをするとしないとでは、動きが全く違ってきますし、スムーズに作業が進めば、残業時間も減って、朝もきちんと起きることができる。そういう当たり前なことを当たり前にできるって、実はとても大切なことなんじゃないかと思います。

木製サッシ「夢まど」断面形状
木製サッシ「夢まど」断面形状

逆に、いちばん大変だと思うことは何ですか ?

製作工程で使用しているドイツ製の金物には日本語での説明書きなどは無く、図面を見ながら組み立てる必要があります。馴れるまでは大変でした。また、この仕事は職人の仕事です。先輩達の仕事を見て覚えることが大事。わからない事があれば聞いて覚える。先輩たちは優しく教えていただけます。先輩たちには本当に感謝しています。「よく、やってくれている。」と高橋社長。

遠藤さん

今後の目標を教えてください。

先日、ベテラン職人の方が定年で退職されました。その抜けた穴を自分が埋められるように頑張ることです。自分にも後輩が出来、今度は自分が教える立場になりました。自分も覚えなければならないことがまだまだ沢山あります。納期までのスケジュールなどを考えうまくバランスをとりながらやっていくことが目標です。

(2017/1/18取材)

アルス株式会社

窓は建築部材の一つであり、防犯・防火・コミュニケーション・プライバシー、又、採光・日射熱取得・通風・換気・眺望・開放感などの快適な住空間を保つための大切な役割を担います。木製サッシ「夢まど」は、それらの多岐にわたる役割を、素材である木材の良さを活かし、断熱性や防露性の優位性をさらに高めて、健康で循環型の自然と共生できる住環境に貢献していきたいと考えております。
 目指すのは、求められる、より良い開口部を提供し続けること。さわやかな風や、あたたかな陽だまりで、幸せな空間に感じられる窓を創り続けてまいります。

アルス株式会社
代表者:代表取締役 高橋 光雄
創業:昭和32年12月 設立・平成5年6月
従業員数:13名(平成28年4月現在)
事業内容:木製サッシ・木製ドア製造販売
所在地:山形県米沢市大字笹野1513-4
TEL:0238-38-4027
FAX:0238-38-4028
URL:http://yumemado.com

高い技術力こそが
朝日ブランド


株式会社朝日相扶製作所

世界にはばたくメイドイン山形
高い技術力こそが朝日ブランド
株式会社朝日相扶製作所(朝日町)

NC加工マシン

デンマークのワンコレクション社から発注を受けた国連本部ビル会議場の椅子(写真左)。多品種少量短納期を可能にするために緻密にプログラミングされたNC加工マシン(写真上)

憧れのブランドを技術力で支える

朝日相扶製作所は、発注元企業のブランドで販売される製品を製造するOEMメーカー。椅子やソファを中心にとした木工家具を製造しています。農村の出稼ぎを減らすために雇用を生み出そうと事務椅子の座面の布の縫製工場として創業したのが1970年。「相互扶助」から命名されたという社名には、創業時の思いが込められており、四十数年の時を経ても従業員のほとんどは、町内および近隣市町の人々だといいます。

昭和40年代のオイルショックを機に進出した木工家具の製造で実績を上げ、椅子だけでも1,500 種類、トータル5,000アイテムもの木製家具を各ブランドのオリジナリティー、こだわりに合わせて1台から受注、製造。各社からの多種多様な要望に応えていく中で磨き抜かれた技術力は、他の追随を許さない卓越したものになっていきました。オリジナルブランドを持たず、営業・販売ルートも持たず、ものづくりに徹することで「NAMELESS-BRAND(名を秘したブランド)」という市場になくてはならない独自のブランドネームを手に入れたのです。

OEMメーカーですから、朝日相扶のネームはどこにも記されていませんが、みなさんが今座っているその椅子ももしかしたらメイド・イン朝日相扶製作所かもしれません。それくらい多様な相手先ブランドの信頼を得て、そのブランド名を名乗ることを許された家具を世に送り出しているのです。

丁寧に研磨。製品の仕上がりを左右する大事な工程
丁寧に研磨。製品の仕上がりを左右する大事な工程
きれいに研磨され、組立を待つ椅子のパーツ
きれいに研磨され、組立を待つ椅子のパーツ

ヨーロッパのブランド家具も手掛ける

朝日相扶製作所の最大の強みは多品種少量短納期体制。最少ロットは1台から、そして最短納期は4日、しかも、必要な時に、必要な場所へ、必要な質と量を届けるジャストインタイムシステムで得意先企業の在庫の無駄をなくし、エンドユーザーへの直接納入により二次配送費用をなくすこともできます。この迅速かつ柔軟な受注体制により多くの家具メーカーの支持と信頼を集めて、気がつけば得意先企業は80社を数えるまでになっていました。その中には、誰もが知っているヨーロッパの有名ブランドもあります。確かな技術力が認められ、日本国内で販売されるそれらブランド家具の製造を任されているのです。

