ウエノは昭和57年にトロイダルコイルの巻き線業として創業。最初は二次下請け、次に一次下請け、そして平成10年にトロイダルコイルの専業メーカーとなりました。“トロイダルコイル”と聞いてもピンとこない人も多いかもしれません。日々の生活や仕事の中で必ずお世話になっているものです。電子機器に興味があってパソコンなどを分解したことのある人は目にしたこともあるでしょう。それは、パソコンやエアコン、プラズマテレビ、冷蔵庫などの各種家電製品、通信機器など、あらゆる電子機器に使われているノイズを除去する部品。デジタル技術の高度化に伴いノイズの発生要素が増え、コイル需要は急速に拡大しています。
ところが、これだけ機械化・デジタル化が進んだ現在でも、なぜかトロイダルコイル製造は手作業による巻き線が主流。ものづくりの三要素である「品質、納期、コスト」で競争力を高めるためには、質の高い労働力の確保が最大の課題でした。内職者の確保や刑務所への作業委託など、上野社長自らが労働力の開拓に奔走。そんな時代を経て、独自の海外展開により中国や韓国に進出を果たしたウエノの生産規模は月産550万個。その大半は中国で委託加工生産を行っており、日本国内の企業をはじめ、アジア各地に展開する日本メーカーなどに出荷しています。


生産拠点を中国にシフトし人手を確保したものの、運送に往復1カ月かかる上、品質のばらつきを皆無にはできない。さらに今度は中国も経済発展に伴い人件費が高騰するなどの問題に直面。「もはや機械化しかない」、それが上野社長の下した決断でした。とはいっても、当初はどこかでよい巻き線機を造ったら購入しようぐらいの考えでいたのだそうです。ところが、これぞと思う機械はいっこうに開発されません。




人手で巻くという巻き線の常識を覆し、トロイダルコイル自動生産装置の開発を成功させたウエノは、「第5回日経ものづくり大賞」で日経BP特別賞を受賞。一躍産業界の注目を集める企業となりました。日経ものづくり大賞とは、最先端技術や独創的なものづくりの取り組みを取り入れた工場や研究所などの事業所、そこで導入しているシステムなどを表彰する賞。パナソニックやサントリー、鹿島、バンダイなど日本でも名だたる企業と肩を並べての受賞となりました。
「トロイダルコイル自動生産装置の開発により生産の国内回帰を目指しているという点が評価されたのでしょう。でも、当社としてはこれからが本当の勝負。自動生産装置による生産量は総生産量から見ればまだ1割にも満たない段階です。装置の改良を進めることによってさらに生産力を高め、品質、納期、価格に徹底的にこだわって “世界一のトロイダルコイルメーカー” を目指します。」と、受賞を大いに喜びながらも上野社長のビジョンはすでに世界を見据えています。

株式会社ウエノ

電子機器の安定作動に必要なノイズフィルターコイルの専門メーカー。主力とするリング状のトロイダルコイル生産では国内トップ。人手を要する巻き線という作業の労働力を求めて中国に進出した。現在は、中国工場での生産が大半を占めるも、自動生産装置の開発に成功したことにより国内生産回帰への第一歩を踏み出した。
創業:1982年1月
従業員数:60名
事業内容:ノイズフィルターコイル、平滑用チョークコイルの開発・
製造・販売
所在地:山形県鶴岡市三和字堰中100
TEL:0235-64-2254
FAX:0235-64-4288
URL:http://www.uenokk.co.jp