

新分野を切り開く
寒河江市の中央工業団地の一角にある、伊藤電子工業株式会社は、磁気ヘッドなどの電子機器、PCをはじめとする精密機械の開発・製造を行うメーカー。特に、携帯電話用カメラに内蔵されたMCU(Micro Camera Unit)と呼ばれる超小型カメラの製造で、世界的シェアを獲得しました。カメラを製造するロボット(モジュール)も自社で製造。独自のモジュール構造を開発することで、高品質で高効率の超小型カメラを量産しています。世界シェア14%を達成した2009年には、経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」に選定されました。
携帯電話はもちろん、電子部品や情報機器の市場は常に進化し、スピードアップしています。こうした中、伊藤電子工業は「開発力」を重視、7つある事業部それぞれに開発者を置き、常に新製品や新技術の開発に取り組んでいます。パッケージ生産事業部では塩分濃度測定器や紙幣識別装置など社内で開発した製品を製造ししており、それらに使うプラスチックは社内で成形しております。開発は多岐にわたり、分野もさまざま。自社内で開発した有機ELパネルを用いたサンプルや有機薄膜太陽電池パネルの開発にも取り組んでいます。



伊藤電子工業の会社方針は「若い技術者を育成しながら、高付加価値のある製品づくりに独自の開発技術と生産技術力を展開」すること。伊藤勝男社長は「弱体化し倒産していく日本の中小企業が多い中、ここで粘り強く若い人を育てる必要がある」と主張します。弱体化する企業は開発者を育てないのが原因。会社というのは守るものではなく、育てるものだと伊藤社長。
伊藤電子工業が開発と同じくらい大切にしているのが「技術力」です。世界でもトップレベルの技術力を持つ伊藤電子工業には、台湾、韓国、中国、ドイツなどさまざまな国の技術者が研修に訪れます。海外の技術力はまだまだ日本にかなわない、日本のものづくりはそんなに弱いものではない。高級化、高品質化していく製品に対応できるのは、日本の技術力。「一流企業がなかなか手をつけられない分野に、我々のような技術を持った中小企業の生きる道がある。今後は今までの技術を総合して、世界が変わっても、自分たちの商品で、便利で安全安心な世界に寄与していきたい」。伊藤社長はこう考えます。