多種多様を極める得意先ニーズへの対応を可能にしているのが、熟練の技術スタッフであり、NCマシン(数値制御工作機械)です。従来、NCマシンは大量生産用に使用されますが、ここでは緻密なプログラミングにより職人技を要するような高度な製品づくりにも活用しています。職人技ではどうしても出てしまう微妙な誤差がNCマシンでは一切生じません。5,000種類ものアイテムをデータとしてストックできるのもコンピュータならでは。逆に、一時は機械で行っていた塗装を現在は手作業で行っています。ひとつひとつ木目や色合いが違う天然木は、機械で均一に塗装してしまうと仕上がりにばらつきが出てしまうため人の目で確かめながら塗り方を加減する必要があるからです。

布張りは表面にシワやたるみができないよう慎重に
布張りは表面にシワやたるみができないよう慎重に
きれいに布張りされた椅子のパーツ
きれいに布張りされた椅子のパーツ
3次元形状の加工も可能なNCマシン
3次元形状の加工も可能なNCマシン
塗装を終えた椅子をただいま乾燥中
塗装を終えた椅子をただいま乾燥中
椅子やソファの布地部分をミシンで縫製
椅子やソファの布地部分をミシンで縫製

OEMに徹してきた黒子が表舞台へ

こうしたものづくりへの真摯な取り組みが欧州家具ブランドの目に止まり、2009年からデンマークのワンコレクション社への輸出を開始しました。さらに、2012年にはそのワンコレクション社からの発注でニューヨーク国連本部ビル信託統治理事会会議場に椅子260脚を納入。NAMELESS-BRANDとしての誇りと責任を持ち、世界一の黒子を目指してきた朝日相扶製作所が一躍、表舞台に躍り出た瞬間です。

「このことで『いつかは、エルメスの家具を手掛けたい』と掲げてきた目標が現実味を帯びたような気がします」と素直に喜びを表現する阿部佳孝社長。これを機に朝日相扶製作所の存在が国内外で知られるようになり、注文や就職希望の問い合わせが寄せられるなど、さまざまな反響があったようです。しかし、会社の名前が表に出る、出ないにかかわらず、求められる質と量の家具づくりに誠心誠意取り組む姿勢は少しも変わっていません。

国連本部ビル会議場に納められた椅子。社内でも展示している
国連本部ビル会議場に納められた椅子。社内でも展示している
ワンコレクションの製品を手掛ける工房
ワンコレクションの製品を手掛ける工房
「いつかはエルメス……」と次なる快挙を見据える阿部佳孝社長
「いつかはエルメス……」と次なる快挙を見据える阿部佳孝社長
(2013/11/26取材)

株式会社 朝日相扶製作所

株式会社 朝日相扶製作所
朝日相扶製作所は、農村の出稼ぎ解消をめざして1970年に椅子カバーの縫製工場として創業。昭和40年代のオイルショックを機に木工家具製造に進出。現在は、自社ブランドを持たない、OEMに徹した家具メーカーとして多品種少量短納期体制でお客様のあらゆるニーズに対応し、大きな信頼を得ている。その技術力には定評があり、名だたる家具メーカーから製造委託を受け、それぞれのブランドネームで市場に送り出している。2009年にはデンマークへの輸出を開始。2012年にはNY国連本部ビル会議場の椅子260脚の製造を手掛け、一躍、国内外の注目を集めた。
代表者:代表取締役社長 阿部佳孝
創業:1970年8月
従業員数:137名,br>
事業内容:家具製造業
所在地:山形県西村山郡朝日町大字宮宿600番地15
TEL:0237-67-2002
FAX:0237-67-3156
URL:http://www.asahi-sofu.co.jp/

紬の達人


小松 寛幸さん

紬の達人 小松寛幸さん
昭和45年生まれ。専門学校卒業後、仙台の工業・建築デザイン関係の会社に入社。その後、山辺町のオリエンタルカーペットに入社。6年間在籍し本社で絨毯のデザイン、東京・大阪で営業を経験。退社後、米沢にあった織物関連の専門校で織物の基本を習得。それまで習得した知識・経験を生かし、家業である小松織物工房を継ぐことになる。

山形県中部にある白鷹町で伝統の技法を継承。
紬の達人=小松寛幸さん
紬の達人=小松寛幸さん

山形県中部にある白鷹町、人口約14,300人の町内の山間の集落にその工房はありました。『板締絣染め』という技法(全国でも珍しく町内でも2軒のみ)で絣染めを行う小松織物工房。その卓越した技術は経済産業大臣指定の伝統工芸とされています。小松織物工房の起源、それは糸の染屋。昔は織りの工程を農閑期の農家に依頼していたそうです。当時の農家には、現在の小松織物工房にあるような機織機を持っている家庭が多くありました。
時代が移り変わり、今では染めから織りまでの工程をこの工房で行っています。正式な文献などは残っていませんが、明治13年に創業されたとされる小松織工房では、約130年以上にわたり独特の技法を受け継いでいます。

希少となった繊細な技法、染めの工程『板締絣染め』
『板締絣染め』で使用している木型、数十種類のパターンがある
『板締絣染め』で使用している木型、数十種類のパターンがある

