滝田 剛史さん

世界で愛される時計を山形から
トライ&エラーで最適なプラスチック成形の条件を導く
山形カシオ株式会社(東根市)

山形カシオ株式会社は、カシオグループのマザーファクトリーとして、開発製造の中枢を担う国内唯一の生産拠点です。そこには、「G-SHOCK」などの時計商品をはじめとするCASIOブランドを支える、熟練の技術がありました。

滝田 剛史さん

プロフィール
滝田 剛史 さん
1986年生まれ。栃木県出身。
山形大学工学部機械システム工学科を卒業後、2009年に山形カシオに入社。以来14年間、部品製造技術部成形製造課に務める。

入社の動機、きっかけは?

幼少期からものづくりが好きで、大学では広くものづくりを学びたいと思い、山形大学工学部機械システム工学科へ進学しました。私は栃木県出身ですが、山形県の住み心地の良さに惹かれて、就職活動時には県内の企業を探しました。カシオの時計ブランド「G-SHOCK」は知っていましたし、時計を身に付けることが好きだったこともあり、工場見学に訪れたのが山形カシオとの出会いでした。
山形カシオに入社した決め手は、製品を一貫生産しているという点です。金型を設計し、部品を成形してできたものをラインで組み立て、完成品を出荷するところまでを一貫して行っています。実際に働いてみると、自分が試作した製品の完成品を見ることができますし、店頭で自分が携わった商品を目にする機会もあり、やりがいが大きいです。

会社の良いところは?

カシオグループは世界に拠点を持っていますが、日本国内の生産拠点は山形県にしかありません。まさに、カシオ製品のものづくりを支えている拠点です。そのため、新しい技術や設備を生み出す役割を担っており、マザーファクトリーとして、新しいことにどんどんチャレンジして、生み出した技術を世界の拠点に広げています。自分たちが作り出した技術が世界の工場で使用されることもあり、チャレンジしがいのある会社だと思います。

具体的な仕事内容を教えてください。

私の仕事は、時計に使われるプラスチック部品の成形試作です。時計の外装部品や文字盤、ギアなど、プラスチックで造られている部品をどう製造するかを試作し、量産するための条件を決定しています。実際にプラスチック樹脂を熱で溶かし、それを金型に流し込んで固化させ、目的の形状を作ります。目指すデザインと品質になるように、樹脂を流す速度や圧力、金型の温度などを細かく調節しながら、量産するための標準条件を算出する責任の大きい仕事です。

山形カシオ株式会社
プラスチック成形に使用する金型
山形カシオ株式会社
実際に成形したプラスチック部品

仕事をするうえで大切にしていることはなんですか?

周りとのコミュニケーションを大切にしています。私はもともと、大学で学んだ設計を生かそうと、設計希望で入社したのですが、新人研修で全ての部署を回るうちに、成形試作に魅力を感じ、全く初めての分野でしたが、希望して飛び込みました。先輩にたくさん指導いただき助けられたので、ちょっとしたことでも恩返しがしたいと思い、先輩の片づけを手伝っていました。すると、自然とコミュニケーションが活発になり、自分の仕事もうまく回るようになりました。こうした経験から、お互いに感謝し合い、コミュニケーションをとることを大切にしています。
今年の9月から私もリーダーという立場を任されるようになり、若手社員に指導することも多くなりました。若手社員とも積極的にコミュニケーションをとりながら、良い雰囲気を作っていき、生産性や品質を向上していきたいと思います。

仕事をするうえで大変なことは?

成形試作は、ここで算出した成形条件で製品が量産されるという責任重大な仕事です。条件を決定するにもさまざまな要素が絡んでくるため、初めはどうしても不具合があります。その不具合の原因は何か、自分で仮説を立て、立証していかなければなりません。立証するというのも、条件を少しずつ変えながら見極めていく、熟練のノウハウと根気が必要な仕事です。最終的に不具合に対して対策を取って条件を決定しますが、まだまだ努力しないといけないなと感じる日々です。

山形カシオ株式会社

特に思い入れのある製品はありますか?
14年間で私の携わった製品は、もう数えきれないほどになります。その中でも特に思い入れが強いのが、FROGMAN(フロッグマン)という製品です。この製品の開発は苦労しました。時計のバンドの切れやすさ、ゴムの劣化を改善しようと、今までとは違うプラスチックの素材をゼロから開発し、商品化したものです。開発から商品化まで、1年を要しました。

山形カシオ株式会社
「G-SHOCK」FROGMAN(フロッグマン)

今後の目標は?

部品などを実際に成形する前にシミュレーションができるCAE(Computer Aided Engineering)解析という機械があるのですが、私たち山形カシオが培ってきたノウハウとCAE解析の技術を掛け合わせて、山形カシオにしかできないものを作りたいという思いがあります。具体的なプランはまだですが、いずれ実現したい夢ですね。
また、去年プラスチック成形技能士の特級を取得したこともあり、これまで学んできたスキルを若手社員に伝えていきたいと思います。

ものづくりに興味のある方へメッセージをお願いします。

ものづくりは、うまくいかないことがたくさんあります。しかし、うまくいかないからこそ、乗り越えたときの達成感は大きいですし、課題が大きければ大きいほどやりがいもあります。もちろん途中で投げ出したくなることもありますが、そこをぐっとこらえてやり続けることで得られるものがあると思うので、そういう達成感を感じたい方には向いているのではないでしょうか。

(2023/11/29取材)


山形カシオ株式会社

当社は創業以来、カシオグループのマザーファクトリーとして、グループの生産中枢を担い、最先端のCASIOブランド商品を世界中に送り出してきました。「先進のデジタルエンジニアリングとクラフトマンシップの融合」が当社のものづくりのこだわりであり、その価値を高めるため、従業員一人一人が技術・技能の更なる高みを目指し取り組んでいます。

山形カシオ株式会社
代表者:代表取締役社長 木村 真一
設立:1979年
従業員数:600名(男348・女252)※2023年4月時点
事業内容:
■ 高級アナログウォッチ、プロジェクター、ハンディターミナル等の製造
■ カシオグループ海外拠点の生産・技術支援
■ 精密金型およびプラスチック成形品の開発・製造

所在地:山形県東根市大字東根甲5400-1
TEL:0237-43-5111
FAX:0237-43-2577
URL:https://www.yamagata-casio.co.jp/

前のページは
次のページは
世界にはばたくメイドイン山形  山形を選んだUターン・Iターンの先輩たち  ヤマガタの未来を切り開く女性たち  山形の達人  プロフェッショナルへの道