佐藤 浩さん

大好きなふるさとの
大好きな漬物を
真似の出来ない独自の技術で
よりおいしく美しく、
全国に届けたい。
株式会社マルハチ(庄内町)

マルハチでは、地元の伝統野菜をはじめ多彩な野菜を独自の技術でおいしい浅漬けに仕上げ、全国各地に届けています。素材の味わいを生かしたおいしさはもちろん、彩りの美しさでも人気を博し、数々のヒット商品を世に送り出してきました。佐藤さんは、そのマルハチの浅漬け人気を中枢で支える研究開発部でさまざまな新商品の開発プロジェクトを牽引。現在は、課長として後輩の指導・育成にあたると共に漬物の新たな可能性を追究し続けています。

佐藤 浩さん
入社の動機、きっかけは?

地元庄内の酒田市出身で、畜産関係の勉強をするために一度は東京に出たものの、離れてみて地元の良さを再認識し、長男ということもあって就職は庄内でと帰ってきました。専門分野は違っても大学で身につけた研究の基礎を生かせる商品開発の仕事ができるということで迷わず「マルハチ」への入社を希望しました。小さい頃からずっと漬物が好きでしたから、その研究開発に携われることがうれしくて仕方なかったですね。しかも、自分がずっと好んで食べていた漬物がこの会社の商品だったということが後でわかって、嬉しい気持ちが倍増しました。

プロフィール
佐藤 浩さん

1970年生まれ
山形県酒田市出身

高校卒業後に一度上京し、帰郷後の1992年に株式会社マルハチ入社。
以来20余年、研究開発部門一筋、数々の新商品を世に送り出している。

具体的な仕事内容を教えてください。

「伝統的な保存食である漬物の研究開発って何をするんだろう?」と疑問に思われる方も多いと思いますが、実は漬物も日々進化し続けているんです。
特に、私たち「マルハチ」が製造・販売している浅漬けは、素材本来の色やおいしさを如何に引き出し、長持ちさせるかが命、野菜の品種改良や漬け液の調合など、開発テーマには事欠きません。
入社当初から研究開発部に配属されて20余年、さまざまな開発プロジェクトに参加してきました。代表的なところでは、茄子の紫色とヘタ下のクリーム色のコントラストをきれいに出すための色止め技術や「茄子漬けの漬け液が透明ならもっとおいしく見えるのに」というお客様の声から挑戦が始まった漬け液の透明化など、今では浅漬けの定番となっている商品の開発には2~3年の歳月が費やされているものもあります。

現在、研究開発室のスタッフは7名。各自が開発テーマを設定し、日々実験や試作、データ解析等を行うという主体性を重んじた研究開発スタイル。課長職にある私は、部下たちの研究へのアドバイスやフォローに回ることが多くなってきています。また、スーパーに足繁く通って売り場担当者の声に耳を傾けたり、他社の商品を試食したり、顧客や市場のニーズを肌で感じることも重要な仕事のひとつです。

この仕事をやっていてよかったと感じるのはどんな時ですか?

自分の大好きな漬物を研究テーマとしてその可能性を広げていくのはとても楽しい仕事です。商品の賞味期限を長持ちさせたり、キュウリや葉物の緑をより鮮やかに出したり、自分の手掛けた新商品が売り場に並んでいるのを目にすると開発時の苦労が報われた気がします。その売れ行きが好調だったりすればなおのこと。以前、スーパーの売り場担当者から「お客様から”おいしい”という電話がありましたよ」という連絡をもらったことがあったんですが、その時は本当にうれしかったですね。

3年余の歳月をかけて漬け液の透明化に成功
3年余の歳月をかけて漬け液の透明化に成功
試作品を試食しながら若手スタッフにアドバイスをする佐藤さん
試作品を試食しながら若手スタッフにアドバイスをする佐藤さん

逆に、いちばん大変だと思うことは何ですか ?

何度も会議を重ねて、次はこういう新商品を売り出そうという方針が決定し、そこからが我々研究開発部の本格的な出番となるわけですが、時にはかなりの無理難題を突き付けられることもあります。そうなると寝ても覚めても頭の中は実験中。夢の中でひらめいたアイデアを翌日実践してみたら成功したということもありました。新たな技術を確立するためには幾つもの壁を乗り越えなければならないわけで、その突破口を見つけるために試行錯誤している時はさすがにきついですね。

特に指導・影響を受けた上司や先輩は?