今では希少になっている技法である糸の『板締絣染め』。「何年やっていても細心の注意と集中力を必要とする作業です。」と小松さん。

『板締絣染め』とは、予め溝が彫り込んである絣板の間に糸を挟み込み幾重にも絣板を重ね、その絣板を押木とボルトで締め付け、染料をかけて染色を行う手法。使用する絣板の溝には模様が刻まれており、重ねると接触面の溝から模様が浮かび上がります。絣板で挟み込んだ糸一本一本の張りが均一でないと思い描いた模様が出ず、本来白地になるところに色が入ってしまう場合があり、それはもう製品には使えません。

小松さんは、「絣板を外す最後まで染めが成功しているか分からない」と話します。もちろん、染め上がりに問題があると織りには使えません。

絣板に直接染料を上からかける『ぶっかけ染め』
絣板に直接染料を上からかける『ぶっかけ染め』

『白鷹紬』『白たかお召』の特徴、風合いを楽しんでほしい。

『白鷹紬』は白鷹町の織物を総称した名称です。その白鷹紬に属し、小松織物工房の主力商品が商標登録されている『白たかお召』(しらたかおめし)です。
その特徴は、板締絣染めで染め上げた『かすり』の模様と、お召本来の独特な風合いだといいます。
糸1mあたりの撚りは通常、200回程度が一般的。小松織物工房で使用しているお召糸ではその10倍の2,000回の撚りをかけています。これをノリで固めたうえで織りの工程を行います。お召糸は反物の横糸の半分を占め、残りの半分を板締めで染めたかすり糸が反物を織りあげていきます。織る時の幅は約46cmありますが、湯通しする事でノリが剥がれ、撚りが戻ると約30cmまで縮みます。そこから『幅だし』という工程を行うことで約39cmの並幅と言われるサイズに。この状態になると織物の表面に鬼皺(おにしぼ)と呼ばれる『皺』がたちこれが『白たかお召』の特徴となります。生地自体が縮んでいる状態なので、しわになりにくいという利点と、縮むことで肌に接する面積が減ることで風合いを楽しめ着心地が良い生地に。「この着心地が最大の武器であり、多くのお客様に認めていただいた白鷹の織物です。」と小松さん。
他の産地にもこのような商品はありますが、違いは糸の太さと織機で使用している筬(おさ)の密度とバランス。糸と筬(おさ)の密度とバランスが『白たかお召』の風合いを出すといいます。

1枚1枚『板』を外していきます
1枚1枚『板』を外していきます
小松織工房

伝統工芸士としてのこだわりたい姿勢

「同じものを大量に作るものづくりより、『お客様からの注文や要望には応えられるものづくり』、『お客様の期待を裏切らないものづくり』を心掛けていきたい。」
『板締絣』にこだわりを持っている小松さんですが、こだわりは全ての工程に及びます。
「『糸の準備』『染め』『織り』に至る全てのこだわりが『白たかお召』です。」と語る小松さん。

『模様』が浮かびあがってきます
『模様』が浮かびあがってきます

伝統の『染め』と『織り』でつむぎ、次世代へ夢をつなぐ。今後の夢。

「次の担い手を考えたとき正直、不安要素しかありません」と話す小松さん。その不安要素をお聞きすると、原料の問題、各工程の職人の問題だといいます。染料の入手先、織機で機を織る織り手、『板締絣染め』で使用する絣板を彫る職人など。一番の問題は良質なシルクの確保。国内外における良質なシルクの確保が難しくなると想定しているそうです。
「現在携わっている職人さんも年々高齢化しており、若い人が飛び込める環境ではないかもしれません。
今後は今までの伝統ある技法をだけでなく、ソフト面で新しいものづくりを提案し新たな伝統を切り開いていきたい。色々な分野で活躍されている職人さんとも『関わり』を持ち、日本のものづくりの底上げにも貢献出来ればと思っております。」

着物の画像
白鷹つむぎの画像
白鷹つむぎ
(2016/12/27取材)

小松織工房
小松織物工房

小松織物工房

山形県指定無形文化財『本場米琉(白鷹板締小絣)』の技法で『白たかお召・紬・上布折元』を製作。糸の仕入れから染色・織りまでの全ての工程を一貫して行う。現在では全国的にみても希少な技法を用いる。9名の職人さん(織り子さん)を抱え出機(だしばた)という形式で織りを行う場を提供。織り以外は家族で製作に携わる。繊細な染めと織りの技法を継承し続けている。

小松織物工房
代表者:小松寛幸
設立:明治13年
事業内容:染物・織物
所在地:山形県西置賜郡白鷹町大字十王2200
TEL:0238-85-2032

Categories: 山形の達人

進和ラベル印刷株式会社

佐藤 健一さん

商品を引き立て、
人を惹きつける
ラベルパワーを
最大限に発揮するため
最良のデザインを追究する。
進和ラベル印刷株式会社(上山市)

