石山孝次郎さん

建具の達人 石山孝次郎さん
(山形県卓越技能者表彰受賞/平成14年度)

昭和26年生まれ。中学卒業後に伊藤建具店で建具職人としての修業を積む。昭和48年に山形県立職業訓練校を卒業。翌昭和49年に独立し、「石山大原建具製作所」を設立。一級建具技能士、一級家具技能士などの資格を取得。現代の名工、内閣総理大臣賞、技能グランプリ全国大会最高賞など、受賞・表彰歴も多数。

5年間の修業と1年間のお礼奉公を経て、
昭和49年に建具職人として独立
見事なガラス戸
組子をふんだんに取り入れた見事なガラス戸

石山大原建具製作所は、伊藤建具店で建具職人としての修業を終えた石山さんが昭和49年に独立してスタートさせました。平成3年に現在地に移転。一般住宅の襖、障子戸、ガラス戸などの製作から木工芸の華といわれる組子の製作まで手掛けています。さらに近年では「全国伝統建具技術保存会」の幹事として京都西本願寺など歴史的建造物の修復工事にも協力。現在、石山さんは2名の職人の指導にあたっています。後継者不足が叫ばれる職人の世界、ここではしっかりと技の伝承がなされているようです。

工作の得意な少年は、親戚の勧めで
中学卒業後に建具店での修業へ
石山孝次郎さん

今ではめっきり少なくなった職人を目指す人々。石山さんの少年時代には、大工、左官、建具などの職人を目指す若者がまだ少なからずいたといいます。小・中学校では工作が得意だったという石山さんの筋を見抜いてか、親戚の人が建具店での修業を勧めてくれたのだそうです。修業期間中に夜間の山形県立職業訓練校にも通い、技術と知識を積み上げていきました。そして、5年間の修業と1年間のお礼奉公を経て、石山大原建具製作所として独立。襖、障子戸、ガラス戸などの建具の製作に励み、5年10年と経験を積んで基礎を修得し、少し余裕ができてから、幾何学模様が美しい組子細工に取り組むようになったのです。
組子とは、細かく割った木材を手作業で組み合わせ、釘などをいっさい使わずに伝統的な麻の葉柄や胡麻柄など様々な模様に作り込んでいく伝統的な技法。和室の障子や欄間(らんま)などに使われているのを目にしたことがあるのではないでしょうか。石山さんは、その組子の卓越した技と独創的なデザインで注目を集め、さまざまな賞にも輝いています。

石山孝次郎さん
石山孝次郎さん
石山孝次郎さん
石山孝次郎さん
石山孝次郎さん
石山孝次郎さん
組子の製作工程。木材を細く薄く切り揃えて組子材を準備。基本のカタチを組んで、枠の中にはめ込んでさまざまな模様に仕上げていく

たくさんの受賞・表彰歴、役職を重ねながらも
「まだまだ修業中」と、どこまでも真摯な人柄
石山孝次郎さん
建具製作の醍醐味や受賞の喜びを笑顔で語る石山さん

探求心旺盛で努力家の石山さんは、昭和61年に職業訓練指導員免許証を取得したのを皮切りに、一級建具技能士、一級家具技能士、一級機械加工技能士、機械加工作業主任者といった資格を次々に取得。さらに、その大らかで人当たりのよい人柄とも相まって、さまざまな団体の役職に推されることも多くなっていきました。現在は、建具という専門分野だけでも、全国建具組合連合会技術委員、全国伝統建具技術保存会幹事、山形県建具組合連合会副会長、山形県技能検定委員といった要職にあります。
それでいて製作意欲もますます盛ん。芸術品としての色合いが強い組子は高級品で多くの需要が見込めないため、いくら組子の技能が優れていてもそれに特化することなく、日々、一般的な建具製作に精を出しています。その合間を縫っては展示会用にと、芸術的な組子入り障子戸などを製作。その仕事ぶりが高く評価され、代表的なものだけでも、「現代の名工」表彰や全国建具展示会「内閣総理大臣賞」受賞など、受賞歴、表彰歴は枚挙にいとまがありません。それでも、周囲の高い評価におごることなくさらに研鑚を積んでいます。

石山孝次郎さん
全国建具展示会で最高賞の内閣総理大臣賞に輝いた「山寺組子入障子戸」

耐震補強建具で新たな需要の開拓、
歴史的建造物の保存工事で先人の技に触れる
耐震補強建具
格子組で耐震性能を向上させ、鴨居が下がるのを防ぐ耐震補強建具

壁がクロスになり、襖がドアになり…、住宅事情の変化により職人の腕の見せ所がめっきり少なくなり、職人の数も激減していることに寂しさを覚えるという石山さん。日本の伝統技術を後世に伝えていくためにも新たな需要を創出しようと山形県建具組合連合会として取り組んでいるのが耐震補強建具。4枚建具のうち両端の2枚を固定し、格子組で耐震強化を図ると同時に中の2枚の開閉を確保するというもの。特に、築年数の長い住宅の補強に普及させたい考えです。
また、同じく日本の伝統技術の継承という観点から、石山さんは松島の瑞巌寺や京都西本願寺の補修工事にも参加しています。西本願寺では、修復工事に先立って研修作業を受講。いかに昔の建物そのままの状態に近づけられるかが重要になってくる修復工事は、新たに作る以上に難しい作業です。先人たちの技に圧倒されながらも、そこから何かを学ぼうとする石山さんの貪欲な姿勢には改めて頭が下がります。ぜひ、その精神と技を併せて後進に伝えて欲しいものです。

耐震補強建具
石山孝次郎さん
京都西本願寺修復工事の研修作業に励む石山さん
(200910/21取材)

石山孝次郎さん

石山大原建具製作所

山形市郊外、工業団地エリアの一角に位置する石山大原建具製作所。敷地内には建具や組子の材料となる木材が並べられ、作業場からは時折、木材を削る機械の音や組子を組み合わせる木槌の音が聞こえてくる。石山さんを含め3人の職人さんが、日々伝統の技を磨きながら、耐震建具の考案、試作といった新たな建具製作にも積極的に取り組んでいる。その一方では、伝統建具の保存修復に協力するなど、歴史と未来を股に掛けた多方面での活動が際立っている。

石山大原建具製作所
代表者:代表 石山孝次郎
創業:昭和49年6月
事業内容:襖、障子戸など建具全般の製作、組子製作
所在地:山形県山形市大字十文字大原2121-3
TEL:023-686-2395
FAX:023-686-2780
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