渡部晃央さん

製薬会社の要求に
的確に応えることで、
人々の健康に貢献できる仕事。
人の痛みや苦しみに
敏感でありたい。
米沢浜理薬品工業株式会社(米沢市)

米沢浜理薬品工業は、大阪に本社を置く浜理薬品工業株式会社を中心としたハマリグループの生産拠点。医薬品を構成する成分である原薬や原薬中間体などを、原材料から合成し、ユーザーの要望に応じて製造しています。ここでいうユーザーとは、私たちエンドユーザーではなく、多くの場合、製薬会社です。渡部さんは技術部技術課の係長(2010年2月から課長)としてユーザーからの発注に応じて薬効物質の合成、製造に携わり、間接的ながら人々の健康をサポートしています。

渡部晃央さん

プロフィール
渡部 晃央 さん

昭和46年生まれ。
山形県米沢市出身。
山形大学工学部物質工学科卒業。
1994年 米沢浜理薬品工業株式会社入社。

3年半の大阪研修、3度の配置転換を経て、2005年 技術部技術課に配属となり、2010年2月からは課長として開発業務全般に携わっている。

入社の動機、きっかけは?

米沢生まれの米沢育ち。中高校生の頃から理系が好きでエンジニア志望でした。地元志向が強かったこともあり、ちょうど米沢には山形大学の工学部がありましたから、特に迷うこともなく進路を決定することができました。その中でも実家が農家だったせいか、理科、化学、生物などの広い分野に興味があって物質工学科を専攻。大学で学んだことを生かせる職場ということでこの会社に就職することになったのも必然だったような気がします。

具体的な仕事内容を教えてください。

入社半年後から3年半にわたって大阪の浜理薬品に出向し、業界の基本、有機合成に関する知識を習得するチャンスに恵まれました。その後、こちらに帰ってきていくつかの部署を経験して、4年前から現在の技術部技術課に配属になっています。これまでの仕事の中では今のセクションがいちばんしっくり来ているのではないかと感じます。
具体的な仕事内容としては、まず、ユーザーから依頼を受けた時点で技術スタッフとして先方に出向き、製造品目の詳細やスケジュール等について打ち合わせを行います。本格的に工場を稼働させる前に実験室で基礎的なデータを取る実験業務がメインですが、そのほかにも製造ラインの設計、製造現場での監視や指示、製造スケジュール管理、ユーザー側の開発担当者とのディスカッションなど、営業的な活動も含め、技術課の職務は実に多岐にわたります。

この仕事の魅力ややりがいはどんなところですか。

人の体内に入るものをつくる、ということで特殊性を感じますね。私たちのつくった薬効成分で人の痛みや苦しみを少しでも和らげることができるとすれば、それは何よりのやりがい。それだけに、社会的、道徳的責任を感じながら仕事に取り組む姿勢が必要です。自分たちのつくった成分が薬として形成されて世の中に出回るのを見届けると、実にホッとした気持ちになりますね。過去に世界的にヒットした商品の製造にかかわったことがあるんですが、その時は微力ながら社会貢献をしている実感が持て、素晴らしい経験になりました。

実験データの分析や各種提案書づくりなど、パソコンに向かってのデスクワークも多い
実験データの分析や各種提案書づくりなど、パソコンに向かってのデスクワークも多い

逆に、いちばん大変だと思うことは何ですか?

人の健康や生命に関わる仕事ですから、日々プレッシャーの中にいる点ですね。ものを作ってはじめて評価される仕事ですから、実験室でいくらうまくいっても当然それだけではダメ。工場がスムーズに稼働して滞りなく製品が納入されるのを見届けるまでが技術課の仕事です。実際にプラントを立ち上げてみたら不測の事態に……、そんなことも少なくないですからショックですし、不安ですよね。それだけにその打開策を見出せたときの充実感は最高です。

この道におけるプロフェッショナル像とは?