進和ラベル印刷株式会社は、商品の顔となるラベル・シールを専門とする印刷会社です。お客様がアピールしたい商品をより個性的に、美しく際立たせるラベルやシールを企画・提案・製造しています。それらラベルやシールの訴求力を大きく左右するのがデザイン。佐藤さんは、お客様の要望と商品コンセプトをもとに打ち合わせを重ね、お客様が伝えたい思いをビジュアル化し、カタチにしていきます。業務拡張に伴い庄内支店勤務となって4年、ラベルパワーを最大限に引き出すデザインを生み出しています。

佐藤 健一さん

プロフィール
佐藤 健一 さん

 

1982年生まれ。
山形県寒河江市出身。
東海大山形高等学校から東北芸術工科大学に進学。
卒業後、グラフィックデザインを勉強したいと仙台の専門学校へ。
2006年「進和ラベル印刷株式会社」入社。
2010年より庄内支店制作室勤務。

入社の動機、きっかけは?

高校生の頃からグラフィックデザインに興味があったんですが、大学では建築デザインを専攻。 卒業、そして就職となったときに、やはりグラフィックデザインへの思いが再燃し、仙台の専門学校に入り直してグラフィックデザインやコンピューターグラフィックの勉強をしました。
地元山形の印刷会社やデザイン会社への就職を希望していたところ、縁あって進和ラベル印刷に採用していただきました。ラベルやシールに特化した印刷会社ということで当初は少し戸惑いもあったんですが、私たちが日常的に目にしているラベルやシールの多さに改めて気がつき、興味が湧いてきました。

具体的な仕事内容を教えてください。

営業部のスタッフからお客様の要望や商品のコンセプトの説明を受け、制作デザイン室で打ち合わせを行い、イメージを膨らませてコンピューターでデザインを起こします。今のところ庄内支社の制作担当は私一人なので打ち合わせの相手はもっぱら担当営業です。場合によっては担当営業と一緒に出向いて、お客様と直接打ち合わせをさせていただくこともあります。デザインが決まったらラベル原紙に印刷してサンプルを作製。ラベルやシールは、チラシやポスターといった他の媒体と違って、単独で使用されることはありません。必ず商品のパッケージやケース、ボトルなど、何かに貼り付けられて初めて完結する製品なので、より仕上がりをイメージしやすい状態にしてプレゼンテーションを行うわけです。デザイン、色、形状、ラベル素材など、お客様にご納得いただいた上で印刷に回します。仕上がりの色や質感など、印刷担当者との打ち合わせ、調整も重要な仕事です。
また、最近ではラベルデザインから派生してパッケージやPOP、ポスターのデザインなどを提案させていただくケースも増えてきています。商品としての統一感は重要ですからね。残念ながらラベル・ シール以外の印刷は他社さんにお願いすることになるんですが、デザイナーとしては非常にやりがいを感じます。

「 雅」「葵月」
佐藤さんがデザインを担当したラベル。「 雅」「葵月」は「世界ラベルコンテスト」で最優秀賞を受賞。
盾やトロフィー
コンテストで受賞した盾やトロフィーがズラリ

逆に、いちばん大変だと思うことは何ですか?

“大変だ”という言葉には苦労話で終わるようなニュアンスがあってあまり好きではないので、がんばってクリアするという意味合いを込めて”難しい”という表現に置き換えさせてもらいますね。デザインには正解がないので、こだわり始めるときりがないという難しさがあります。また、何度デザインを提案してもあと一歩のところでお客様に納得いただけないときも難しさを感じます。全然ダメであれば方向性を変えればいいのでむしろラクなんです。微妙に違うと言われてしまうともう堂々めぐり。
あるお酒のビンのラベルデザインのときには10回以上も校正を繰り返しました。でも、その甲斐あって最終的にはとても喜んでもらえて、そのビンを入れる化粧箱のデザインを追加で依頼されました。つまり、難しい仕事ほどおもしろいし、難しい仕事だからこそいいものが出来たときの喜びも大きいということなんでしょうね。

佐藤さん
お客様にデザインや色、紙質などについて説明をする佐藤さん

特に指導・影響を受けた上司や先輩は?

進和ラベル印刷は、とても話しやすい環境なので部署を超えていろんな人に仕事のやり方を教えてもらっています。特に、製造本部長や工場長にはさまざまなカタチでお世話になっています。例えば、自分でデザインしていると入り込み過ぎてしまって一般的な感覚を忘れてしまいがちなんですが 、そんな時、デザイン視点ではない素直な目で見てアドバイスをしてくれるのがお二人です。
デザインについて言えば、私が入社した頃は、事情により先輩デザイナーが退職されたために充分な指導を受けることができませんでした。専門学校で習ったことを精一杯生かしながら独自に学んでいった感じですね。ですから、後輩たちにはそんな苦労をさせたくないと思っているので、私もまだまだ未熟ではありますが、これまでの経験で得たものは後輩たちに伝えていきたいと思っています。

担当したもの
この中にも佐藤さんがデザインを担当したものが多数あります

この仕事が自分に合っていると感じるのはどんなところ?

