宮城興業株式会社

世界にはばたくメイドイン山形
本場欧州も注目する謹製誂靴
宮城興業株式会社(南陽市)

「Goodyear Welted」製法にこだわり、200を超える工程を経て完成した靴(写真左)と、足にフィットさせるために靴作りには欠かせない木型(写真右)

量産と品質追究の狭間で

宮城興業株式会社には、戦時下において軍靴製造業としてスタートしたという時代的背景がありますが、その後もたびたび時代の流れに翻弄されてきた観があります。
創業以来、一貫して「Goodyear Welted(グッドイヤーウエルト)」という製法にこだわり、選び抜かれた素材と磨き抜かれた技術で良靴を作り続けているにもかかわらず、靴を取り巻く 市場環境が時代とともに大きく変化を遂げていったのです。高度成長期やバブル期など、いいものを作っていれば高くても売れた時代は良かったのですが、オイルショック時やバブル崩壊後には、薄利多売の量産型が主流となり、生産現場は海外へと移されていきました。特に近年は、中国の台頭が著しく、海外依存の割合は増すばかり。宮城興業もまた生き残りをかけて二者択一を迫られました。地元の工場を閉鎖し生産拠点を中国に移すか、国内製造にこだわって付加価値を見 いだしていくか。選んだ道は後者でした。量産よりも多品種少量生産にウエイトを置き、競争相手がいなくなるくらいの小ロットにも対応していったといいます。
その延長上に築き上げたシステム、それがオリジナルカスタムメイドシューズ「謹製誂靴・和創良靴」ブランドです。ヒントとなったのは紳士服のイージーオーダー。型見本から選ぶ、オーダーメイドと既製服の中間に存在する日本ならではの簡易的なあつらえシステムで、これを靴でも出来ないかと考えたのです。 スーツも靴もヨーロッパ発祥の文化、スーツ同様に靴もイージーオーダーというシステムであれば日本人にも受け入れられやすく、定着していく可能性は高いの ではないだろうか、と。

さまざまな工程を経て仕上げられる靴。
さまざまな工程を経て仕上げられる靴。
オリジナルカスタムメイドシューズも量産品もまったく同じ工程
オリジナルカスタムメイドシューズも量産品もまったく同じ工程
パーツの種類、ロットの大小によってさまざまな方法で裁断される
パーツの種類、ロットの大小によってさまざまな方法で裁断される

履き心地の満足度高く、すでに海外進出も

“足は第二の心臓”といわれるほど大切な部分であるにもかかわらず、足にあった靴というより足を靴に合わせて履いている人のなんと多いことでしょう。ただ、足にぴったり合った靴に出会うことは非常に難しく、高額なオーダーメイドでも一足目から満足のいく履き心地が得られるとは限らないといいます。

そこで、宮城興業ではあえてゼロから完璧をつくり出すことを目指すより、豊富なバリエーションの中から、お客さまにベストのものをチョイスするというやり方の方が合理的と考えました。100通り以上のサンプルの中から足長・足巾に合ったサイズのものを数足フィッティングし、さらにピンポイントで微調整を行い、ベストフィッティングを目指します。デザインについては、時代性を意識しながらも飽きのこないオーソドックスなものを豊富にラインナップ。素材についても長年の経験で選び抜ぬいた上質の皮革を使用。ソールの張り替えやリペア対応まで万全。長年にわたって愛用できる靴、本場ヨーロッパのオーダーメードシューズをも凌ぐ履き心地をよりリーズナブルな価格で実現しています。

このシステムの場合、お客さまと直接対面し、足の状態や好みなどを把握した上で販売することが絶対条件と考え、全国展開にあたっては信頼の置ける取扱店のみでの販売としました。現在、取扱店は全国で約170店舗。また、海外でもその高いクオリティとリーズナブルな価格が評価され、すでにニューヨークと中国にも取扱店が誕生しています。さらに、本場ヨーロッパの展示会でも「オーダーメイドにしてはとてもリーズナブルだね!」との評価を得たといいますから、欧州進出もそう遠い話ではないかもしれません。

大小さまざま、膨大な木型をストック。中には有名スポーツ選手の木型も
大小さまざま、膨大な木型をストック。中には有名スポーツ選手の木型も
オリジナルカスタムメイドシューズ。左は外国からのオーダー品でサイズは34cm
オリジナルカスタムメイドシューズ。左は外国からのオーダー品でサイズは34cm
オーダーメイドにしてはとてもリーズナブル」と好感触。
オーダーメイドにしてはとてもリーズナブル」と好感触
ミラノで開催された展示会MICAM(ミカム)の全景
ミラノで開催された展示会MICAM(ミカム)の全景
宮城興業のブースと商談風景。
宮城興業のブースと商談風景。

靴作りの今後と、その魅力とは。

高い技術力が求められるグッドイヤーウエルト製法による靴作り。
宮城興業においても人材の確保は最重要課題の一つ。ところが、近年は靴作りに挑戦する教室が盛況だったり、本場英国に留学をする人がいたりと靴作りが密かなブーム。そうした世相を受けて、宮城興業には全国各地から15名もの研修生が集まり、働きながら靴作りを学んでいます。確かに、一度自分で作った靴を履くという経験をすると、その高いフィット感と満足感からやみつきになる人も少なくないのだそうです。今後、自分で靴を作るまではいかないまでも、自分によりフィットする靴、履き心地の快適な靴を求める人が増えていくことになれば、日本の靴文化は大きく前進していくのではないでしょうか。
その時、宮城興業の技術力とノウハウがものをいい、本場ヨーロッパ諸国の靴作りにも影響を与えるかもしれません。「謹製誂靴・和創良靴」、靴作りという工業系とは一線を画した分野においても”ものづくり山形”の本領発揮です。

靴作りの醍醐味について語る高橋和義社長
靴作りの醍醐味について語る高橋和義社長
(2009/9/8取材)

宮城興業株式会社

宮城興業株式会社
宮城興業は、1941年に仙台市で軍靴製造業としてスタートし、終戦の1945年に現在地に移転。英国A.BARKER社と技術提携をするなど、つねに技術の向上と蓄積に努めてきた。2004年にはその集大成ともいえるユーザーが設計する靴、「謹製誂靴・オリジナルカスタムメイドシューズシステム」を確立。リーズナブルな価格で限りなくオーダーメイドに近い完成度の靴を提供できるようになった。国内に170店舗の取扱店を有し、ニューヨーク、中国にも進出。社屋入り口にはショールーム兼ショップ「シューズハウス・タフ」がある。
代表者:代表取締役 高橋 和義
創業:1941年9月(設立/1952年)
従業員数:80名
事業内容:革靴製造業
所在地:山形県南陽市宮内2200
TEL:0238-47-3155
FAX:0238-45-3015
URL:http://www.miyagikogyo.co.jp/
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