製薬会社を中心とするユーザーから依頼をもらって、それに応える受託製造ですから、さまざまな顧客ニーズに的確に応えられることが絶対条件です。ユーザーが求める成分の合成から製造ラインの設計、製造管理、スケジュール管理にいたるまでトータルに遂行できてはじめて一人前の技術者と言えると思います。

実験風景
チームメイトの実験風景。相談したりアドバイスを求めたりし合います
チームメイトの実験風景。相談したりアドバイスを求めたりし合います

渡部晃央さん
特に指導・影響を受けた上司や先輩は?

だれと限定することができないくらいいろんな人のおかげで今の自分があると思っています。大学で基礎を学んできたとはいえ、入社当時はまさにゼロからのスタート。みなさんに教えてもらった、育ててもらったというのが実感です。私と同じ山形大学のOBが多い職場なので、その点でも心強いというか恵まれていましたね。今は、上司部下、先輩後輩に関係なく、チームメイトのような感覚で互いに学ぶべきことは学ぶという姿勢によってとてもいいコンビネーションが生まれています。私自身、ここで学ばせてもらったことは全て後輩たちに伝えていきたいと思っています。

この仕事をしていく上で大切にしていることは?

企業人である前に人間として、人に迷惑をかけない人間、総合的にいい人間でありたいと思っています。人の役に立ちたい、人の痛みを癒したいといった気持ちも大切ですね。それから、どこの会社でもそうだと思いますが、人間関係は非常に大事です。コミュニケーションが十分でないと自分自身も成長できないし、会社だってそうだと思います。

責任の重い仕事ですが、リフレッシュ法は?

オンオフのメリハリ、ですかね。仕事のときは仕事に集中し、休日は自分の趣味に没頭しています。家庭に仕事は持ち込まないということをポリシーにしているので、オフの時は2人の娘たちとの時間を大切にしています。

今後やってみたいこと。

将来的には自社開発品、「浜理薬品」の名前で世の中に出回る薬をつくってみたいですね。現在の受託製造というスタンスでの目標としては、いろんな依頼を受けてそれに応えていくことで蓄積されたノウハウを昇華させて、企画、検討、製品化、納入まで、「ハマリなら何でもやってくれる」そんな薬品工業界の頼りになる存在になりたいと思っています。私自身もユーザーに足を運んで、自信たっぷりに「何でもできます、何でも言ってください」と言えるようになれたら究極ですね。
薬効成分の製造を通じて頼りにされる会社、喜ばれる会社を目指してきた米沢浜理薬品工業ですから、これからも人々の健やかな暮らしの一助となれるようにがんばっていきたいです。

大きな反応釜の前で製造現場の担当者から状況報告を受ける渡部さん
大きな反応釜の前で製造現場の担当者から状況報告を受ける渡部さん
原材料保管・管理について説明
原材料保管・管理について説明

一言一言、言葉を大切に選んで話をする渡部さん。人々の健康に関わる仕事に携わっている人ならではの慎重さ、実直さが感じられました。入社15年目の中堅ながら、部下や後輩のこともチームメイトといって尊重し、上司・先輩に対しては敬意を忘れない謙虚な人柄。私たちも知らず知らずのうちに渡部さんたちの製品に癒されているのかもしれません。この場を借りて、感謝です。

(2009/10/26取材)

米沢浜理薬品工業株式会社

米沢浜理薬品工業は、人々の健康に関わる製品づくりに携わる生命関連企業。得意としている反応は、ペプチド合成、不斉合成などで、特にペプチド合成については、海外企業からの依頼も急増中。社員一人ひとりがつねに高い倫理観を持ち、社会の信頼に応える行動をすることを旨としている。

米沢浜理薬品工業株式会社
代表者:取締役社長 高美 時郎
創業:1980年5月
従業員数:約130名
事業内容:原薬、原薬中間体、食品添加物、その他製造
所在地:山形県米沢市八幡原2-4300-18
TEL:0238-28-3801
FAX:0238-28-3805
URL:http://www.hamarichemicals.com

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