私は血液型がO型、だからかどうかはわかりませんが、こだわりが強く、突きつめる性格なんです。あまり顔には出しませんが、かなり負けず嫌いなところもあって、それがデザインを追究する上ではプラスに作用しているのかなとは思っています。さっきも言ったように、デザインには正解がないのでディテールまでこだわりすぎて一つの仕事に時間がかかってしまうという難点もありましたが 、最近では程よく対応できるようになりました。それと、旅先でもお土産売り場を見て回るのが好きで、さまざまなラベルやパッケージをワクワクしながら見て楽しんでいます。好きでやっていることが仕事に役立つというのも自分に合っていると思えるポイントの一つですね。

ラベル印刷機
高品質の製品を生み出すラベル印刷機

今後はどんなことをやってみたいですか。

以前、商品のネーミングから任せてもらった仕事がすごく楽しかったので、今後は、できれば商品開発の段階から参加してみたいですね。ラベルやシールにとどまらず、パッケージやポスター、POPやのぼりなどのデザインまで、一つの商品の販売促進にトータルで関わってみたいと思っています。そして、庄内支社勤務4年目、庄内地方の土地柄や人柄も肌で感じてようやくわかってきたので 、お客様の求める”庄内らしさ”を自然に表現できるようになりたいですね。

これから社会に飛び立つ学生たちにメッセージをお願いします。

みなさん、今のうちにたくさん遊んでください。自分で言うのもなんですが、私はとてもまじめな学生で、勉強以外あまり主立った活動をしてきませんでした。今はそれを少し後悔しています。時間がたっぷりある学生時代にもっと旅行をしたり、アルバイトをしたり、いろんな経験を積んでおけ ば良かったと。それらは必ず仕事に就いたあとで役に立ちます。直接的に目に見えるカタチでではないかもしれませんが、何らかのカタチで結びついたり、ヒントになったりするはずです。
仕事では想定外のことが起こって当たり前、そんな時、いろんな経験が蓄積された人ほど臨機応変に対応できるに違いありません。自分の進みたい道とは関係ないと、よけて通らないで好奇心旺盛にいろんなことに一度は首を突っ込んでみてください。

ご自身でもおっしゃっていた通り、とてもまじめな人柄が伝わってくる真摯な受け答えの佐藤さん。インタビューの冒頭、「自然の風景や絵画など、とにかくきれいなものを見るのが好きなんです 」と目を輝かせていたのが印象的でした。佐藤さんがデザインされたラベルは確かに”きれい”が際立っています。

佐藤さん
佐藤さん
制作スタッフと打ち合わせをする佐藤さん
佐藤さん
コンピューター上でラベルをデザイン中

(2014/1/31取材)

進和ラベル印刷株式会社

進和ラベル印刷株式会社は、昭和62年(1987年)創立。顧客の満足度を上回れるようにとQ (クオリティー)、C(コスト)、D(デリバリー)を日々追究している。シール・ラベル専門の印刷会社ならではの印刷技術とデザインセンスには定評があり、「世界ラベルコンテスト」では10回以上の受賞歴を誇る。

進和ラベル印刷株式会社
代表者:代表取締役社長 晋道 純一
創立:昭和62年4月
従業員数:59名
事業内容:ラベルおよびシール専門の印刷業
所在地:山形県上山市蔵王の森10番地
TEL:023-672-7577
FAX:023-673-2019
URL:https://shinwalabel.co.jp/

高精度・高品質の製造技術に
光る熟練の技


株式会社ニクニアサヒ

世界にはばたくメイドイン山形
高精度・高品質の
製造技術に光る熟練の技
株式会社ニクニアサヒ(朝日町)

株式会社ニクニアサヒ株式会社ニクニアサヒ

小型から大型まであらゆる形状のポンプを製造。マイクロ単位の技術で精度を保ち、さまざまな機器の重要な役割を担う。

多品種・小ロットで幅広いニーズに応える

産業用ポンプや半導体露光装置等の精密部品などの製造をおこなう株式会社ニクニ(本社:神奈川県)は、70年の歴史を持つ老舗企業。「株式会社ニクニアサヒ」は、企業誘致により、1973年に株式会社ニクニの生産拠点として朝日町に創設され、以来45年間、ポンプ製造の技術をこの地で培ってきました。

ニクニのポンプは、水処理などの施設だけでなく、工業製品、食品、医薬品の製造プラント、さらには温泉や健康ランドなど、幅広い分野で使用されています。水流をつかさどるポンプは、外側からは見えずとも、それがなくては正常に動かすことができない「心臓」とも言える部分。必要な量を正確に、必要な配分で吸い込み送り出し、各設備の中で特に重要な役割を担っています。

ニクニアサヒの特長は、高品質なポンプの多品種・小ロット生産が可能なことです。工業や産業の設備に組み込まれるポンプは、性能や仕様が用途に応じて異なることが多く、発注先のニーズに応じて忠実にカスタマイズする技術が必要。オートクチュールのポンプ製造に、熟練の技が光ります。

