前田和宏さん

仕事がしたい一心で
飛び込んだ世界の、
つなぐ技術に魅せられる。
米沢電線株式会社(米沢市)

昭和19年に巻線の製造からスタートした米沢電線ですが、現在では、電線、ワイヤハーネス、部品の3部門から多彩な製品を世に送り出しています。光ファイバーケーブルや電力ケーブル、自動車用ワイヤハーネス、プラスチック成型品など、現代の“ものづくり”には欠かせないものばかり。前田さんは、ハーネス事業部技術課の主任として、社内はもとより国内外の協力会社の製造工程を設計し、そのスムーズな稼働のための指導にあたっています。

前田和宏さん

プロフィール
前田 和宏さん

昭和52年生まれ。
山形県酒田市出身。
東北学院大学工学部卒業。
1999年米沢電線株式会社入社。
ハーネス事業部で10年、現在は技術部技術課主任。

入社の動機、きっかけは?

正直言って、学生時代は何になりたいとか、何がしたいとかまったくわかりませんでした。だから、こうして希望の職種に就けたとか、夢に一歩近づいたとか、そんなかっこいい話は何もできません。ただ、ちょっと理数系が得意だったので工学部に入って、“仕事がしたい”という気持ちだけでこの会社に入社したんです。極端な話、ものづくりであれば何でもよかったという感じで、入社試験の面接でも、立派な志望動機などは一言もいえませんでした(笑)。それでも日々働きながら、やりがいや目標を見つけることができた気がします。こんな私がアドバイスできるとしたら、何がしたいかがハッキリわからなくても大丈夫。“仕事がしたい”という思いと、まじめに仕事に取り組む姿勢があれば、きっとあとからやりがいや適性はついてきてくれるはずだということです。

入社後に戸惑いなどはありませんでしたか。

どんな仕事なのかイメージすることもなく入社したので、それがかえって良かったのかもしれません。変な先入観もなく、ゼロから仕事に取り組むことができました。かなり特殊な業種なのですべて会社に入ってから学ばせてもらったという感じですね。戸惑っている余裕もありませんでした。

具体的な仕事内容を教えてください

私は入社10年になりますが、ずっとハーネス事業部というところで、自動車や機器、農機具用のワイヤハーネスの製造に携わっています。ワイヤハーネスというのは、自動車などの複雑なマシーンに使われている何百本もの配線を組立ラインに適合するように束ねて、つなぎ、モジュール化したもので、人間の体で言えば神経や血管に相当するものです。誤配線防止や機械内部の美装化、製造工程の合理化にも欠かせないものになっています。そのワイヤハーネスを製造するための図面を用意し、工場で使う道具や設備の段取りをする、工程設計というのが私の仕事です。
現場での仕事がほとんどですが、その準備段階ではよくパソコンに向かっています。本社工場はもちろん、県外や中国、タイなどにある協力会社の工程設計も任されているので、その説明と指導のために海外出張も少なくありません。

ワイヤハーネス搭載図。自動車の複雑な配線もワイヤハーネスによってこんなにスッキリ納められる
ワイヤハーネス搭載図。自動車の複雑な配線もワイヤハーネスによってこんなにスッキリ納められる

自動車用ワイヤハーネス
自動車用ワイヤハーネス
この仕事で大切にしていることは何ですか。

国内外、どちらもコミュニケーションを大切にしています。まず、仲良くならないと仕事がスムーズに運びませんから。先ほども言ったように私の仕事は工程設計、私の仕事自体はお金を生みません。私が立てた工程設計のもとで工場の人たちがものづくりをしてくれて初めて業績につながるわけです。それぞれの現場で実演しながら説明し、やってもらって指導して……そうこうするうちにその工場や現地の人々との間に愛着が生まれてきます。

この仕事をやっていてよかったと思うことは?

自分が工程設計を手掛けたラインで製品が完成して、それを使った人が喜んでくれたらうれしいですよね。工場の人に作りやすいとか、製品の出来がいいとか言われることも大いに励みになります。

逆に、いちばん大変だと感じることは何ですか?

やっぱり、工場の人から使いにくい、よくないなどの苦情が来ると、かなりショックですね。でも、今は苦情もカタチを変えたアドバイスと考えて、大変というよりは真摯に受け止めるようにしています。10年経っても学ぶべきことはたくさんありますから。

ハーネスを作る工程を現場で説明、指導するための準備としてパソコンに向かう前田さん
ハーネスを作る工程を現場で説明、指導するための準備としてパソコンに向かう前田さん

上司や先輩から受けた特に印象的なアドバイスは?

だれからのどんなアドバイスと特定することはできませんが、私なんてまだまだいろんな事を教えてもらっている立場なので、先輩も後輩もみんな先生だと思っています。そう、後輩も先生。後輩は後輩と考えてしまったら自ら先生を半分失うことになる、というのが私の考え方です。

前田さんが今後やってみたい仕事や目標を教えてください。

特別に大きいものや小さいものの工程設計をしてみたいですね。それから、ゲストエンジニアといって、カーメーカーの技術開発部門に出向している社員が現在も20名ほどいるんですが、私も一度はメーカーのスタッフと一緒に仕事をしてみたいという希望はあります。この仕事を通してお客さまに満足していただけて、こちらも利益を得られるというのがいちばんですね。

前田さん

「プロフェッショナルへの道、というタイトルが立派すぎて自分にはどうも……」と終始謙虚な姿勢を崩さなかった前田さん。学生時代には目標が見いだせなかったものの、働きながら見つけていったという言葉に勇気づけられる人も多いのではないでしょうか。前田さん自身の言葉とは裏腹に、前田さんは米沢電線の“つなぐ”技術を支える重要なポジションにいる人物のようです。

(2008/11/6取材)

米沢電線株式会社

「“つなぐ”技術と製品を通してお客さまの価値創造と社会の発展に貢献する」を企業理念とする米沢電線のコーポレートマークは北斗七星。つねに新しい技術で一つ一つのパーツをつなぎ、協力してお客さまのニーズに応える姿を表している。

米沢電線株式会社
代表者:取締役社長 渋田 哲夫
設立:1944年8月
従業員数:670名
事業内容:ワイヤーハーネスおよび各種ケーブル製造
所在地:山形県米沢市東1-10-53
TEL:0238-23-9211
FAX:0238-24-3000
URL:http://www.yonezawadensen.co.jp

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