私が入社した当時、研究開発部長だった現・社長からの教えが大きいですね。
“まず、やってみる””まず、動く”、そして、成功するまであきらめないという研究開発に臨む姿勢を学びました。おかげで、失敗はありません。成功するまでチャレンジを続けさせてもらえるからです。研究室で試行錯誤の実験や分析を繰り返す日々ですが、研究室に閉じこもってばかりいるわけではありません。スーパーや小売店にリサーチに行ったり、セミナーや食品展示会などに出席したり、自由な発想・手法で研究開発に取り組める環境を与えてもらっていることにも感謝しています。

マルハチの大ヒット商品。あつみかぶの赤紫色を酢で発色させた「雪ん娘」(左)と茄子漬けの中で12年連続売り上げ日本一の実績を持つ「若もぎ小茄子」(右)
マルハチの大ヒット商品。あつみかぶの赤紫色を酢で発色させた「雪ん娘」(左)と茄子漬けの中で12年連続売り上げ日本一の実績を持つ「若もぎ小茄子」(右)
ひまわり工場・研究開発室
ひまわり工場・研究開発室

佐藤さん
この仕事が自分に合っていると感じるのはどんなところ ?

もちろん、漬物が好きだということが第一ですね。それに加えて、いろいろやって試してみることが好きな気質は研究者向きなのかなと思っています。これまで自分が研究を通じて得てきた経験値を生かして若い研究者たちにアドバイスをしたり、いっしょに新しい方法を模索したり、そんな今のポジションもなかなかやりがいがあります。みんな漬物が好きで入社してきた人たちですから、とても熱心に研究に取り組んでいます。

改めて、漬物の魅力をお聞かせください。

健康志向の現代、漬物は塩分が多い食品というイメージがあって敬遠されがちですが、当社の浅漬けなどは、塩分わずか2%前後で他の加工食品よりむしろ少ないくらいです。質のよい新鮮な野菜を原料にすることで、素材の味が引き立ち、少ない塩分でもしっかりした味わいに仕上げることができます。ビタミンCも豊富で、空気や水分を多く含む生野菜より少ない量でたくさんの栄養分を摂取することができるんです。ヘルシーと思われがちなサラダもドレッシングで高カロリーになってしまったり、野菜本来のおいしさが味わえなかったりとデメリットもありますが、その点、浅漬けならそのままおいしくヘルシーに食べていただけます。

佐藤さん

佐藤さん
今後はどんなことをやってみたいですか。

今までもいくつかのヒット商品の開発プロジェクトに参加してきましたが、これからもそれに負けないくらいの大ヒット商品を作りたいですね。特に、今はナガイモやオクラといったネバネバ系野菜に注目しています。幸い、当社では50年以上前から農家の方々と契約栽培を行っているので、漬物をよりおいしくするための品種改良に協力してもらうことも市場に出回っていない野菜を入手することもできるのです。このアドバンテージを生かして、私たちにしかできないおいしい浅漬けを食卓にお届けし続けたいと思っています。

これから仕事に就く若者たちにメッセージをお願いします。

仕事に就いたら、そこでしか学べないことを身につける勉強の日々、学校を卒業したから勉強は終わりと思ったら大間違いです。そして、”できない”と言わないこと。できないことをできるようにするのが仕事。夢にまで見るほど悩み、悩み抜くこと、あきらめなければいつかは成功します。まずは、目の前の仕事を一生懸命こなすことからはじめましょう。


穏やかで謙虚な話しぶりながら、漬物の技術に関する話になると表情は一変、「うちの商品を真似しようとしても同じものはできません」ときっぱりと自信を口にする佐藤さん。本当に漬物が好きで、本当に会社を誇りに思っている、そんなまっすぐな思いが伝わってくる清々しいインタビューでした。

(2013/10/8取材)

株式会社マルハチ

マルハチは、大正3年に味噌醸造業として創業した当時のものづくりの精神を今に受け継ぎ、「品質へのこだわり」と「研究熱心」を社風としている。ふるさと山形の漬物文化と新しい技術を融合し、現代の食生活に適した新商品を次々に開発。山形ならではの味わいを全国各地に届けている。

株式会社マルハチ
代表者:代表取締役 阿部 敏明
創立:大正3年3月
従業員数:188名
事業内容:農林水産物の加工及び販売
所在地:山形県東田川郡庄内町廿六木字五反田75番地の1
TEL:0234-43-3331
FAX:0234-43-4441
URL:http://maruhachi.n-da.jp/

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