社内に設置されたポンプの見本。
社内に設置されたポンプの見本。細かい気泡と水流をポンプが制御する。
仕様に合わせてさまざまなポンプとその部品を製造
仕様に合わせてさまざまなポンプとその部品を製造
株式会社ニクニアサヒ

時代の流れとともに進化する製品技術

創設当初から在籍するベテラン技術者から若手社員まで、109名で営む工場では、マイクロ単位での綿密な製造が展開されています。その精度は、従来のポンプの常識を超えるとまで言われるほどの高い技術です。さらに、部品加工から組み立て、出荷までの工程をすべて敷地内でおこなうことにより、高品質を維持し高い評価を得ています。

創設時は第1工場のみだった社屋は、工場の増築を繰り返しながら事業拡大を重ね、2012年には第6工場を開設するまでになりました。第6工場では、大型ポンプを製造する部門を新設しました。さらに、中小企業庁の「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」などを活用して設備を整え、時代の流れとともにニーズが増加した大型真空ポンプの製造にも新たに着手しました。現在では、敷地内に連なる工場の各部門で、あらゆるタイプのポンプの製造をおこなっています。

加えて、ニクニグループとして海外への進出も精力的に展開しています。2014年にアメリカに販売拠点を設置し、今年は台湾にも販売・調達拠点を設置しました。
森大(まさる)代表取締役社長は、「朝日町で製造されたポンプは、世界中で様々な製品に使われています。このことの認知度を高めてゆくためにニクニアサヒブランドを朝日町から世界に発信し、私たちが作っている製品が世界中でさらに役立つようになることを、これからも目指していきます」と話します。

ポンプ組立の製造ライン。
ポンプ組立の製造ライン。社員一人ひとりが責任をもって取り組む。
森大代表取締役社長
森大代表取締役社長
山形大学工学部卒。生産管理部門一筋、今年度代表取締役に就任。趣味はランニング。
 旋盤加工の工程。機械での作業にも熟練の技が必要。
旋盤加工の工程。機械での作業にも熟練の技が必要。
試験的に導入された製造ロボット。細かい動作や条件による選択を記憶させる。
試験的に導入された製造ロボット。細かい動作や条件による選択を記憶させる。

蓄積された技術ノウハウの伝承を

大型の機械を使った作業から細部を調整する手作業まで、ポンプ製造の工程はさまざまです。機械でできる部分もある一方、精度を上げるための繊細な部分は、手作業で削る加工などが必要です。ステンレスの加工や切削が一定ではない「断続加工」は、受注を嫌う業者もいるほど高度な技術を要します。そういった加工も難なくこなすベテラン技術者たちがニクニアサヒを支えてきました。
後藤吉範取締役(製造部長)は、「長い年月の間に知らず知らずのうちに蓄積されたノウハウがあるのだと思います。ちょうど団塊の世代が定年を迎える時期に差し掛かっているので、後継者育成に重点を置き、熟練の技を少しでも若い世代に伝えるために、教育に力を入れています。若い社員を採用していくことはもちろん、今年からは、自分の受け持つ部門だけでなく工場全体を見渡せる広い視野を獲得してもらうべく、流動的に配置換えをおこなっています」。
また、次世代へ技術を伝えるため、ベテラン技術者の技をビデオ撮影した映像を利用して標準書作成や作業分析をおこなう取り組みなども始めています。

後藤吉範取締役
後藤吉範取締役(製造部長)山形大学大学院理工学研究科卒、生産技術部門で活躍。ハンドボールクラブのコーチも務める。

柔軟に進化を続ける 『NIKUNI way』

ニクニアサヒが掲げる「NIKUNI way」は、全社員で共有する企業のVisionと Mission。「ビジネス環境が変化しても、常に利益を出せる企業を目指す」Visionと、「品質の安定した製品をより安く、納期通りに生産出荷し、ニクニ商品の信頼と販売促進に寄与する」というMissionです。
社内では、「トップダウンよりボトムアップ」という方針に基づき、より仕事のしやすい環境への整備を進めてきました。最近では原点に立ち返り、「5S」強化活動も展開しています。
作業工程の動線に沿った作業場所の配置や製品チェック方法の見直しなど、作業する社員の目線と意識を考慮した改善は、小規模でも即効性のあるものばかりです。「5S活動のさらなる強化は、生産性や品質の向上、コストダウン、リードタイム削減を実現させるために必要なこと」と、森大代表取締役は話します。良いと思うことを柔軟に取り入れ、改善を怠らないという意識が、企業を常に進化させているのかもしれません。
「今までは『メーカーとして出荷する』までの仕事が多かったのですが、これからはサービスを重視することが大切と考えています。私達が作る製品がどのように使われるかをイメージして仕事ができるように、外に出てお客様の声を聴く機会を増やすことも検討しています」(森大代表取締役社長)。
小さな製品から大型設備まで、多種多様な機械に組み込まれ、国内外で活躍するメイドイン朝日町のポンプたち。森大代表取締役社長が率いる「NIKUNI way」のチャレンジは、これからが本番です。

