

「我が家は四代続く小さな工務店でした。資金も何もないところからスタートした会社です」。
山形市に本社を構える株式会社シェルターの木村一義代表取締役は、アメリカ留学後、24歳の時に前身となる「シェルターホーム株式会社」を寒河江市に設立。それから40年余が経った今では、東京・宮城に支店を持つまでになっています。
「設立して数年は大変でした。ちょうど住宅業界が大不況を迎え、家が売れない時代でもあったので、なおさらです。しかし、始めから順調にいくよりも、失敗や苦労をひと通り経験したことで『このままでは終わらない』というガッツを持ち続けられたと思っています」。


株式会社シェルターが独自に開発・実用化した「KES®構法」は、柱と梁の接合部分に金物を用いた工法。木造建築の弱点と言われていた接合部分を金物で補強し、驚異的な強度を実現しました。
従来よりも強度のある木造建築。それが証明されたのは、1995年の阪神・淡路大震災でした。被害の大きかった神戸市灘区に建築した3階建ての一般住宅は、周囲の住宅が倒壊する中でその姿を変えず、メディアで紹介されるなど一気に注目を浴びることとなりました。その後の大きな災害でも住む人の命と財産を守り抜き、2001年に建築した岩手県浄法寺町新庁舎を皮切りに、大型施設でも数々の建築物を世に出しています。
「2時間耐火認定は2014年に取得しましたが、3時間の耐火はまったくの別次元で、我々も未知の領域でした。研究には時間を要しましたが、致命的な失敗はありませんでした。考え方や構造の基本が間違っていないからでしょう」(木村社長)。この耐火技術は、一般社団法人木造耐火建築協会(会長 木村一義)を通じて全国に広くオープン化しており、現在約270団体の会員が所属しています。
また、三次元設計・加工技術による「FREE WOOD™」は、木材を「曲げる」「切り出す」「削り出す」ことで実現させた美しいフォルムの部材です。曲線やひねりで表現されたその姿は、木材の持つ安らぎと、芸術性の高い美しさを兼ね備えています。
これら最先端の木質構造技術で生み出される建築物は、見る人に感動を与える外観と安心して過ごせる強度が魅力。一般住宅だけでなく、公共施設などの大型建築にも用いられ、好評を得ています。




木村社長が木造建築にこだわる理由のひとつが、「環境への配慮」。地球規模で気候が劇変する中、低炭素社会を築くためにも、木を使った建築はこれから増やすべきという信念が、これまでの研究・開発を支えてきました。
「木は唯一再生可能な資源であるだけでなく、空気中の二酸化炭素を吸収・固定化し、建物を建てる際、最も環境への負荷が小さい資材です。
さらに、ストレスフルな社会の中で、木の空間による癒し効果も期待できます。木造建築はこれまで、性能や法律上の制約に可能性を阻まれてきましたが、これからは鉄骨とのハイブリッド造なども視野に入れ、木造建築による木造都市を作ることを目標にしていきます」。
24歳の時に掲げた基本理念「何が正しいかを考える」を、40年経った今も貫き通す株式会社シェルター。「正しい」の意味は、企業としてではなく、人として。客観的に、冷静に見極め、進む道を選択し続けてきました。木造建築を未来の形へと進化させてきた研究とその成果は、これからの建築界をさらに変えようとしています。


株式会社シェルター

株式会社シェルターは、1974年に「シェルターホーム株式会社」として設立し、1997年に商号を「株式会社シェルター」へ変更。日本初の接合金物工法「KES®構法」を開発・実用化し、耐震性・デザイン性を飛躍的に高めた。2017年12月には木質耐火部材「COOL WOOD®」が日本初の3時間の国土交通大臣認定を取得。優れた工法と建築技術での斬新な建築物が評価され、数々の賞を受賞している。環境に関する社会貢献活動にも熱心で、2010年に山形県と「やまがた絆の森プロジェクト」協定を締結するなど地域活動に貢献している。
創業:1974年12月
従業員数:100名(平成30年1月現在)
事業内容:木質構造部材の研究・設計・製造・販売/注文住宅の設計・施工、リフォーム/木造都市づくりの企画・コーディネート
所在地:山形県山形市松栄1-5-13
TEL:023-647-5000
FAX:023-647-5050
URL:http://www.shelter.jp/