 検品を終えたポンプ
検品を終えたポンプが今日もここから旅立っていく。

(2017/10/31取材)

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株式会社ニクニアサヒ

株式会社ニクニアサヒ
株式会社ニクニアサヒは、株式会社ニクニの生産拠点として1973年朝日町に創設。ポンプを主軸とした製造を担い、高度な技術とノウハウを蓄積し多種多様のポンプ製造を実現している。ニクニグループとして2014年にはアメリカに販売拠点を設置、2017年には台湾に販売及び調達の拠点を置き、組立部門を整備。社内外の革新によりさらなる可能性を求めて挑戦を続けている。
代表者:代表取締役社長 森 大
創業:1973年4月
従業員数:109名(平成29年10月現在)
事業内容:製造業 ポンプ製造、関連産業機器、光学機器等の製造

所在地:山形県西村山郡朝日町大字宮宿1930番地
TEL:0237-67-3411(代表)
FAX:0237-67-3872
URL:http://www.nikuni-asahi.co.jp/

株式会社マルハチ

佐藤 浩さん

大好きなふるさとの
大好きな漬物を
真似の出来ない独自の技術で
よりおいしく美しく、
全国に届けたい。
株式会社マルハチ(庄内町)

マルハチでは、地元の伝統野菜をはじめ多彩な野菜を独自の技術でおいしい浅漬けに仕上げ、全国各地に届けています。素材の味わいを生かしたおいしさはもちろん、彩りの美しさでも人気を博し、数々のヒット商品を世に送り出してきました。佐藤さんは、そのマルハチの浅漬け人気を中枢で支える研究開発部でさまざまな新商品の開発プロジェクトを牽引。現在は、課長として後輩の指導・育成にあたると共に漬物の新たな可能性を追究し続けています。

佐藤 浩さん
入社の動機、きっかけは?

地元庄内の酒田市出身で、畜産関係の勉強をするために一度は東京に出たものの、離れてみて地元の良さを再認識し、長男ということもあって就職は庄内でと帰ってきました。専門分野は違っても大学で身につけた研究の基礎を生かせる商品開発の仕事ができるということで迷わず「マルハチ」への入社を希望しました。小さい頃からずっと漬物が好きでしたから、その研究開発に携われることがうれしくて仕方なかったですね。しかも、自分がずっと好んで食べていた漬物がこの会社の商品だったということが後でわかって、嬉しい気持ちが倍増しました。

プロフィール
佐藤 浩さん

1970年生まれ
山形県酒田市出身

高校卒業後に一度上京し、帰郷後の1992年に株式会社マルハチ入社。
以来20余年、研究開発部門一筋、数々の新商品を世に送り出している。

具体的な仕事内容を教えてください。

「伝統的な保存食である漬物の研究開発って何をするんだろう?」と疑問に思われる方も多いと思いますが、実は漬物も日々進化し続けているんです。
特に、私たち「マルハチ」が製造・販売している浅漬けは、素材本来の色やおいしさを如何に引き出し、長持ちさせるかが命、野菜の品種改良や漬け液の調合など、開発テーマには事欠きません。
入社当初から研究開発部に配属されて20余年、さまざまな開発プロジェクトに参加してきました。代表的なところでは、茄子の紫色とヘタ下のクリーム色のコントラストをきれいに出すための色止め技術や「茄子漬けの漬け液が透明ならもっとおいしく見えるのに」というお客様の声から挑戦が始まった漬け液の透明化など、今では浅漬けの定番となっている商品の開発には2~3年の歳月が費やされているものもあります。

現在、研究開発室のスタッフは7名。各自が開発テーマを設定し、日々実験や試作、データ解析等を行うという主体性を重んじた研究開発スタイル。課長職にある私は、部下たちの研究へのアドバイスやフォローに回ることが多くなってきています。また、スーパーに足繁く通って売り場担当者の声に耳を傾けたり、他社の商品を試食したり、顧客や市場のニーズを肌で感じることも重要な仕事のひとつです。

この仕事をやっていてよかったと感じるのはどんな時ですか?

自分の大好きな漬物を研究テーマとしてその可能性を広げていくのはとても楽しい仕事です。商品の賞味期限を長持ちさせたり、キュウリや葉物の緑をより鮮やかに出したり、自分の手掛けた新商品が売り場に並んでいるのを目にすると開発時の苦労が報われた気がします。その売れ行きが好調だったりすればなおのこと。以前、スーパーの売り場担当者から「お客様から”おいしい”という電話がありましたよ」という連絡をもらったことがあったんですが、その時は本当にうれしかったですね。

3年余の歳月をかけて漬け液の透明化に成功
3年余の歳月をかけて漬け液の透明化に成功
試作品を試食しながら若手スタッフにアドバイスをする佐藤さん
試作品を試食しながら若手スタッフにアドバイスをする佐藤さん

逆に、いちばん大変だと思うことは何ですか ?

何度も会議を重ねて、次はこういう新商品を売り出そうという方針が決定し、そこからが我々研究開発部の本格的な出番となるわけですが、時にはかなりの無理難題を突き付けられることもあります。そうなると寝ても覚めても頭の中は実験中。夢の中でひらめいたアイデアを翌日実践してみたら成功したということもありました。新たな技術を確立するためには幾つもの壁を乗り越えなければならないわけで、その突破口を見つけるために試行錯誤している時はさすがにきついですね。

特に指導・影響を受けた上司や先輩は?

私が入社した当時、研究開発部長だった現・社長からの教えが大きいですね。
“まず、やってみる””まず、動く”、そして、成功するまであきらめないという研究開発に臨む姿勢を学びました。おかげで、失敗はありません。成功するまでチャレンジを続けさせてもらえるからです。研究室で試行錯誤の実験や分析を繰り返す日々ですが、研究室に閉じこもってばかりいるわけではありません。スーパーや小売店にリサーチに行ったり、セミナーや食品展示会などに出席したり、自由な発想・手法で研究開発に取り組める環境を与えてもらっていることにも感謝しています。

マルハチの大ヒット商品。あつみかぶの赤紫色を酢で発色させた「雪ん娘」(左)と茄子漬けの中で12年連続売り上げ日本一の実績を持つ「若もぎ小茄子」(右)
マルハチの大ヒット商品。あつみかぶの赤紫色を酢で発色させた「雪ん娘」(左)と茄子漬けの中で12年連続売り上げ日本一の実績を持つ「若もぎ小茄子」(右)
ひまわり工場・研究開発室
ひまわり工場・研究開発室

佐藤さん
この仕事が自分に合っていると感じるのはどんなところ ?

もちろん、漬物が好きだということが第一ですね。それに加えて、いろいろやって試してみることが好きな気質は研究者向きなのかなと思っています。これまで自分が研究を通じて得てきた経験値を生かして若い研究者たちにアドバイスをしたり、いっしょに新しい方法を模索したり、そんな今のポジションもなかなかやりがいがあります。みんな漬物が好きで入社してきた人たちですから、とても熱心に研究に取り組んでいます。

改めて、漬物の魅力をお聞かせください。

健康志向の現代、漬物は塩分が多い食品というイメージがあって敬遠されがちですが、当社の浅漬けなどは、塩分わずか2%前後で他の加工食品よりむしろ少ないくらいです。質のよい新鮮な野菜を原料にすることで、素材の味が引き立ち、少ない塩分でもしっかりした味わいに仕上げることができます。ビタミンCも豊富で、空気や水分を多く含む生野菜より少ない量でたくさんの栄養分を摂取することができるんです。ヘルシーと思われがちなサラダもドレッシングで高カロリーになってしまったり、野菜本来のおいしさが味わえなかったりとデメリットもありますが、その点、浅漬けならそのままおいしくヘルシーに食べていただけます。

佐藤さん

佐藤さん
今後はどんなことをやってみたいですか。

今までもいくつかのヒット商品の開発プロジェクトに参加してきましたが、これからもそれに負けないくらいの大ヒット商品を作りたいですね。特に、今はナガイモやオクラといったネバネバ系野菜に注目しています。幸い、当社では50年以上前から農家の方々と契約栽培を行っているので、漬物をよりおいしくするための品種改良に協力してもらうことも市場に出回っていない野菜を入手することもできるのです。このアドバンテージを生かして、私たちにしかできないおいしい浅漬けを食卓にお届けし続けたいと思っています。

これから仕事に就く若者たちにメッセージをお願いします。

仕事に就いたら、そこでしか学べないことを身につける勉強の日々、学校を卒業したから勉強は終わりと思ったら大間違いです。そして、”できない”と言わないこと。できないことをできるようにするのが仕事。夢にまで見るほど悩み、悩み抜くこと、あきらめなければいつかは成功します。まずは、目の前の仕事を一生懸命こなすことからはじめましょう。


穏やかで謙虚な話しぶりながら、漬物の技術に関する話になると表情は一変、「うちの商品を真似しようとしても同じものはできません」ときっぱりと自信を口にする佐藤さん。本当に漬物が好きで、本当に会社を誇りに思っている、そんなまっすぐな思いが伝わってくる清々しいインタビューでした。

(2013/10/8取材)

株式会社マルハチ

マルハチは、大正3年に味噌醸造業として創業した当時のものづくりの精神を今に受け継ぎ、「品質へのこだわり」と「研究熱心」を社風としている。ふるさと山形の漬物文化と新しい技術を融合し、現代の食生活に適した新商品を次々に開発。山形ならではの味わいを全国各地に届けている。

株式会社マルハチ
代表者:代表取締役 阿部 敏明
創立:大正3年3月
従業員数:188名
事業内容:農林水産物の加工及び販売
所在地:山形県東田川郡庄内町廿六木字五反田75番地の1
TEL:0234-43-3331
FAX:0234-43-4441
URL:http://maruhachi.n-da.jp/